2026年6月3日

世界史遠望(8)米国公民権運動の先駆けモンゴメリー・バス・ボイコット事件

Rosa Parks on a Montgomery bus
Rosa Parks on a Montgomery bus and UPI reporter Nicholas C. Chriss on December 20, 1956

1955年12月1日、アラバマ州モンゴメリーで、ローザ・パークスは公共バスで白人男性に席を譲ることを拒否したため、市の人種隔離法に違反したとして逮捕された。パークスの歴史的な市民的不服従行為に続き、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアという若いバプテスト派牧師が組織したモンゴメリー・バス・ボイコット運動が成功を収めた。「公民権運動の母」として知られるローザ・パークスは、1913年にアラバマ州タスキーギで生まれた。彼女は裁縫師として働き、1943年に全米黒人地位向上協会(NAACP)のモンゴメリー支部に加入した。1955年のモンゴメリー市の条例によると、アフリカ系米国人は公共バスの後部に座らなければならず、バスの前部が満席になった場合は白人乗客に席を譲る義務があった。

Martin Luther King Jr.
Martin Luther King Jr. outlines his strategy for the Montgomery Bus Boycott in 1955

パークスは黒人専用席の最前列に座っていたところ、白人の運転手から白人男性に席を譲るよう要求された。パークスの拒否は突発的実際、地元の公民権運動指導者たちは数ヶ月前からモンゴメリー市の人種差別的なバス法に異議を唱える計画を立てており、パークスもその話し合いに加わっていたのだ。パークスの逮捕を知った全米黒人地位向上協会(NAACP)をはじめとするアフリカ系米国人の活動家たちは、12月5日に黒人市民によるバスボイコットを行うよう即座に呼びかけた。ビラで情報が広まり、活動家たちは抗議活動を組織するためにモンゴメリー改善協会を結成した。

Rosa Parks waits to board a bus
Rosa Parks waits to board a bus at end of bus boycott on December 26, 1956 ©Don Cravens

バスボイコット初日は大成功を収め、その夜、26歳のマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師は教会に集まった大勢の人々に「米国民主主義の最大の栄光は、権利のために抗議する権利である」と語った。キングはバス・ボイコットのリーダーとして台頭し、人種統合反対派から数多くの殺害予告を受けた。一時は自宅が爆破されたが、彼と家族は無事だった。ボイコットは1年以上続き、他に手段がないときは、参加者は相乗りしたり、何マイルも歩いて仕事や学校に通った。アフリカ系米国人は以前モンゴメリーのバス利用者の70パーセントを占めていたため、市の公共交通機関はボイコットの間、深刻な影響を受けた。1956年11月13日、米国最高裁判所は、アラバマ州とモンゴメリー市のバスの人種隔離法は米国憲法修正第14条の平等保護条項に違反するとして、これを無効とした。

Rosa Parks joins in a march
Rosa Parks joins in a march at the South African Embassy in D.C. on December 10, 1984

12月20日、キング牧師は「市バスに対する1年間の抗議活動は正式に中止され、モンゴメリーの黒人市民は明日朝、人種隔離のない状態でバスに戻るよう強く勧められる」という声明を発表した。ボイコットは翌日終了した。ローザ・パークスは、新たに人種隔離が撤廃されたバスに最初に乗車した一人だった。マーティン・ルーサー・キング・ジュニアと彼の非暴力公民権運動は、最初の大きな勝利を収めた。ローザ・パークスは2005年10月24日に亡くなった。その3日後、米国上院はパークスを称える決議を可決し、彼女の遺体を米国議会議事堂の円形広間に安置することを許可した。下記リン先はスタンフォード大学マーティン・ルーサー・キング・ジュニア研究教育研究所の「モンゴメリー・バス・ボイコット事件」です。

university  Montgomery Bus Boycott: The Martin Luther King, Jr. Research and Education Institute

2026年6月1日

トランプ大統領に逆風:建国250周年記念コンサートの出演を辞退するアーティスト続出

freedom 250
北米大陸にあった英国の13植民地の独立宣言が1776年7月4日に採択された

ドナルド・トランプ米大統領が6月下旬、ワシントン D.C.で大規模な米国建国記念日祝賀イベントを開催しようと推進する中で「偉大な米国の州祭」と銘打たれたイベントの出演者として発表されたアーティストの大多数が、最初の出演者リストが発表された直後に出演を辞退した。トランプはこのイベントを「米国復活集会」と称する集会に置き換えることを検討していると述べた。集会では「国を鼓舞する重要な演説を行う」予定だという。短期間での開催の実現可能性を調査するよう担当者に指示したと述べ、それは「米国を祝うワイルドで美しい祭典」になると語った。モリス・デイ・アンド・ザ・タイムのモリス・デイは「出演はしない」とフェイスブックに投稿した。出演予定だったもう一人のアーティスト、ヤング MC も「フリーダム250イベントには出演しないことをエージェントに伝えました」と彼もフェイスブックにポストした。アーティストたちは、このイベントに政治的な関与があるとは一切知らされていなかった。

Morris Day
モリス・デイ&ザ・タイム

主催者はイベントが非党派的だと主張しているが、音楽雑誌『スピン』はトランプ大統領が支援していると報じている。当初出演予定だったコモドアーズも、木曜日にソーシャルメディア上で「グレート・アメリカン・ステート・フェアでは演奏しない」と発表した。「私たちの音楽は常に私たちの声であり、私たちは特定の政党と公に提携しないことを選択しています」と声明は述べている。カントリー歌手のマルティナ・マクブライドは、ソーシャルメディアで出演しないことを発表した。彼女は、当初はイベントが非党派的なものだと説明を受けて出演を申し込んだが「それは誤解を招くものだった」と書いている。「私はたくさんの質問をし、これは全 50 州を祝うための超党派的なイベントだと保証されたけど、しかし昨日から状況が変わり始め、私たちが聞かされていたことは実際には起こっていません」と語った。

Commodores
コモドアーズ

バンド「ポイズン」のブレット・マイケルズも、ソーシャルメディアで自身は出席しないと表明した。「残念ながら、当初は我が国を祝うものとして提示されたものが、私が参加することに同意した内容よりもはるかに分裂を招くものへと変貌してしまいました」と「私のファン、バンドメンバー、スタッフ、家族、そして私自身の安全についても懸念が表明されており、全く根拠のない、許しがたい脅迫も含まれています」と彼は述べた。ポップデュオ、ミリ・ヴァニリのフロントマンである ロブ・ピラタスは1998年に亡くなったが、もう一方のファブ・モルヴァンは出演すると語った。「巷で噂されているようなことは何であれ、私は6月26日にワシントンD.C.のナショナル・モールで開催されるグレート・アメリカン・ステート・フェアで "I Love The 90's Tour" の一環としてパフォーマンスを行います」とモルヴァンは CBS ニュースへの声明で述べた。

MartinaMcBride
マルティナ・マクブライド

曰く「私は人々を分断するのではなく、楽しませ、団結させるためにここにいます。人生と音楽を祝い、思い出の旅に出かけましょう。グレート・アメリカン・ステート・フェアは、米国建国250周年を多くの著名なアーティストと共に祝うイベントであり、私もその一員になれることを光栄に思います。この夏、全米各地で皆さんと再会し、ついにミリ・ヴァニリの曲を生で歌えることを楽しみにしています!」と語った。当初の出演者リストに名を連ねていたバニラ・アイスも、予定通り出演する。「バニラ・アイスは契約を結んでおり、6月26日にナショナル・モールで開催されるグレート・アメリカン・フェアでパフォーマンスを行う予定です」と、彼のマネジメント会社は CBS ニュースにメールで伝えた。下記リンク先は英国放送協会(BBC)の記事「トランプは US Freedom 250 コンサートを辞退したアーティストたちを批判し、自身を称える集会を検討している」です。

BBC News  Trump attacks artists dropping out of US Freedom 250 concert & mulls appearing himself

2026年5月31日

ホルムズ海峡冬景色:高市政権ナフサ不足の深刻

B&W
図らずもナフサ不足を可視化したポテトチップスの白黒パッケージ

中東情勢の悪化による物価高騰に対処する補正予算の編成を決めたことを受けて、首相官邸で記者団を前に説明した高市早苗首相は「ナフサは足りている」と繰り返し強調した。現場で物資不足が起きていることは認めたが、それは「買いだめや売り惜しみ」などで「目詰まり」が生じているためだとして、政府を挙げてその解消に取り組むとも表明した。詳細なデータをグラフ化したパネルを示し、時折笑みも浮かべて、ナフサは足りていると繰り返す高市首相だったが、その自信の根拠は最後まで読み取れなかった。カルビーが、ナフサからつくる印刷材料の不足に備えてポテトチップスなどの包装をカラー印刷から白黒に変えると発表したさい、首相官邸は露骨に不快感を表明した。ナフサ不足と言われることに神経質になっていたのだ。会見が開かれたのと同じ25日には、カルビーが予告通り「ポテトチップス」や「かっぱえびせん」の包装を白黒に切り替えて売り始めた。テレビや新聞では、連日、ナフサ不足が次第に多くの業種に影響を与え始めている実情を報じ始めた。カルビーだけではない。様々な商品やパッケージのデザインに使われるナフサ由来のインクの量を減らすためにカラーをやめて白黒に変える企業が続出している。ユニットバスやトイレの塗料も不足が懸念され住宅建設にも影響が出始めた。スーパーの商品を包む容器からゴム手袋、住宅建材、電化製品、医療用のチューブ、様々な産業現場で深刻な原材料不足の訴えが伝えられている。首相が強調したように「目詰まり」を解消すれば、本当に影響は回避できるのだろうか。

AI Takaichi
白黒パッケージのポテトチップスにお冠の高市首相(AI画像)

断熱材などの住宅建材業界のある関係者は、中東危機が勃発した当初から強い危機感を語っていた。 政府は中東以外の地域からの原料調達で年をまたいでも必要量は確保できるとしているが、ホルムズ海峡の封鎖が解かれたとしても、従来通りの供給が戻るのには長い時間がかかることを覚悟しなければならない情勢だ。ナフサ不足はすでに「いま、そこにある危機」となっている。楽観的な見通しを繰り返す高市政権が、初動の対応を誤ったのはごまかしようがない。世論は、すでに危機を感じ取っている。ナフサに限らず、中東情勢で物価は高騰し始めている。生活の様々な場面で影響が出始めているのだが、具体的な対応策は示されていない。これほど支持率が高く、衆院では300議席を大きく超える圧倒的な多数を持っているのにもかかわらず、思い切った対策を打ち出さないのは、いったいなぜなのか。野党やマスコミだけでなく、与党の中からまで、そうした疑問の声が出始めている。選挙で圧勝し、国民の支持も高いことで、それでも政治を前に進めることはできている。しかし、それはあくまで高市首相に対する「期待感」が強いからに他ならない。問題は、期待感だけでは対処できない、厳しい現実に直面したときに、果たして孤独な首相がそれを乗り切れるかどうか、ということだ。自分の考えに固執し、他人の忠告や助言に耳を貸さないだけではない。本人が間違ったと思っても、それを真摯に認め、方針を転換することが極めて苦手なように思える。カルビーの白黒インクに目くじらを立て、同社の動向に神経質になったという。価格上昇を抑えた企業努力とは理解できないらしい。どうしようもない。

髙市早苗  「白黒ポテチ」に目くじらを立てる小ささ「孤独な首相」より深刻、幹部官僚が漏らした高市政権の限界

2026年5月30日

宗教考現学(4)小説『邪宗門』と大本教の現在

瑞生大祭
出口王仁三郎教祖の生誕を祝う瑞生大祭(京都府亀岡市)

早世の作家、高橋和巳(1931–1971)の代表作である長編小説『邪宗門』は大本教(おおもときょう)の歴史を強く意識し、それをモデルにして描かれた作品として広く知られている。昭和初期の日本で国家権力から激しい弾圧を受けた新興宗教教団ひのもと救霊会の興亡を描いた作品である。この教団のモデルが、実際に二度にわたる大規模な弾圧を受けた大本教であることは間違いない。大本教が受けた弾圧、教主の投獄、教団の解体・崩壊のプロセスは、史実における大本事件と密接に対応している。作中の開祖や二代目教主などのキャラクター設定や教団の教義の変遷、国家権力との対立構造には、大本教の歴史的事実やエピソードが巧みに取り入れられている。ただし、この小説は単なる大本教のノンフィクションや記録ではない。高橋和巳は自らの思想を投影し、宗教、政治、権力、そして人間の「生」のあり方を問う文学作品として昇華させている。1965年から1966年にかけて『朝日ジャーナル』で連載、時代設定は1931年(昭和6年)から1946年(昭和21年)までとなっている。

金龍海
大本梅松苑「金龍海」の庭園(京都府綾部市)

社会の底辺から始まった教団が多くの信者を集めながら、戦争へと突き進む軍国主義国家によって「不敬罪」や「治安維持法」を盾に徹底的に弾圧され、滅びていく過程を追っている。単なる宗教物語にとどまらず、革命思想、人間存在の孤独、そして知識人が宗教や社会変革に何を求めたのかという深刻な問いが貫かれている。『邪宗門』は「日本文学の金字塔」と称されることもああるが、同時に非常に重く、読者に強い衝撃を与える作品である。現代社会においても「宗教と政治」「宗教二世問題」「カルトと国家」といったテーマが取り沙汰されることがあるが、戦前の弾圧の歴史を通して「何が正統で、何が邪教なのか」「人間はなぜ盲目的に何かを信じようとするのか」という普遍的なテーマが鋭く描かれています。圧倒的な密度: 宗教哲学、歴史、社会学、個人の内面描写が深く絡み合っており、読む人に対して「自分の拠り所は何か」という根源的な問いを突きつけてくる作品である。もし『邪宗門』を読んで宗教や歴史的な背景に興味を持たれたのであれば、実際の大本教の歴史(特に二度の大本事件や、出口なお・出口王仁三郎という二人の教祖の存在)について詳しく調べてみると、小説の描写がより鮮明に、より重層的に感じられるかもしれない。

邪宗門
高橋和巳『邪宗門 』(河出文庫)2014/8/6

現在の大本教(宗教法人大本)は、五代教主である出口紅(くれない)のもと、京都府綾部市と亀岡市を二大聖地として活動を続けている。出口紅(1956年生)は三代教主・出口直日(なおひ)の孫にあたる。1892年の開教以来、出口直(なお)、二代教主・出口すみこを経て、教祖・出口王仁三郎(おにさぶろう)の系譜を継承して現在は「みろくの世」の建設を掲げて活動している。二つの聖地はそれぞれ役割が分かれている。梅松苑(綾部市)は祭祀(まつり)の中心地。天恩郷(亀岡市)は宣教(教え)の中心地。旧丹波亀山城跡でもあり、現在も教団の手によって石垣の修復や維持管理が行われており、一般の参観も可能である。教団として、個々の信徒による正しい日常生活の実践を基本としつつ、多岐にわたる社会活動を行っている。保育園や老人ホームの運営。 国際共通語であるエスペラントの普及支援。平和・環境: 宗教を超えた対話(宗際活動)、国際医療援助、災害復旧援助。 「ギャラリーおほもと」の運営や芸術文化活動の推奨。外郭団体を通じた農業活動など、食と環境に関わる取り組み。信者数は国内で約17万人とされている。

宗教  宗教法人「大本(綾部市・亀岡市)」公式ウェブサイト・Oomoto Official website | 日本語・英語