2019年10月15日

エチオピア難民の南下ルート物語


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昨年新たに156万人が難民となったエチオピアは世界最大の難民大国だ。南アフリカ、リビア、および中東へのな移民を管理するEU 指令および IOM 行動計画の重点国である。多種類の難民密輸業者とブローカーを非合法化し、彼らのビジネスは地下に潜った。現在、密輸業者、非公式のブローカー、そして難民の国境管理をナビゲートする大規模な組織がある。難民と難民を仲介する人々との関係について解説したこのマンガは、英国サセックス大学国際学部と共同で、風刺画の国際プラットフォーム The Cartoon Movement が制作した。下記リンク先から PDF ファイルをダウンロードできる。

PDF  Stories from the Southern Route of Ethiopian immigrants by Maddo (PDF 4.17MB)

2019年10月13日

過激派組織 ISIS と戦ったクルド人女性戦闘員たち

クルド女性防衛部隊(YPJ)の戦闘員

クルド女性防衛部隊の旗
クルド人民防衛隊 YPG(Yekîneyên Parastina Gel)の写真記録チームが、写真共有サイト Flickr にアカウントを持ってることを最近知った。開設は2013年12月で、現在1,300点余りの写真がアーカイブされている。全てに目を通すには時間がかかりそうなので、拾い読みをしてみたが、目に止まったのはクルド女性防衛隊 YPJ(Yekîneyên Parastina Jin)のそれだった。この民兵集団には現在18歳から40歳までの7,000名の義勇兵である。可憐で美しい若き兵士が銃を手にしている姿を見ると、銃ならぬスマートフォンを手にした、日本の女性たちがいかに平和な世界にいるか痛感する。

2014年9月、過激派組織 ISIS はシリア北部、トルコ国境に接するクルド人の拠点都市コバニ支配を目的に包囲戦を行った。翌年1月、ISIS を迎撃していたクルド人民防衛隊が防衛に成功したが、YPJ の戦闘員たちが重要な役割を果たした。部隊の約40%が女性だったのである。女性の社会参画が進むアメリカでさえ、軍における戦闘任務に女性兵士の参加が解禁されたのは2015年12月のことだった。それはともかくコバニをめぐる攻防は、当時シリア内戦で最も注目される戦いだったのである。女性の社会参画が遅れがちな土地で、クルド人女性が最前線に立った理由は一様ではないようだ。YPJ の場合、その参加は自由意志に基づくもので、強制されたものではなかった。クルド人社会ではアラブ人社会と比べて、イスラームの戒律や男性優位の構造が弱く、これが女性戦闘員登場の一因になったようだ。トランプ米大統領はシリア北東部からアメリカ軍を撤退させるといきなり表明した。YPG を見捨てたわけだが、これによってトルコは10月9日、シリア北東部への軍事作戦を開始し、クルド人戦闘員277人が死亡したと発表した。トルコ政府は、クルド人民防衛隊 YPG をテロ組織と見做している。 YPJ の女性戦闘員たちがどのような状況になっているか気がかりだ。

flickr  Kurdishstruggle: The team of Kurdish Photographers & Fighters on Flickr

2019年10月11日

嘘で塗り固めた安倍政権のプロパガンダ


Shinzō Abe PM of Japan
安倍晋三首相は10月7日の衆院本会議で、立憲民主党の枝野幸男代表による代表質問に答え「アメリカとトウモロコシ購入で約束合意した事実はない」と述べた。しかしロナルド・トランプ大統領は「シンゾーはアメリカのトウモロコシを大量に買ってくれると約束してくれた。中国が買わなかったトウモロコシだ。これはビッグディールだ」と暴露していた。相変わらずだが、森友学園疑惑で「私や妻が関係していたということになれば、これはまさに私は間違いな、く総理大臣も国会議員も辞めるということは、はっきりと申し上げておきたい」という大嘘は忘れられない。嘘つきは泥棒の始まりという諺があるが、平気で嘘をつく彼は、盗みも平気でするようになった。素人外交で血税の浪費を繰り返しているからだ。最近「ハンナ・アーレントが《いかにしてプロパガンダは嘘を使って真実とモラルを蝕むか》解き明かす」という一文を読んだ。そして官房長官を含め、安倍政権は嘘で塗り固めるのがプロパガンダであることに最近気づいた。ハンナ・アーレント(1906-1975)はナチズムが台頭したドイツから、アメリカ合衆国に亡命した、ドイツ出身のユダヤ人哲学者、思想家である。1930年代にアドルフ・ヒットラー(1889–1945)が政権を握ったのは、嘘が真実であると大衆に受け入れられたからだと彼女は解いている。なぜ露骨な嘘をついたのか。それは部下を完全に支配する手段であり、それによって部下たちは誠実さのすべて捨てることになった。これは今の自民党内部の状況に酷似している。安倍晋三に歯向かう議員は皆無に近いのである。ハンナ・アーレントは政治はごまかしのゲームだと言う。そのゲームは言い換えると、ファシズムに繋がることになる。安倍政権はそのゲームを弄んでいる。

2019年10月8日

鳥寄せ小道具でアウトドア気分

英国製釣り用バッグにぶら下げたオーデュボン協会のバードコール

全米オーデュボン協会
通販サイトでアメリカの鳥獣保護団体オーデュボン協会のバードコールを見つけ、懐かしかったので取り寄せた。全長約5cmの小道具で、木筒と金属をこすり合わせると、小鳥の鳴き声が出る。さっそく釣り用バッグにぶら下げてみた。1980年代初頭、私は『週刊朝日』のアウトドア欄のフォトエディターをしていた。どちらかというとインドア派の私だったが、シェラデザインのデイパックを街中で背負い、アウトドア派を気取っていた。今でこそ老若男女、デイバックを背にしているが、何しろ30年以上前の昔、当時としては珍しいファッションだったと思う。バードコールに革ひもをつけ、ペンダントにしていた。試しに鳴らしてみたことはあるが、実際に屋外で鳥寄せをした記憶はない。通販サイトには「アメリカでは100年以上も前から狩猟に使われていた」と説明されている。しかしこれは間違いで、100年以上前というのはヨーロッパの話である。

製作中のロジャー・エディ(1983年)
コネチカット・エクスプロアード誌によると、オーデュボン協会のバードコールは、1952年にコネチカット州のロジャー・エディが発明したという。彼は第二次世界大戦中にイタリアの第10山岳師団に従軍したが、そこで猟師たちが使っていたバードコールを、アメリカに持ち帰ってオーデュボン協会に持ち込んだ。協会は狩猟に使うことには興味を示さなかったが、野鳥観察の道具として採用したようだ。ところで通販サイトのカスタマーレビューに「近所の公園でキュッキュと鳴らしていたら、その音を聞きつけて中年の女性が寄ってきました」「部屋でこっそり鳴らしたら、旦那が嬉しそうにベランダに見に行った」などとあり、吹き出してしまった。私も似たようなもので、アウトドア気分を味わうだけになりそうだ。ここで蘊蓄。小鳥がチッチッチと囀(さえず)ることを英語で Tweet と言うが、これがソーシャルメディア Twitter の語源になった。だから Tweet は「つぶやき」ではなく「囀り」と訳すべきだろう。オーディオの世界では、高音用スピーカーを Tweeter(ツイーター)と呼ぶ。そして低音用は Woofer(ウーファー)だが、こちらは犬の唸り声に由来する。ネーミングの妙に感心する。

2019年10月4日

近代畜産警告書『アニマル・マシーン』の復刻を

かれこれ二十数年前、アイルランド共和国の片田舎で出会った光景だ。牛の群れが道路を塞ぎ、私が乗っていたバスがストップした。よく見ると向こうからやって来た車が何台も止まっている。牛追いの男ふたりが、ゆっくりと放牧を終えた群れを牛舎に誘導しているのだが、家畜優先、車はじっと待つのみであった。牧畜には文字通り、このような牧歌的な雰囲気が連鎖し、時間が緩慢に流れているような気がする。スピードを求めないスローライフこそ、本来あるべき生活様式ではないかと私はイメージしている。

牛追い(アイルランド共和国クレア郡ドゥーリン村)

土佐ジロー(高知県畜産試験場)
栃木県にある宮内庁の御料牧場は、口蹄疫や豚コレラ、鳥インフルエンザなどの伝染病の侵入防止のため、抽選で制限した一般の見学会が行われているが、特別の許可を得て写真撮影をする機会があった。皇室専用の牧場で、さまざまな家畜や家禽が飼育され、牛乳・肉・卵および野菜などの生産を行っている。ここで得られた生産物は皇室の日常の食材、そして宮中晩餐や園遊会などに使われる。この牧場で一番印象に残ってるのが、広い敷地を脱兎のごとく走り回る豚で、その運動量ゆえか身が引き締まり痩せていたことである。狭い豚小屋を連想していた私にとって、その光景はまさに青天の霹靂(へきれき)であった。皇室の食材といえば、キッコーマンの御用蔵のしぼりたて生醤油を思い出す。御料牧場や御用蔵は、食の安全に対し最大級の配慮がなされてることは容易に想像できる。御料牧場のような、放し飼いの家畜といえば、高知県の「土佐ジロー」を思い出す。土佐地鶏とアメリカ原産のロードアイランドレッドをかけ合わせた、一代雑種の鶏だが、広い自然の運動場で飼育されている。このような養鶏法が世間に注目され、支持を受けているのは、自然ではない人工的な空間に、鶏たちが押し込めらている飼育環境が大半であることの証であろう。いわゆるブロイラー養鶏で、日本が最大の輸出国であることを忘れてはならない。

講談社(1979年)
ルース・ハリソン(1920–2000)著『アニマル・マシーン』は工業的畜産とはいったい何だろうか、集約的飼育とはどのようなものだろうかという問いかけを序章に、まずイギリスにおけるブロイラー・チキンの問題点から持論を発進、近代畜産を告発した最初の書となった。原著は1964年にロンドンで初版が発行され、翌1965年にはドイツ語版が出た。続いてオランダ語訳、ノルウェイ語訳、デンマーク語訳、そしてアメリカでも出版された。発売と同時に非常に大きな反響を呼び、ヨーロッパにおける畜産動物福祉の社会的、また法的、そして学問的取り組みを促す原動力となったのである。イギリス政府は科学者による技術諮問機関、ブランベル委員会(Brambell committee)に、家畜の飼育実態と福祉に関する調査を委嘱した。この委員会が、動物福祉の原則として最初の「5つの自由」を提言している。
  1. Freedom from Hunger and Thirst(空腹や渇き、栄養不良に陥らない自由)
  2. Freedom from Discomfort(不快な状態に置かれることのない自由)
  3. Freedom from Pain, Injury or Disease(痛み、危害、病気で苦しまない自由)
  4. Freedom to Express Normal Behaviour(明確で正常な行動を表現できる自由)
  5. Freedom from Fear and Distress(恐怖や苦痛からの自由)
日本では1971~72年に雑誌に抄訳が紹介された。そして本書が日本における初めての完訳出版となった。著者は日本語版への序文で次のように書いている。「私が本書のなかで論じているのは、家畜動物の取り扱いをどうするかの問題だけではない。むしろ私がほんとうに関心をもって論じたのは、私たち自身の生活の質が落ちてきており、これにどう対処すべきか、という点であった。(途中略)本書は動物の受難を扱っている。視力が落ちて見えなくなった目を彼らの受難に向けて、凝っと見て我が身を振り返り考えていただきたい。私たち人間自身もだんだん力が衰えてきたのではなかろうか。人間による人間の扱いの点でもいよいよ冷酷無情になっているのではなかろうか」と。ブロイラー・チキンの問題点を突いた2章に続いて、3章「ニワトリ処理場:<製品>となるための最後の恐怖」4章「ケージ養鶏:ニワトリ<工場>の狂気」5章「ヴィール・カーフ:貧血地獄にあえぐ幼い命」6章「家畜工場のいろいろ:他の動物の場合」7章「“たべもの”の質とは:<食品>ではなくてたべものを!」9章「食品の“質”を問う:毒物の洪水のなかで」と筆を進めている。すなわち「近代畜産」とその生産物の安全性に関し、鋭い警告を放っている。「何かが間違っている」と。

草なんだゾ、このバカ野郎! 食うはずなんだが……忘れたのか?(アニマル・マシーン)

ルース・ハリソン(1997年)
ハリソンは設立当初から土壌協会と自然保護協会の理事であり、王立動物虐待防止協会の活動、および人間の社会福祉活動にもたずさわってきた女性である。本書は「動物工場」の批判書であるが、その真髄は、9章「動物の虐待と法的規制:動物にも苦痛はある」の記述、すなわち家畜の福祉に言及していることだと思う。人間が家畜を飼うようになって以来、屠殺して肉を食べたりその皮革を利用することは当たり前のことだったが、それに対する新たなメスを入れたことだ。上述したようにブランベル委員会勧告により農務省に家畜福祉に関する審議会が設置されることになったわけだが、ハリソンはその委員となり、欧州理事会における動物保護に関する専門家会議の助言者として発言、また米国議会の公聴会で証言するなど、畜産動物の保護のために公的な発言を行った。日本語版への序文は「本書は動物の受難を扱っている。視力が落ちて見えなくなった目を彼らの受難に向けて、凝っと見て我が身を振り返り考えていただきたい。私たち人間自身もだんだん力が衰えてきたのではなかろうか。人間による人間の扱いの点でもいよいよ冷酷無情になっているのではなかろうか」と結んでいる。本書は70年代末から絶版のままである。口蹄疫や豚コレラ、鳥インフルエンザなどの家畜伝染病が猛威を振ってる今日、その問題点を探る上で意味深い一冊ではないだろうか。復刻を望みたい。