2018年11月10日

徴用工判決問題に垣間見る日本政府の焦り

韓国最高裁の判決を待つ元徴用工の原告(前列中央)©Kim Hong-Ji/REUTERS

河野外務大臣の韓国批判が止まらない。今月9日の記者会見で、韓国最高裁が確定判決で新日鉄住金に賠償を命じた元徴用工訴訟の原告について「募集に応じた方で徴用された方ではない」と述べた。つまり戦時中の朝鮮半島での動員には「募集」「官による斡旋」「徴用」の3段階があったと説明、自民党からは「原告らは『募集工』と呼ぶべきだ」との声が上がっていたからだという。東洋経済オンラインに寄せられた、東京新聞論説委員の五味洋治氏の記事「徴用工判決が突きつける『日韓国交正常化の闇』韓国大法院判決全文の熟読で分かったこと」によると、原告のうち2人は1943年頃、旧日本製鉄が平壌で出した大阪製鉄所の工員募集広告を見て応募した。「2年間訓練を受ければ、技術を習得することができ、訓練終了後、朝鮮半島の製鉄所で技術者として就職することができる」と書かれていた。しかし実態は「1日8時間の3交代制で働き、月に1、2回程度外出を許可され、月に2、3円程度の小遣いが支給されただけ」だったという。今回の訴訟は「原告らは被告に対して未払賃金や補償金を請求しているのではなく、強制動員への慰謝料を請求している」(判決文)のであり、日本による統治を「不法」としている韓国では、1965年の請求権協定に含まれていない慰謝料を請求できる、という論理構成になっているそうだ。また韓国のハンギョレ新聞は「日本政府、専門家には個人請求権の実体を認めながら一般大衆には『韓日協定で解決済み』と説明」「国際司法裁判所へ行っても日本が負ける可能性ある」という戦後補償問題を取り上げてきた山本晴太弁護士にインタビューを掲載している。これらを読むと、河野外務大臣や多くの日本メディアの韓国批判は、いささか過剰に過ぎるのではと疑問を抱いてしまう。海自艦の旭日旗掲揚拒否問題以降、対韓国外交に日本政府の焦りを感ずるのは私だけではないと思う。

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