2026年6月24日

困難な状況下での撮影のための新しいツールを開発した写真家 J・R・アイヤーマン

The opening-night screening of "Bwana Devil" in Hollywood, 1952
J. R. Eyerman

J・R・アイヤーマンは1906年11月9日、両親が経営するモンタナ州ビュートの写真スタジオで生まれた。ライフ誌が表紙によく掲載していた写真家やライターの伝記的小話の中で、彼は詩で自分の姓の前に付いている謎の文字は実際の名前の頭文字ではないと説明した。曰く「母さんは私にウォルターやモーのような名前はつけないと言った。それで母さんは私にたくさんのイニシャルをつけて、息子よ、自分で名前を見つけなさい」云々。少年時代にイエローストーン国立公園やグレイシャー国立公園で父親と何千枚もの写真を撮っていた。その後、15歳でワシントン学に入学し、土木工学を学んだ。やがて写真の世界に戻り、1942年にライフ誌に入社し、地中海から太平洋まで戦闘の様子を撮影した。ある時、アイアーマンは偶然にも日本侵攻作戦の暗号名(「オリンピック」)を知ってしまったが、口を閉ざし、レンズを開いたままにした。原爆投下後、広島に最初に到着した一人となった。戦争が終わると、アイアーマンは自身の技術的背景を活かし、写真における数々の画期的な発明を成し遂げた。その中には、原子爆弾の爆発を撮影するために9台のカメラのシャッターを切る電気眼機構、海面下3,600フィートでも機能するカメラ、初期のアメリカの研究用ロケットで107マイル上空から撮影するロボットカメラなどがある。

Spruce Goose
Howard Hughes inside his H-4 Hercules troop transport plane, 1947

そしてオーロラの詳細な写真を撮影できるようにと、カラーフィルムを高速化して使用した。アイヤーマンは1942年から1961年までライフ誌のスタッフだった。彼はライフ誌のためにヨーロッパ戦線と太平洋戦線で第二次世界大戦を取材した。彼はかつて「ライフ誌のボタンを押すと、世界が止まったかのようだった」と語っている。彼の最も有名な写真の中には、 1952年11月26日にハリウッドのパラマウント劇場で行われた映画『ブワナ・デビル』のプレミア上映を、3Dメガネをかけて鑑賞する観客全員を捉えた、よく複製されるロングショットがある。こうした視覚的な反復は、アイヤーマンのお気に入りの手法だった。 別の例としては、ライフ誌に掲載された、レイクビュー郊外の地平線まで続く通りに複数の引越しトラックが新築の家に家具を同時に運び込んでいる様子を捉えた広大な空撮写真がある。

Underwate
Underwater view of a torpedo being launched from a submarine, 1951

アイヤーマンはニューヨーク近代美術館で1951年11月20日から12月12日まで開催された「記憶に残る人生の写真」展、および1951年2月13日から4月22日まで開催された「朝鮮戦争 - 写真で見る戦争の影響」展に作品を提供しており、後者では彼の GI ポートレート5点が展示された。その後、彼の作品は、同じくニューヨーク近代美術館で開催された1958年11月26日から1959年1月18日まで開催された「美術館コレクションからの写真」展にも掲載された。そして広大なオフィススペースで製図台に向かうエンジニアの群衆が遠ざかっていく様子を捉えた彼の写真は、1955年、キュレーターのエドワード・スタイケンによって900万人が訪れた同館の世界巡回展「人間家族」に選ばれている。彼は1961年にライフ誌を辞め、タイム誌、ナショナルジオグラフィック誌、そしていくつかの医学雑誌で働いた。

northern lights
The aurora borealis, a.k.a., the northern lights, northern Canada, 1953

シアトルに自身の構造エンジニアリング会社を設立した後、彼は困難な状況下での撮影のための新しいツールを開発した。ライフ誌の写真家の中には、カメラを単に写真を撮るための手段と考える者もいれば、カメラをメディアの新たな側面として捉え、それを変化させ、拡張し、改良していくことを目指す者もいた。アイヤーマンは間違いなく後者の一人だった。彼は、9台のカメラのシャッターを作動させる電気式アイ機構を完成させ、原子爆弾の爆発を撮影した(1952年、ネバダ州ユッカフラット)。また、オーティス・バートンと共に、海面下3,600フィートの海底を撮影するための特殊カメラを考案した。さらに、カラーフィルムの高速化に成功し、それまで不可能だったオーロラのきらめく変化する形や模様のカラー写真を撮影した。J・R・アイヤーマンは1985年12月7日、カリフォルニア州サンタモニカの自宅で腎不全と心不全により亡くなった。

LIFE  The Potographer Spotlight: J.R. Eyerman (American, 1906–1985) LIFE Picture Collection

2026年6月23日

ドナルド・トランプ米大統領に「夢」を託した人々の落胆

Trump$250Bill
生存する人物の肖像を米国の公式通貨に掲載することは違法である

ドナルド・トランプ米大統領を支持し、大きな期待や変革への「夢」を託した人々が抱く落胆については、米国社会の分断や期待値のギャップを背景に、これまで多くの分析や報道がなされてきた。彼らの抱く落胆の主な要因は、支持層が何を求めていたか、そしてその期待がどのような形で裏切られたかによって異なる。トランプの支持基盤には、かつての製造業の衰退に苦しむラストベルト(錆びついた工業地帯)の労働者層などが含まれている。MAGA(米国を再び偉大に」というスローガンに触発され、雇用創出や工場の再稼働を期待していた人々にとって、抜本的な経済構造の変化がすぐには現れないことに失望を感じるケースがあった。特にグローバル化の流れを完全に逆転させることの難しさに直面した際、期待との乖離が顕著になる。トランプが既存の政治エリートに挑戦する姿に期待を寄せた人々は、彼が「政治的な正しさ(ポリティカル・コレクトネス)」に代わる新しい声を代弁してくれると考えた。しかし一方で、彼の対立を煽るような言動が米国社会全体の分断を深めたと感じる元支持者や、彼が期待したほど既存のシステムを根本から刷新できていない(あるいは既存の権力構造に取り込まれた)と感じる層も存在する。メディアや識者が伝える「落胆」と、現地で支持を続けている人々の実感には大きな隔たりがあることも指摘されている。 トランプを支持し続ける層の中には、主流メディアの報道を「自分たちを陥れるためのもの」と捉える傾向が強く、落胆を公に認めない、あるいは落胆ではなく「あえて辛抱強く待っている」と表現する層も多く存在する。トランプに「夢」を託した人々の心境は非常に多層的である。単なる「支持から離反への移行」ではなく、期待と現実の狭間で、今もなお自分の信念や彼への評価を問い直している人々が多いのが実情と言えるだろう。

Rust Belt USA

トランプに期待を寄せ、あるいは自身の「夢」や政治的理想を託した人々が、その後どのような経緯で落胆や失望を抱くに至ったのか。この現象は、支持層の多様性ゆえに非常に複雑で多層的な背景を持っている。主な要因として、以下の点が挙げられる。

  1. 公約実現のハードルと妥協:かつての選挙キャンペーンで掲げられた「壁の建設」「雇用の完全復活」「医療保険制度の即時撤廃」といった具体的かつ力強い公約に対し、政権運営の現実や議会との調整を経て、それらが先送りされたり、形を変えたりしたことに失望を感じる層が存在します。劇的な変化を期待した支持者にとって、既存の政治システム内での妥協は、時に「裏切り」と映ることがある。
  2. ポピュリズムと現実の乖離:トランプの支持基盤の中には、グローバル化やテクノロジーの進歩によって取り残されたと感じている労働者層がいる。彼らは「エリート層による支配からの脱却」を期待したが、政権内部の経済政策や人事において、既存の経済システムとの親和性が高い人物が起用されたことで「結局は以前と同じではないか」という疑念や失望を抱くケースが見受けられる。
  3. 社会的分断の深化:トランプを支持した人々の中には、国家の統一や伝統的な価値観の保護を求めた層も少なくない。しかし彼の強い言説が結果として社会の分断を加速させ、自身のコミュニティや家族間での対立を深めてしまったことに、個人的な疲弊や落胆を感じる人々もいる。
  4. 個別の政策への不一致:特定の政策(例えば、中東政策、環境規制の緩和、あるいはパンデミックへの対応など)において、個々の支持者が抱いていた期待と、トランプの実際の決定が食い違った場合である。例えば「小さな政府」を求めていた層が、実際には特定の産業への介入が強まったことに対して違和感を抱くといったケースである。

トランプへの支持は、単なる政策への賛同にとどまらず、既存の政治に対する「抗議」や、自分たちのアイデンティティが軽視されているという「疎外感」の解消を求める強い感情的なエネルギーに基づいていることが多々ある。そのため落胆の深さもまた、その期待の強さに比例して大きくなる傾向があると言える。こうした「落胆」は現在のアメリカ政治において、彼らが次にどのような選択をするのか(再び強く支持するのか、別の候補を模索するのか、あるいは政治から距離を置くのか)を占う上で、極めて重要な動向として注目されている。下記リンク先は月刊英語誌『インターナショナル・ビューポイント』認定農業専門家でありエコ社会主義環境活動家のダニエル・タヌロ記事「トランプの失敗は彼をこれまで以上に危険な存在にした」です。

Donald Trump  Trump’s failure makes him dangerous than ever by D. Tanuro of Interenational Viewpoint

写真術における偉大なる達人たち

Mick Jagge
Albert Watson (Born 1942) Mick Jagger in Car with Leopard, Los Angeles, 1992

2021年の秋以来、思いつくまま世界の写真界20~21世紀の達人たちの紹介記事を拙ブログに綴ってきましたが、2026年6月23日現在のリストです。右端の()内はそれぞれ写真家の生年・没年です。左端の年月日をクリックするとそれぞれの掲載ページが開きます。

21/10/06多くの人々に感動を与えたアフリカ系アメリカ人写真家ゴードン・パークスの足跡(1912–2006)
21/10/08グループ f/64 のメンバーだった写真家イモージン・カニンガムは化学を専攻した(1883–1976)
21/10/10圧倒的な才能を持ち現代アメリカの芸術写真を牽引したポール・ストランド(1890–1976)
21/10/11何気ない虚ろなアメリカを旅したスイス生まれの写真家ロバート・フランク(1924–2019)
21/10/13作為を排した新客観主義に触発されたストリート写真の達人ロベール・ドアノー(1912–1994)
21/10/16大恐慌時に農村や小さな町の生活窮状をドキュメントした写真家ラッセル・リー(1903–1986)
21/10/17日記に最後の晩餐という言葉を残して自死した写真家ダイアン・アーバスの黙示録(1923–1971)
21/10/19フォトジャーナリズムの手法を芸術の域に高めた写真家ユージン・スミスの視線(1918–1978)
21/10/24時代の風潮に左右されず独自の芸術観を持ち続けたプラハの詩人ヨゼフ・スデック(1896-1976)
21/10/27西欧美術を米国に紹介した写真家アルフレッド・スティーグリッツの功績(1864–1946)
21/11/01美しいパリを撮影していたウジェーヌ・アジェを「発見」したベレニス・アボット(1898–1991)
21/11/08近代ストレート写真を先導した 20 世紀の写真界の巨匠エドワード・ウェストン(1886–1958)
21/11/10芸術を通じて社会や政治に影響を与えることを目指した写真家アンセル・アダムス(1902–1984)
21/11/13大恐慌を記録したウォーカー・エヴァンスの被写体はその土地固有の様式だった(1903–1975)
21/11/16写真少年ジャック=アンリ・ラルティーグは個展を開いた 69 歳まで無名だった(1894–1986)
21/11/20ハンガリー出身の世界で最も偉大な戦争写真家ロバート・キャパの短い人生(1913–1954)
21/11/25児童労働の惨状を訴えるため現実を正確に捉えた写真家ルイス・ハインの偉業(1874–1940)
21/12/01マグナム・フォトを設立した写真家アンリ・カルティエ=ブレッソンの決定的瞬間(1908–2004)
21/12/06犬を人間のいくつかの性質を持っているとして愛撮したエリオット・アーウィット(1928-2023)
21/12/08リチャード・アヴェドンの洗練され権威ある感覚をもたらしたポートレート写真(1923–2004)
21/12/12デザインと産業の統合に集中したバウハウスの写真家ラースロー・モホリ=ナジ(1923–1928)
21/12/17ダダイズムとシュルレアリスムに跨る写真を制作したマン・レイは革新者だった(1890–1976)
21/12/29フォトジャーナリズムに傾倒したアラ・ギュレルの失われたイスタンブル写真素描(1928–2018)
22/01/10ペルーのスタジオをヒントに自然光に拘ったアーヴィング・ペンの鮮明な写真(1917-2009)
22/02/25非現実的なほど歪曲し抽象的な遠近感を生み出した写真家ビル・ブラントのカメラ(1904–1983)
22/03/09男性ヌードや花を白黒で撮影した異端の写真家ロバート・メイプルソープへの賛歌(1946–1989)
22/03/18ニューヨーク近代美術館で写真展「人間家族」を企画したエドワード・スタイケン(1879–1973)
22/03/24公民権運動の影響を記録したキュメンタリー写真家ブルース・デヴッドソンの慧眼(born 1933)
22/04/21社会的弱者に寄り添いエモーショナルに撮影した写真家メアリー・エレン・マーク(1940-2015)
22/05/20早逝した写真家リンダ・マッカートニーはザ・ビートルズのポールの伴侶だった(1941–1998)
22/06/01大都市に変貌する香港を活写して重要な作品群を作り上げたファン・ホーの視線(1931–2016)
22/06/12肖像写真で社会の断面を浮き彫りにしたドキュメント写真家アウグスト・ザンダー(1876–1964)
22/08/01スペイン内戦取材で26歳という若さに散った女性戦争写真家ゲルダ・タローの生涯 (1910–1937)
22/09/16カラー写真を芸術として追及したジョエル・マイヤーウィッツの手腕(born 1938)
22/09/25死と衰退を意味する作品を手がけた女性写真家サリー・マンの感性(born 1951)
22/10/17北海道の風景に恋したイギリス人写真家マイケル・ケンナのモノクロ写真(born 1951)
22/11/06アメリカ先住民を「失われる前に」記録したエドワード・カーティス(1868–1952)
22/11/16大恐慌の写真 9,000 点以上を制作したマリオン・ポスト・ウォルコット(1910–1990)
22/11/18人間の精神の深さを写真に写しとったアルゼンチン出身のペドロ・ルイス・ラオタ (1934-1986)
22/12/10アメリカの生活と社会的問題を描写した写真家ゲイリー・ウィノグランド(1928–1984)
22/12/16没後に脚光を浴びたヴィヴィアン・マイヤーのストリート写真(1926–2009)
22/12/23写真家集団マグナムに参画した初めての女性報道写真家イヴ・アーノルド(1912-2012)
23/03/25写真家フランク・ラインハートのアメリカ先住民のドラマチックで美しい肖像写真(1861-1928)
23/04/13複雑なタブローを構築するシュールレアリスム写真家サンディ・スコグランド(born 1946)
23/04/21キャラクターから自らを切り離したシンディー・シャーマンの自画像(born 1954)
23/05/01震災前のサンフランシスコを記録した写真家アーノルド・ジェンス(1869–1942)
23/05/03メキシコにおけるフォトジャーナリズムの先駆者マヌエル・ラモス(1874-1945)
23/05/05文学と芸術に没頭し超現実主義絵画に着想を得た台湾を代表する写真家張照堂(1943-2024)
23/05/07家族の緊密なポートレイトで注目を集めた写真家エメット・ゴウィン(born 1941)
23/05/22欲望やジェンダーの境界を無視したクロード・カアンのセルフポートレイト(1894–1954)
23/05/2520世紀初頭のアメリカの都市改革に大きく貢献したジェイコブ・リース(1849-1914)
23/06/05都市の社会風景という視覚的言語を発展させた写真家リー・フリードランダー(born 1934)
23/06/13写真芸術の境界を広げた暗室の錬金術師ジェリー・ユルズマンの神技(1934–2022)
23/06/15強制的に収容所に入れられた日系アメリカ人を撮影したドロシア・ラング(1895–1965)
23/06/20劇的な国際的シンボルとなった「プラハの春」を撮影したヨゼフ・コウデルカ(born 1958)
23/06/24警察無線を傍受できる唯一のニューヨークの写真家だったウィージー(1899–1968)
23/07/03フォトジャーナリズムの父アルフレッド・アイゼンシュタットの視線(1898–1995)
23/07/06ハンガリーの芸術家たちとの交流が反映されたアンドレ・ケルテスの作品(1894-1985)
23/07/08家族が所有する島で野鳥の写真を撮り始めたエリオット・ポーター(1901–1990)
23/07/08戦争と苦しみを衝撃的な力でとらえた報道写真家ドン・マッカラン(born 1935)
23/07/17夜のパリに漂うムードに魅了されていたハンガリー出身の写真家ブラッサイ(1899–1984)
23/07/2020世紀の著名人を撮影した肖像写真家の巨星ユーサフ・カーシュ(1908–2002)
23/07/22メキシコの革命運動に身を捧げた写真家ティナ・モドッティのマルチな才能(1896–1942)
23/07/24ロングアイランド出身のマルクス主義者を自称する写真家ラリー・フィンク(born 1941)
23/08/01アフリカ系アメリカ人の芸術的な肖像写真を制作したコンスエロ・カナガ(1894–1978)
23/08/04ヒトラーの地下壕の写真を世界に初めて公開したウィリアム・ヴァンディバート(1912-1990)
23/08/06タイプライターとカメラを同じように扱った写真家カール・マイダンス(1907–2004)
23/08/08ファッションモデルから戦場フォトャーナリストに転じたリー・ミラーの生涯(1907-1977)
23/08/14ニコンのレンズを世界に知らしめたデイヴィッド・ダグラス・ダンカンの功績(1907-2007)
23/08/18超現実的なインスタレーションアートを創り上げたサンディ・スコグランド(born 1946)
23/08/20シカゴの街角やアメリカ史における重要な瞬間を再現した写真家アート・シェイ(1922–2018)
23/08/22大恐慌時代の FSA プロジェクト 最初の写真家アーサー・ロススタイン(1915-1986)
23/08/25カメラの焦点を自分たちの生活に向けるべきと主張したハリー・キャラハン(1912-1999)
23/09/08イギリスにおけるフォトジャーナリズムの先駆者クルト・ハットン(1893–1960)
23/10/06ロシアにおけるデザインと構成主義創設者だったアレクサンドル・ロトチェンコ(1891–1956)
23/10/18物事の本質に近づくための絶え間ない努力を続けた写真家ウィン・バロック(1902–1975)
23/10/27先見かつ斬新な作品により写真史に大きな影響を与えたウィリアム・クライン(1926–2022)
23/11/09アパートの窓から四季の移り変わりの美しさなどを撮影したルース・オーキン(1921-1985)
23/11/15死や死体の陰翳が纏わりついた写真家ジョエル=ピーター・ウィトキンの作品(born 1939)
23/12/01近代化により消滅する前のパリの建築物や街並みを記録したウジェーヌ・アジェ(1857-1927)
23/12/15同時代で最も有名で最も知られていないストリート写真家のヘレン・レヴィット(1913–2009)
23/12/20哲学者であることも写真家であることも認めなかったジャン・ボードリヤール(1929-2007)
24/01/08音楽や映画など多岐にわたる分野で能力を発揮した写真家ジャック・デラーノ(1914–1997)
24/02/25シチリア出身のイタリア人マグナム写真家フェルディナンド・スキアンナの視座(born 1943)
24/03/21パリで花開いたロシア人ファッション写真家ジョージ・ホイニンゲン=ヒューン(1900–1968)
24/04/04報道写真家として自活することに成功した最初の女性の一人エスター・バブリー(1921-1998)
24/04/20長時間露光により時間の多層性を浮かび上がらせたアレクセイ・ティタレンコ(born 1962)
24/04/2820世紀後半のイタリアで最も重要な写真家ジャンニ・ベレンゴ・ガルディン(born 1930)
24/04/30トルコの古い伝統の記憶を守り続ける女性写真家 F・ディレク・ウヤル(born 1976)
24/05/01ファッション写真に大きな影響を与えたデヴィッド・ザイドナーの短い生涯(1957-1999)
24/05/08社会の鼓動を捉えたいという思いで写真家になったリチャード・サンドラー(born 1946)
24/05/10直接的で妥協がないストリート写真の巨匠レオン・レヴィンシュタイン(1910–1988)
24/05/12自らの作品を視覚的な物語と定義している写真家スティーヴ・マッカリー(born 1950)
24/05/14多様な芸術の影響を受け写真家の視点を形作ったアンドレアス・ファイニンガー(1906-1999)
24/05/16芸術的表現により繊細な目を持つ女性写真家となったマルティーヌ・フランク(1938-2012)
24/05/18ドキュメンタリー写真をモノクロからカラーに舵を切ったマーティン・パー(born 1952)
24/05/21先駆的なグラフ誌『ピクチャー・ポスト』を主導した写真家バート・ハーディ(1913-1995)
24/05/24グラフ誌『ライフ』に30年間投稿し続けたロシア生まれの写真家リナ・リーン(1914-1995)
24/05/27旅する写真家として20世紀後半の歴史に残る象徴的な作品を制作したルネ・ブリ(1933-2014)
24/05/29高速ストロボスコープ写真を開発したハロルド・ユージン・エジャートン(1903-1990)
24/06/03一般市民とそのささやかな瞬間を撮影したオランダの写真家ヘンク・ヨンケル(1912-2002)
24/06/10ラージフォーマット写真のデジタル処理で成功したアンドレアス・グルスキー(born 1955)
24/06/26レンズを通して親密な講釈と被写体の声を伝えてきた韓国出身のユンギ・キム(born 1962)
24/07/05演出されたものではなく現実的なファッション写真を開発したトニ・フリッセル(1907-1988)
24/07/07スウィンギング60年代のイメージ形成に貢献した写真家デイヴィッド・ベイリー(born 1938)
24/07/13著名人からから小さな町の人々まで撮影してきた写真家マイケル・オブライエン(born 1950)
24/07/14人々のドラマが宿る都市のカラー写真を制作したコンスタンティン・マノス(born 1934)
24/08/04写真家集団「マグナム・フォト」所属するただ一人の日本人メンバー久保田博二(born 1939)
24/08/08ロバート・F・ケネディの死を悼む人々を葬儀列車から捉えたポール・フスコ(1930–2020)
24/08/13クリスティーナ・ガルシア・ロデロが話したいのは時間も終わりもない出来事だ(born 1949)
24/08/30ドキュメンタリーと芸術の境界を歩んだカラー写真の先駆者エルンスト・ハース(1921–1986)
24/09/01国際的写真家集団マグナム・フォトの女性写真家スーザン・メイゼラスの視線(born 1948)
24/09/09アパルトヘイトの悪と日常的な社会への影響を記録したアーネスト・コール(1940–1990)
24/09/14宗教的または民俗的な儀式に写真撮影の情熱を注ぎ込んだラモン・マサッツ(1931-2024)
24/09/23アメリカで最も有名な無名の写真家と呼ばれたエヴリン・ホーファー(1922–2009)
24/09/25自身を「大義を求める反逆者」と表現した写真家マージョリー・コリンズ(1912-1985)
24/09/27北海道の小さな町にあった営業写真館を継がず写真芸術の道を歩んだ深瀬昌久(1934-2012)
24/10/01現代アメリカの風変わりで平凡なイメージに焦点を当てた写真家アレック・ソス(born 1969)
24/10/04微妙なテクスチャーの言語を備えた異次元の写真を追及したアーサー・トレス(born 1940)
24/10/06オーストリア系イギリス人のエディス・チューダー=ハートはソ連のスパイだった(1908-1973)
24/10/08映画の撮影監督でもあったドキュメンタリー写真家ヴォルフガング・スシツキー(1912–2016)
24/10/15芸術のレズビアン・サブカルチャーに深く関わった写真家ルース・ベルンハルト(1905–2006)
24/10/19ランド・アートを通じて作品を地球と共同制作するアンディ・ゴールドワージー (born 1956)
24/10/29公民権運動の活動に感銘し刑務所制度の悲惨を描写した写真家ダニー・ライアン (born 1942)
24/11/01人間の状態と現在の出来事を記録するストリート写真家ピータ―・ターンリー (born 1955)
24/11/04写真を通じて現代の社会的状況を改善することに専念したアーロン・シスキンド(1903-1991)
24/11/07自然と植物の成長にインスピレーションを受けた写真家カール・ブロスフェルト(1865-1932)
24/11/09ストリート写真で知られているリゼット・モデルは教える才能を持っていた(1901-1983)
24/11/11カラー写真が芸術として認知されるようになった功労者ウィリアム・エグルストン(born 1939)
24/11/13革命後のメキシコ復興の重要人物だった写真家ローラ・アルバレス・ブラボー(1903-1993)
24/11/15チリの歴史上最も重要な写真家であると考えられているセルヒオ・ララインの視座(1931-2012)
24/11/19イギリスのアンリ・カルティエ=ブレッソンと評されたジェーン・ボウン(1925-2014)
24/11/25カラー写真の先駆者ソール・ライターは戦後写真界の傑出した人物のひとりだった(1923–2013)
24/11/25サム・フォークがニューヨーク・タイムズに寄せた写真は鮮烈な感覚をもたらした(1901-1991)
24/11/29ゲイ解放運動の活動家だったトランスジェンダーの写真家ピーター・ヒュージャー(1934–1987)
24/12/01複数の芸術的才能に恵まれていた華麗なるファッション写真家セシル・ビートン(1904–1980)
24/12/05ライフ誌と空軍で活躍した女性初の戦場写真家マーガレット・バーク=ホワイト(1904–1971)
24/12/07愛と美を鮮明に捉えたロマン派写真家エドゥアール・ブーバの平和への眼差し(1923–1999)
24/12/10保守的な政治体制と対立しながら自由のために写真を手段にしたエヴァ・ペスニョ(1910–2003)
24/12/15自然環境における人間の姿を研究することに関心を寄せた写真家マイケル・ぺト(1908-1970)
24/12/20ベトナム戦争中にナパーム弾攻撃から逃げる子供たちを撮影したニック・ウット(born 1951)
25/01/06記録映画の先駆者であり前衛映画製作者でもあった写真家ラルフ・スタイナー(1899–1986)
25/01/10アメリカ西部を占める文化の多様性を反映した写真家ローラ・ウィルソンの足跡(born 1939)
25/01/15フランスの人文主義写真運動で活躍したスイス系フランス人ザビーネ・ヴァイス(1924–2021)
25/02/03サルバドール・ダリとの共作でシュールな写真を創出したフィリップ・ハルスマン(1906–1979)
25/02/06ベトナム戦争に対する懸念を形にした写真家フィリップ・ジョーンズ・グリフィス(1936-2008)
25/02/18芸術に複数の糸を持っていたシュルレアリスムの写真家エミール・サヴィトリー(1903-1967)
25/03/19シュルレアリスムの先駆的な写真家でピカソのモデルで恋人だったドラ・マール(1907-1997)
25/03/25ホロコースト前の東欧のユダヤ人社会を記録した写真家ローマン・ヴィスニアック(1897-1990)
25/04/01ソーシャルワーカーからライフ誌の専属写真家に転じたウォレス・カークランド(1891–1979)
25/04/04写真家ビル・エプリッジは20世紀で最も優れたフォトジャーナリストの一人だった(1938-2013)
25/04/25ロバート・キャパの弟で総合施設国際写真センターを設立したコーネル・キャパ(1918-2008)
25/05/01激動1960年代の音楽家たちをキャプチャーした写真家エリオット・ランディの慧眼(born 1942)
25/05/23生まれ故郷ブラジルの熱帯雨林アマゾン川流域へのセバスチャン・サルガドの視座(1944-2025)
25/06/22風景への畏敬の念と激動の気象現象への驚異が伝わるミッチ・ドブラウナーの写真(born 1956)
25/07/26ティンタイプ写真でアパラチアの伝承音楽家に焦点を当てたリサ・エルマーレ(born 1984)
25/08/03色彩の卓越した表現を通して写真というジャンルを超越したデビッド・ラシャペル(born 1963)
25/08/20ヨーロッパ解放やコンゴ紛争などでの勇敢な取材で知られるドミトリ・ケッセル(1902–1995)
25/08/25長大吊り橋を撮影したピーター・スタックポールはライフ誌創刊の写真家になった(1913-1997)
25/09/08アパラチアや南東部の農村地帯の人々の肖像写真で知られているドリス・ウルマン(1882-1934)
25/08/25長大吊り橋を撮影したピーター・スタックポールはライフ誌創刊の写真家になった(1913-1997)
25/09/15指導者であり預言者であり歴史家であり学者だった写真家ジョン・ローエンガード(1934-2020)
25/09/17女性を客体ではなく主体として描写した写真家エレン・フォン・アンワースの視線(born 1954)
25/09/22精巧に演出された赤ちゃんたちの愛らしい写真で世界的に評価されるアン・ゲデス(born 1956)
25/09/26エロティックで都会的なスタイルの頂点を極めた写真家ヘルムート・ニュートン(1920-2004)
25/10/06モデルからファッション写真家に転じたスリランカ系英国人ナイジェル・バーカー(born 1972)
25/10/15ヴィクトリア朝イギリスで最も有名な写真家ジュリア・マーガレット・キャメロン(1815-1879)
25/10/17革新的手法を用いたドイツ系ユダヤ人写真家エーリッヒ・ザロモンの悲劇的な運命(1886-1944)
25/10/20地球の環境破壊と気候変動の壊滅的な影響を明瞭に伝える写真家ニック・ブラント(born 1964)
25/10/23政治家や作家など世界の重要人物の精緻な肖像写真を撮影したユーサフ・カーシュ(1908-2002)
25/10/26直面する不正義と対峙するパレスチナ系オランダ人写真家サキル・カデルの眼差し(born 1990)
25/11/12目に見えない鳥の飛行経路を可視化した作品で知られる写真家シャビ・ボウの秘技(born 1979)
25/11/18自身の文化的環境を探求したメキシコを代表する写真家グラシエラ・イトゥルビデ(born 1942)
25/11/25フォトルポルタージュの新たな時代を築いたスペインの写真家ラモン・マサッツ(1931-2024)
25/12/10畏敬の対象となる自然風景および聖なる場所を崇拝した風景写真家リンダ・コナー(born 1944)
25/12/23インド初の女性報道写真家で独立国家への変遷を記録したホマイ・ヴィヤラワラ(1913-2012)
26/01/04モデルから転身した写真家サラ・ムーンの雰囲気により際立った印象派的な作品(born 1941)
26/01/07音楽に合わせた写真「ドリーム・ピクチャーズ」で知られるブランソン・デク―(1892-1941)
26/01/22技術者の客観性と技術的志向を写真撮影に反映させたエミール・ハイルボルン(1900-2003)
26/01/26芸術的側面と社会的な側面の二つの特質を最適に供えた女性写真家アタ・カンドー(1913-2017)
26/03/05戦争や貧困など社会の底辺を記録して世界的な評価を得た写真家ドン・マッカラン(born 1935)
26/03/22カメラで芸術的インスピレーションを追求した写真家リオ・ディジローラモの軌跡(1934–2019)
26/05/05写真界では神童のような存在と見なされた巨匠ハロルド・ファインスタイン (1931-2015)
26/05/22形式と感情の巨匠:ドイツ人写真家トニ・シュナイダース不朽の遺産(1920-2006)
26/06/07スコットランド出身の華麗なるプリントのレジェンド写真家アルバート・ワトソン(born 1942)
26/06/11目撃者であることだけで十分かと自らを問いつめた夭折の報道写真家ジル・カロン(1939-1970)
26/06/23困難な状況下での撮影のための新しいツールを開発した写真家 J・R・アイヤーマン(1906-1985)

子供の頃「明治は遠くなりにけり」という言葉を耳にした記憶がありますが、今まさに「20世紀は遠くなりにけり」の感があります。掲載した作品の大半がモノクロ写真で、カラー写真がわずかのなのは偶然ではないような気がします。20世紀のアートの世界ではモノクロ写真が主流だったからです。しかしデジタルカメラが主流になった21世紀、カラー写真の台頭に目覚ましいものがあります。ジョエル・マイヤーウィッツとサンディ・スコグランド、ジャン・ボードリヤール、 F・ディレク・ウヤル、マーティン・パー、コンスタンティン・マノス、久保田博二、ポール・フスコ、エルンスト・ハース、エヴリン・ホーファー、アレック・ソス、アンディ・ゴールドワージー、ウィリアム・エグルストン、ソール・ライタ、などのカラー作品を取り上げました。

photographer  Famous Photographers: Great photographs can elicit thoughts, feelings, and emotions.

2026年6月22日

世界史遠望(15)俺たちに明日はない(ボニーとクライド)の劇的な終幕

Bonnie and Clyde
Bonnie Parker (1910-1934) and Clyde Barrow (1909-1934) 1933

映画『俺たちに明日はない』(原題:Bonnie and Clyde)は実在した人物をモデルにしている。1930年代の世界恐慌下の米国で、ギャング団を率いて銀行強盗や殺人を繰り返した実在の犯罪者カップルである。彼らが射殺された3日後の1934年5月26日、ダラスの2つの葬儀場には、有名なアウトロー、クライド・バロウとボニー・パーカーの最後の姿を一目見ようと、大勢の見物人が押し寄せた。2年以上にわたり、彼らの禁断のロマンスと、死体の山を残した凶悪な犯罪行為は、国中を魅了していた。彼らの死後、数十本の映画、ドキュメンタリー、テレビシリーズが制作され、ボニーとクライドの生と死を美化してきた。1930年代、米国は大恐慌による未曾有の経済破綻に沈んでいた。株式市場の崩壊によって全国の銀行が連鎖的に破綻し、人々は一夜にして職を失い、住まいを追われ、飢えと寒さに耐える日々を送っていた。そんな混乱の最中に、一種の「反社会的ヒーロー」として人々の視線を集めたのが若きボニーとクライドだった。彼らは貧困と抑圧の中から立ち上がったように見える存在として、一部の層には共感や憧れさえも呼び起こしたのだった。ボニー・パーカーは1910年、テキサス州の貧しい家庭に生まれた。父親を幼くして亡くし、母と共にダラス郊外のバラキュー地区で育った。少女時代から詩や演劇に親しみ、文学やロマンに憧れる一方で、現実の生活は厳しく、やがて地元の高校を中退してウエイトレスとして働き始める。貧困と将来への閉塞感が、彼女の内に眠っていた反骨心を少しずつ育てていった。クライド・バロウは1909年、テキサス州のファーマーズ・ブランチで生まれた。

vintage threads
Bonnie and Clyde dressed in vintage threads

家族は農業で生計を立てていたが、やがて都市部へ流れ込み、質素なバラック小屋で暮らす生活に。音楽を愛し、サクソフォンを吹く夢想的な一面を持ちながらも、貧困と差別の現実は彼を犯罪の世界へと誘っていく。少年期から万引きや車泥棒で警察の世話になるようになり、短期間とはいえ刑務所での経験も彼の精神を蝕んでいった。全く違う背景を持つ2人は、1930年、共通の知人を通じてダラスで出会う。最初の出会いから瞬く間に心を通わせた2人は、互いの中に自分にはない何かを見出していた。ボニーはクライドの危うさと情熱に惹かれ、クライドはボニーの知性と純粋さに慰められた。それからの生活は、法と秩序を嘲笑うように、ひたすら逃亡と犯行を重ねながら、非現実的なドラマのような日々を駆け抜けるものとなった。農村部では干ばつによるダストボウル現象も重なり、家を失う者が続出。街には日雇い労働を求めて彷徨う男たちと、パンの列に並ぶ母子の姿が溢れていた。政府も金融機関もすでに信頼を失い、暴動やストライキが頻発する混沌の時代。そのような絶望の中で「銀行」や「資産家」を標的にする無法者たちは、既存の権威に楯突く存在として一部の大衆からは喝采を浴びた。ラジオや新聞は、そんな無頼のヒーローたちの逃走劇を連日報道し、国民の注目は逃亡者の一挙手一投足に集まった。彼らはただの犯罪者ではなく、安定や秩序の名のもとに抑圧された現実を憎み、「街々を、安定を縁結んだ社会を」吐き捨て、破壊を伴ってでも自分たちの道を切り開こうとした。ボニーは日記に詩を書き、クライドは盗難車で州境を越えて逃げ続けた。

Bonnie Parker and Clyde Barrow in 1933
Bonnie Parker and Clyde Barrow in 1933

2人は貧困層に対する象徴的な「解放者」として自らを演出し、時にパンを配り、時に武器を握った。彼らの物語は、痛みの時代に生きる国民の分身であり、現実逃避のファンタジーでもあった。ボニーとクライドの仲間として加わった「バロウ・ギャング」は、米国南部および中西部の広範囲にわたって凶悪な犯行を繰り返した。標的となったのは銀行だけでなく、小さなガソリン・スタンドや町の商店、ホテルなど多岐に渡り、時には警察署への襲撃も行われた。中でもオクラホマ州やミズーリ州などでは複数の死傷者を出す事件が相次ぎ、地域社会に大きな恐怖を与えた。彼らの行動は周到に計画されており、盗難車を次々に乗り換えながら州境を越えて逃亡を続け、州警察の管轄をまたぐことで追跡を困難にした。写真好きなボニーは、犯行後に仲間と並んでポーズを取る写真を残し、それが新聞に掲載されることで一部の大衆からはセンセーショナルな人気を集めた。しかし次第にその支持は薄れていく。彼らの犯罪は単なる略奪や復讐にとどまらず、警官や通行人など無関係な一般人をも巻き込んでいったため、当初あった「民衆の代弁者」としてのイメージは崩れていく。特に1933年のジョプリン事件では、パトロール隊員2名を射殺し、決定的に世論の風向きを変えることとなった。彼らの存在はロマンと暴力の入り混じった現象として注目されたが、もはやその暴力性が社会に与える影響を無視できなくなった頃、ボニーとクライドは「反体制の象徴」から「凶悪犯」へと転落していったのである。1934年5月23日、ルイジアナ州ビエンビル郡のホワイト・エーカラインと呼ばれる田道で、ついに運命の日が訪れた。

bullet-ridden car
A crowd gathers around Bonnie and Clyde's bullet-ridden sedan in 1934

ボニーとクライドは、数週間前から彼らを執拗に追跡していたテキサス州警察およびルイジアナ州保安官チームによる綿密に計画された待ち伏せ作戦の標的となってしまった。彼らの位置情報は、元仲間の裏切りによってもたらされたとされている。午前9時過ぎ、2人が現れた瞬間、6人の武装した法執行官は隠れていた茂みから姿を現し、一斉に銃撃を開始した。数秒間で150発以上の銃弾が、彼らの乗っていたフォードV8セダンに100発以上撃ち込まれた。逃げ場のない車内で、ボニーとクライドはなすすべもなく命を落とした。目撃証言によれば、ボニーは当時まだクライドの肩にもたれかかっており、2人は最後の瞬間まで離れずにいたという。銃撃後、現場に駆け付けた群衆は、穴だらけの車に驚きながらも、写真を撮ったり、車から記念品を持ち帰ろうとする騒ぎを起こした。こうして、米国史に名を刻んだ伝説の犯罪カップルは、突如としてその劇的な終幕を迎えた。だが彼らの死は、単なる終わりではなく、メディアと大衆によって語り継がれる神話の始まりでもあった。ボニーとクライドは、ただの犯罪者にとどまらず、1930年代という激動の時代における痛み、貧困、そして社会的不平等を体現した象徴的存在となった。下記リンク先の動画は「ボニーとクライドについて、ほとんどの人が知らない13の事実 | アメリカ・オールドウェストの豆知識」 (21:33)です。

YouTube  13 Facts Most People Never Knew About Bonnie And Clyde | American Old West Facts