2026年4月16日

召集令状「赤紙」が届く日がやって来る

赤紙

時事通信デジタル版によると自民党は4月12日、東京都内のホテルで開いた第93回定期党大会で高市早苗首相が演説し、憲法改定について「発議にめどが立ったと言える状態で来年の党大会を迎えたい」と表明した。今後1年で国会発議に道筋を付けたいとの考えを明らかにした。衆参両院それぞれの本会議にて総議員の 3分の2以上の賛成で可決した場合、国会が憲法改正の発議を行い、国民に提案したものとされる。なお憲法の改定箇所が複数ある場合は、内容において関連する事項ごとに区分して発議される。高市は「歴史とい書物の新たなページをめくるべきかどうか、国民に堂々と問おうではないか」と述べ、改憲の是非を問う国民投票の実現に意欲を示した。テレビ東京と日本経済新聞が3月27〜29日に実施した世論調査で、高市内閣を「支持する」と答えた人は72%だった。JNNによる調査と共に70%を超える内閣支持率をキープしていることが明らかになった。発足から半年が経過してもなお当初の数字か、それ以上の内閣支持率を維持している政権というのは直近では記憶にない。この支持率を背景に、改憲起草委設置を提案、議論の加速要求、衆院審スタートしたという。首相は「どのような国をつくり上げたいか理想の姿を物語るのが憲法だ」と指摘。「議論のための議論ではなく、行うべきは決断のための議論だ」と語り、衆参両院の憲法審査会で検討を加速させる必要性を強調したのである。

高市辞めろ
首相官邸前で抗議集会の参加者が掲げたプラカード ©2026 賈浩成/新華社

自民党の日本国憲法改正草案では、9条の2として「国防軍」の規定を置いた。その1項は「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する」と規定している。世界中を見ても、都市国家のようなものを除き、一定の規模以上の人口を有する国家で軍隊を保持していないのは、日本だけであり、独立国家が、その独立と平和を保ち、国民の安全を確保するため軍隊を保有することは、現代の世界では常識とされている。この軍隊の名称について、当初の案では、自衛隊との継続性に配慮して「自衛軍」としていたが、独立国家としてよりふさわしい名称にするべきなど、様々な意見が出され、最終的に多数の意見を勘案して「国防軍」とした。原発や消費税問題も無論だが、やはり自民党が公言して憚らない憲法改悪論が気になる。自民党ホームページの「日本国憲法改正草案Q&A」の設問「自衛隊を国防軍に変えたのはなぜですか?」に対する答えとして、上記のように記述している。まさにこれは改正ではなく壊憲である。憲法9条を見てみよう。「1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」とある。このままでは、この世界に誇るべき崇高な条文が消えてしまうかもしれないのである。徴兵検査通達書、あるいは臨時召集令状(赤紙)が届く日がやって来る可能性を否定できない。この危機を多くの人が感じ取り、世論の流れが変わることを祈りたい。

憲法  日本国憲法9条を発案した第44代内閣総理大臣幣原喜重郎(しではらきじゅうろう)の平和のすすめ

2026年4月14日

ハンガリーの極右独裁者ヴィクトル・オルバンの敗北

Hungarian PM Orbán's defeat deals a blow to Trump and Putin ©2026 EDP

いわゆる「西側」における政治的議論が、たった一つの出来事によって支配されることは稀である。そしてそのようなことが起こる場合、それは往々にして良い兆候ではない。戦争や自然災害がそのような影響を与えることがあるが、あるいは、時に避けられない権威主義の勝利へと着実に突き進むように感じられる、過激派政党の最新の勝利もそうした影響を与える可能性がある。しかし昨日、私たちの注目はすべて、世界の極右勢力にとって大敗北となった出来事に集まっていた。ハンガリーで、ヴィクトル・オルバン首相が議会選挙で敗北したのだ。しかも、それは大敗だった。オルバン首相率いるフィデス党はわずか38%の得票率にとどまり、主要な対立候補であるペーテル・マジャール氏のティサ党は53%を獲得した。重要なのは、この結果によりティサ党が議会で199議席中138議席という3分の2以上の圧倒的多数を占めることになり、オルバン首相が築き上げてきた権威主義体制の多くを覆すことが可能になるかもしれないということだ。これほど多くの人々が、小国で経済的に弱く、地政学的にも(少なくとも伝統的な意味では)目立たない国の議会選挙にこれほど注目したことは、おそらくかつてなかっただろう。

People celebrating Orbán's defeat in the Parliament building in Budapest ©2026 Ferenc Isza

政治的立場を問わず、ヴィクトル・オルバンは「非自由主義」の台頭の象徴として正当に認識されている。彼は間違いなく、民主主義と法の支配に対する国境を越えた権威主義的攻撃における決定的な人物の一人である。そして、16年間の政権を経て、オルバンのハンガリー首相としての任期はまもなく終わりを迎える。ハンガリー国民はもう我慢の限界に達し、その意思を表明する方法を見出したのだ。アメリカ合衆国における民主主義とその不満、そしてアメリカにおける民主主義をめぐる対立が、権威主義的な民族主義と民主的な多元主義との間の国際的・国境を越えた闘争とどのように関連しているかに焦点を当てているため、昨日起こった出来事のより広い意味、そこから導き出せる結論、そして私たちが学ぶことができるかもしれないし、できないかもしれない教訓について考察したいと思う。オルバンに対する国境を越えた執着は、民主主義をめぐるこの広範な闘争における世界史的な利害関係について何を物語っているのか。そして、なぜ私たちは決して敗北主義に屈してはならないのか、あるいは自由民主主義の必然的な崩壊という右派の主張を永続させようとする誘惑に負けてはならないのか。右翼権威主義には、決して必然的なものではない。この闘いはまだ終わっていない。下記リンク先は欧州民主党の公式ウェブサイトです。

democracy  Who we are | Our ideas | Our campaigns | Latest news | The European Democratic Party

2026年4月12日

世界史探索(1)コンスタンティノープルの陥落

The Fall of Constantinople
ファウスト・ゾナーロ(1854-1929)コンスタンティノープルに入城するメフメト2世

総勢10万のオスマン帝国軍団を率いたメフメト2世は、1453年4月6日からコンスタンティノープルの包囲を開始した。迎え撃つビザンツ軍はヴェネツィアやジェノヴァからの傭兵・義勇兵をあわせても1万弱に過ぎない。それでも優れた海軍力も手伝って守備兵はよく守った。メフメトは4月22日には船団の「山越え」という離れ業までやってのける。木製軌道と滑車と膨大な数の牡牛や兵士の力を使ってボスポラス海峡から船団をガラタ地区の丘を越えて金角湾内に滑り込ませたのだ。金角湾西側に入ったオスマン艦隊は、陸上からのオスマン軍の砲撃と呼応して、ビザンツ艦隊を圧迫した。それでもこの町を落とすことはできなかった。しかしウルバンの巨砲が威力を発揮し、西の大城壁に大きな損傷を与え始める。包囲を開始して二か月に近づこうとする5月28日夕刻、メフメト2世は最後の総攻撃を命じる。この征服戦の遂行には側近中にも反対者がおり、失敗はすなわち、スルタンの権威失墜になりかねない情勢だった。作戦を陣頭指揮したスルタン・メフメト2世にとっても命運のかかった決戦だった。5月29日の夜明け前、オスマン軍は最後の攻撃を行い、城内へなだれ込んだ。この日をもってビザンツ帝国は滅亡した。イスラム法は、戦争によって略奪された異教徒の都市では、聖戦の戦士たちに3日間の略奪の権利を認めている。コンスタンティノープルの陥落直後にも、メフメト2世は自らの意に反しても、略奪を許可せざるを得なかった。しかし、彼は「ローマの皇帝」の都をできる限り無傷で手中にしたいと考えていたと言われる。略奪は1日できりあげられたとみるのが妥当ではないか。略奪の対象には人間も含まれる。

Hagia Sophia
イスタンブルのアヤソフィア前でメッカに向かって礼拝するムスリムたち

イスラム法では、戦利品としての異教徒の捕虜は、奴隷として捕獲者の所有に帰する。そのため多くの市民が捕虜となって奴隷に落とされ、その数は5万人に達した。この捕虜についても、メフメトは、スルタンの取り分となったものを丁重に扱い、特にビザンツ貴族たちについては、その身代金を自ら払って彼らの解放を保障したといわれる。メフメト2世は、コンスタンティノープルを征服すると、荒廃した町の再建に取り組み、街の復興に努めた。彼はなによりもオスマン帝国の首都として「ローマの都の再興」を夢見ていた。その思いは彼が6世紀に建造されたビザンツ帝国の記念碑的建造物アヤソフィアをモスクに転用した際に作成された寄進文書に色濃くあらわされている。

「… 彼は偉大なスルタン、よく知り、正しき王にして … ローマの帝国の終焉ののちに、神アッラーの言葉を掲げた者である。… 彼はこれほどまでにアレクサンドロス王の時代を体現している。… 先達たるアレクサンドロス王の杖を受け継ぐものである」
コンスタンティノープルの陥落

このようにメフメト2世は自らをアレクサンドロス大王やローマの後継者と見なしていた。そもそも彼は、即位以前からアラビア語、ペルシア語とイスラム諸学だけではなく、ギリシア語、ラテン語、ヘブライ語も修得し、ことにギリシアの文献を広く学んでいたことが知られている。アテネとトロイの遺跡を訪れ、称賛の言葉を発した彼を、ある歴史家は「ギリシア崇拝者」とまで記した。自らをアレクサンドロス大王の後継者と意識するメフメト2世は、実際、東西の融合を果たすべく1480年、ローマ征服を目指してイタリア半島最東端の港町オトラントを占領する。蛇足ながら塩野七生著『コンスタンティノープルの陥落』(新潮文庫)によると以前は「ビザンチウム」と呼ばれていた。そしてコンスタンティノス大帝の名をとってコンスタンティノスの都という意味の「コンスタンティノポリス」と呼ばれるようになった。「コンスタンティノープル」は現在、日本で最も普及している英語式発音の呼び方。「イスタンブル」もコンスタンティノポリスのトルコ語式の呼び方が長い年月経た結果、原語を想像するのが不可能なほどに変化したに過ぎないという。下記リンク先はワシントンD.C.の聖ソフィア・ギリシャ正教会大聖堂の記事「コンスタンティノープルの陥落は深刻な結果をもたらした」です。

history  Fall of Constantinople Had Profound Consequences | St Sophia Greek Orthodox Cathedral

2026年4月10日

ドナルド・トランプはベンヤミン・ネタニヤフの操り人形

イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフがアメリカ大統領ドナルド・トランプにどれほどの影響力を持っているかは驚くべきことだ。トランプがイランから核の脅威を完全に排除したと宣言してからわずか9ヶ月後に、なぜ再びイランを攻撃する必要性を感じたのか、その理由を探しているなら、これ以上探す必要はないだろう。トランプは北朝鮮の金正恩やロシアのプーチンのような政治的強権指導者に抗しがたいほど魅了されている。彼をを説得して戦争に踏み切らせたのはネタニヤフだけであり、しかも一度ならず二度もだ。昨年6月はイランへの空爆は一日限りだったが、今回は「終わりのない戦争」の始まりとなるかもしれない。トランプは2024年の大統領選キャンペーンでそれを回避すると約束しており、ベネズエラでの最近の勝利のように、イランに対して迅速かつ決定的な勝利を収めることでその約束を守れると考えている。しかしイランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイを殺害することは、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を誘拐することと何ら変わりなく、決定的な意味を持たない。どちらの場合も政治体制は単に政権内で次席の指導者を大統領に昇格させるだけで、抑圧的な体制はそのまま維持される。そして、イランの場合は、依然として抵抗を続けることができるのだ。トランプは、短期間で勝利を収めて政権を転覆させることができるという幻想にしがみついている。確かにイランの攻撃力は非常に低いが、ネタニヤフもトランプも地上部隊を派遣しない限りイランはいつまでも生き残ることができるのである。一方、保険会社はペルシャ湾の石油タンカーへの保険提供を拒否しており、世界の石油供給量の5分の1が途絶え、価格が高騰している。さらに、ネタニヤフ首相が実現できれば、ガザ地区の停戦は崩壊し、イスラエル国防軍(IDF)はパレスチナ人の追放作戦に着手するだろう。戦略的・技術的な現実に対するトランプ大統領の無知につけ込み、二度目のイラン攻撃を促したのは、おそらくネタニヤフ首相だったのだろう。

Mar-a-Lago

9ヶ月前のアメリカによるイラン爆撃以前でさえ、イランの核兵器による差し迫った脅威は存在しなかった。イランは架空の核兵器を運搬するための現実的な手段すら持っていないのだ。ネタニヤフ首相は昨年6月にトランプ大統領にイラン攻撃を促した際、自身の発言を真に信じていたかどうかは定かではないが、その作戦は功を奏した。その後、イランの脅威はもはや信頼できるものではなくなった。しかし、トランプ大統領はガザ地区での虐殺に憤慨し、ネタニヤフ首相に10月の停戦合意を強要した。ネタニヤフはトランプ大統領の禁止令に逆らう勇気がなく、「停戦」以来、イスラエル国防軍によって殺害されたパレスチナ人はわずか618人にとどまっている。しかし今、4ヶ月にわたる試みの末、ネタニヤフはトランプ大統領を説得して再びイランを攻撃させた。今回は地上部隊を除けば、イスラエルが全面的に参加してイラン政権を打倒するための大規模な取り組みだ。なぜ彼はそれを望んだのだろうか? もしイスラエルとアメリカがイランとの大規模な戦争で同盟関係にあるのなら、ガザ地区で何らかの不幸な事件が起きたからといって、イスラエル国防軍が再び大規模な殺戮と民族浄化を開始せざるを得なくなったからといって、トランプ大統領が同盟国に背を向けるはずがない。トランプ大統領はまたしても騙されたのだ。予想では、ガザ停戦は間もなく崩壊するだろう。ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、イランとの戦争の現段階でドナルド・トランプ大統領がイランとの停戦に合意することに警告を発した。この報道は、パキスタンが仲介した45日間の暫定停戦案がワシントンとテヘランに提出されてから数時間後に発表された。イランはこれに対し、恒久的な停戦以外は認めないとし、トランプ大統領はイランに対し、火曜日の夜までにホルムズ海峡を再開しなければ「地獄」に直面すると最後通牒を突きつけ続けた。下記リンク先はイスラエルの多言語オンライン新聞タイムズ・オブ・イスラエル紙の記事「ネタニヤフ首相はトランプ大統領に対し現段階ではイランの停戦を進めないよう要請したと述べた」です。

israel  PM Netanyahu said to ask D. Trump not to move forward with Iran ceasefire at this stage