2019年5月23日

夏草や君わけ行けば風薫る/正岡子規

平野神社(京都市北区平野宮本町)

斑入額紫陽花(クリックで拡大)
五月晴れに誘われて近所の平野神社に参詣した。酔客に踏み荒らされた桜苑に夏草が蘇生、ほっとする。桜を傷める花見茶屋は止めて欲しいと思うが、こればかりは神社の都合、口をはさむわけにはゆかない。小手毬や独逸菖蒲も姿を消し、辛うじて蕾をつけているのが斑入額紫陽花だ。文字通り葉に白い斑が入った紫陽花だが、ここの花は園芸図鑑で見るそれとちょっと違うようだ。花の周囲を囲む萼片(がくへん)を見た記憶がないからだ。この先どうなるか、観察を続けようと思う。葉が白くなるといえば半夏生(はんげしょう)を思い出す。本来、半夏生は五節句・二十四節気以外の季節の移り変わりの目安となる「雑節」のひとつを意味し、2019年の今年は7月2日だそうだ。植物の半夏生はその頃に葉が半分白くなるが、名前は「半化粧」に由来する。おしろい(白粉)を顔に半分塗った芸妓を想像してみるが、さぞかし艶めかしいに違いない。京都では東山区の建仁寺塔頭両足院の庭園が有名だが、私は毎年、山科区の勧修寺を訪れることにしている。

2019年5月22日

安倍首相は Abe Shinzo と表記して欲しいのだろうか

中国や韓国の政治家は「姓・名」の順で表記されている

報道各社によると、日本人の氏名をローマ字で表記する際、国内外で一般的とされる「名・姓」の順番ではなく、日本語表記と同様に「姓・名」の順にするよう、政府機関や都道府県などに改めて要請する考えを明らかにした。文化庁が近く通知を出すという。2000年に文部相(当時)の諮問機関が答申をまとめたが「20年近く経過し、趣旨が十分に共有されていない」(柴山昌彦文部科学相)として改めて官公庁や都道府県、大学や報道機関などに通知するそうだ。さらに外国でも「姓・名」表記するよう海外報道機関に要請するという。確かに習近平は Xi Jinping、文在寅は Moon Jae-in という具合に、中国や韓国の政治家は確かに英語でも「姓・名」になっている。安倍晋三首相は Abe Shinzo と表記して欲しいのだろうか。この話題を Facebook にポストしたところ、一般市民は「名・姓の順で表記されます」というコメントをいただいた。調べてみたとろ、例えばAI研究で有名な中国の学者、李開復は Kai-Fu Lee と「名・姓」の順に表記されている。しかし『史記』を著した司馬遷は Sima Qian と逆だし、どちらを先にするのか、その線引きがよく分からない。今回の文化庁の呼びかけは強制力はないので、おそらく普及しないのではと私は睨んでいる。手間がかかるし、官公庁や報道機関の足並みが揃わなければ、混乱を招くだけで、これといったメリットが見当たらないからだ。いずれにせよ20年前に浸透しなかった投信を、何故今ごろになって唐突に蒸し返すのか不可解である。

2019年5月19日

店内撮影禁止は遠くなりにけり

ポケモンセンター京都(京都市下京区四条通室町東入る)

SNS投稿もOK!(クリックすると拡大)
かなり昔の話になるが、京都四条通のショーウィンドウにカメラを向けたら、中から店員が飛び出してきた。有名ブランドの店だったのだが、撮影禁止だという。公道に面した展示なので、撮っても構わないと思ったのだが駄目だと言う。ちょっと押し問答をしたが、結局、撮影許可は下りなかった。ショーウィンドウはともかく、店舗の内部の撮影禁止はごく当たり前のことだった。展示方法を真似されないためという説明が一般的だったと記憶している。価格が競争店やメーカーにバレないようにするため、というのが本音の理由だったのだろう。時代を経た今日、その当たり前に変化が生じている。習慣を破ったのがヨドバシカメラだった。2015年9月から全店舗に無料 Wi-Fi サービスを導入したほか、店内で来店者がカメラ撮影できるようにした。ディスプレイや商品、イベントなどを撮影でき、撮影した画像を SNS やブログに投稿してもいいようにしたのである。ライバルのビックカメラが追従したのは言うまでもない。未だに店内撮影禁止をしてる商店は多いのだが、売り場が魅力的なら、撮影 OK にして広めてもらったほうが得策だと思われる。今春オープンした京都経済センターの中にある、ポケモンセンター京都を覗いたら、ピカチューの凝ったディスプレイが目に止まった。受付嬢に訊ねたら撮影は「どうぞどうぞ」という返事が返ってきた。このエントリーをきっかけに、ピカチューに会いに行く人がいるかも知れない。さて、如何だろうか。

2019年5月18日

花浮かぶ手水使わず去ぬるかな/漫歩

手洗い器に浮かべた花びら

花びらを浮かべて飾られた手水舎や手水鉢を花手水(はなちょうず)と呼ぶ。手水舎は社寺仏閣を参拝する前に、手や口をすすいで、身を清めるところ。手水鉢も本来は身を清めるための水を確保する器をさす。茶の湯にも取り入れられ、露地の中に置かれるようになり、つくばいと呼ばれるようになった。長岡京市浄土谷堂ノ谷にある、楊谷寺の紫陽花の花手水が「インスタ映え」するということで有名である。京都市左京区鹿ヶ谷にある法然院の境内にある、手水鉢の花手水を何度か私は拝見している。四月初旬の特別拝観の際に飾られる椿が有名で、今年も貫主である梶田真章住職が自ら撮影、ソーシャルメディア Facebook に掲載していた。写真は庭の片隅にある、手水鉢ならぬ手洗い器に浮かべたバラとクレマチスである。いずれも昨夏、東京へ転居した娘が育てた花樹で、朽ち果てる前に家人が飾ったもの。表題は花が浮かんでいたので、手水を使わなかったという意味の句だが、我が家の庭も同じ状態が続きそうだ。

2019年5月16日

丸山穂高「戦争で北方領土奪還」発言に潜む歴史の闇

ジョルジュ・ビゴー「ロシアとの戦争を日本にけしかける英米両国」1904(明治37)年ごろ

北方領土への「ビザなし交流訪問団」に同行していた丸山穂高衆議院議員が、元島民の訪問団長とのやり取りのなかで「戦争でこの島を取り返すことに賛成ですか、反対ですか」と迫ったという。団長が「戦争なんて言葉は使いたくないです。使いたくない」と否定しても、丸山議員は「でも取り返せないですよね」と追及。そしてさらに「戦争しないとどうしようもなくないですか」と続けたそうだ。日本維新の会代表の松一郎大阪市長は当初「言論の自由」と庇ったが、騒ぎが大きくなり、慌てて除名処分にして議員辞職を迫った。しかし丸山議員は辞職をしない考えを表明している。それでは何故あのような発言をしたのだろうか。

千島列島を巡る紛争の歴史クリックで拡大
フランクリン・ルーズベルト米大統領は、1945年2月のヤルタ会談で、ソ連のヨシフ・スターリン首相に対日参戦を求め、千島列島をソ連領とすると提言した。そしてソ連は同年8月18日、千島列島に進攻を開始する。イラストはジョルジュ・ビゴーが描いた、日露戦争をけしかけた英米の風刺漫画だが、米国は「第二次日露戦争」をそそのかしたのである。この史実はどうやら広く一般に浸透していないようだ。日本政府はポツダム宣言を受諾し、連合国に無条件降伏し同年9月2日降伏文書に調印した。これによって千島列島はソ連の占領下になった。そして1951年、サンフランシスコ平和条約を批准、日本は千島列島の放棄を約束してしまった。米国代表は「千島列島には歯舞群島は含まないというのが合衆国の見解」と発言したが、ソ連代表のアンドレイ・グロムイコ第一外務次官は「千島列島に対するソ連の領有権は議論の余地がない」と主張した。吉田茂主席全権は条約受諾演説で「千島列島及び樺太南部は、日本降伏直後の1945年9月20日、一方的にソ連領に収容されたのであります」「日本の本土たる北海道の一部を構成する色丹島及び歯舞諸島も終戦当時たまたま日本兵営が存在したためにソ連軍に占領されたままであります」と述べている。これが日本政府が不法占拠だと主張してきた所以だろう。ところが北方領土の日の今年2月7日、北方領土返還要求全国大会が採択したアピール文から、これまで使ってきた「北方四島が不法に占拠されている」との文言が消えてしまった。交渉に行き詰まった安倍政権が、ロシアを刺激しないようにする狙いがあったのである。丸山議員の発言趣旨をそのまま代弁するわけにはゆかないが、武力で奪われたという史実を強調したかったのだろう。自らの交渉では解決しないと観念した安倍晋三首相に、皮肉にも結果的に助力してしまった可能性がある。この一件でさらに領土返還交渉が遠のけば「丸山のせいだ」と首相は言い逃れできるからだ。

2019年5月15日

カメラストラップのニコン巻き異聞

ストラップの先端が隠れる取り付け方

富士フイルム X100F の使用説明書より
新規購入した富士フイルムのデジタルカメラ X100F の使用説明書に、左のようなイラストが載っている。ストラップをカメラに取り付ける方法を解説したものだが、私のやり方と違うことに気づいた。ストラップを間に通すことで回ってしまうのを防ぐためのパーツ、樹脂製サルカンがストラップの長さを調節するためのアジャスターの外側、つまり肩当に近いところにある。これはカメラ側に近い位置に付けるべきではないか。それにストラップの先端が浮き出たままで心もとない。そこで上図のように取り付けてみた。最後にストラップをアジャスターの肩当側の穴に入れ、逆方向に折り返して通すのがコツである。3本通せる厚さのサルカンなら、さらに先端をカメラ側に突っ込むと結びが安定する。
キヤノンの Q&A 検索より

こうすると先端が隠れ、見た目がスッキリするので、私はこの方法で取り付けている。ちょっと気になり、ネットで検索したところ、これは「ニコン巻き」「報道結び」と俗に言われている方法だそうである。確かにニコンの説明書に載っている方法であるが、同社が発明したわけではないと思う。この方法が「報道結び」と呼ばれてることに対して、キヤノンユーザーは心外かもしれない。スペインの写真関連サイト PHOTOLARI がまとめたデータによると、世界報道写真コンテスト2018年度受賞作品で使用されたカメラは、ニコンが他社を圧倒したそうである。しかし2016年のリオデジャネイロ五輪では互角だったと言われている。来年の東京五輪の協賛社はキヤノンだし、報道写真の分野でシェアが低いわけではない。キヤノンのQ&A検索ページを覗いたら、富士フイルムと基本的には同じような方法が掲載されていた。ただしサルカンはボディに近いところに付いている。また「やっぱりニコン巻きをやめた」というキヤノンユーザーが、その理由を「アンチニコン派だからです」とブログに書いているのを読んで、思わず苦笑してしまった。確かに罪なネーミングである。しかしこれは長い間報道写真に関わってきた私も知らなかったし、一部の写真愛好家に流布している呼び方に過ぎない。ニコンの専売特許ではないし、他社のカメラだからと言って使わないのはオカシナ話である。