この政治風刺漫画は二重、三重の意味で興味深い。ドナルド・トランプ前大統領の旗や横断幕を掲げたデモ隊の映像を見ながら、男が「バイデンの資質を巡る政治風刺漫画家の暴動」とつぶやいているからだ。まさか漫画家たちがこんなデモをする筈はないのだが、そのように見えるということなのだろう。トランプは今月フロリダ州オーランドで開かれる保守派の大規模イベント、保守政治活動会議(CPAC)で演説するという。政治の表舞台への復帰を目指すとみられるが、2月22日付けロイター通信によると、トランプにうんざりした共和党から党員の離脱が急増しているそうである。穏健な共和党員が主な離党者なので、共和党の予備選で優位に立つのは、幅広い有権者の意向を反映する政治家ではなく、トランプ氏支持層に受けの良い政治姿勢を打ち出す候補者になるだろうという。従って共和党の右傾化がさらに強まる可能性がある。ところでやはり Twitter という拡声器を失って以来、トランプの動静情報が激減している。しかし政治風刺漫画の世界では違う。
Biden chops Trump's legacy ©2021 Asier Sanz |
1月下旬、私は「バイデンは政治風刺漫画の主役になれるだろうか」という一文を当ブログに投稿した。バイデン大統領は「どちらかと言えば、穏健な調整型の地味な政治家なので、政治風刺漫画家は困惑しているかもしれない」と書いたが、やはり灰汁の強いトランプが相変わらず「主役」のままなのである。発足して一カ月が過ぎたバイデン政権だが、トランプ前政権からの政策転換を急ピッチで進めている。多用してきたのが議会の承認を経ずに政策を速やかに実行に移せる大統領令だった。米メディアの集計ではこれまで32本に署名し、第43代ブッシュ政権以降では最多を数える。政府施設内のマスク着用の義務化やイスラーム諸国からの入国制限撤廃など前政権の方針を覆す例が目立つ。しかし新型コロナウイルスで打撃を受けた経済再生では共和党の協力を得る見通しは立たず、分断の解消の困難さを浮き彫りにしている。就任後初のギャラップ調査によると、バイデンに対する不支持は 37% で、トランプは 45% である。どちらも評判は良くないが、バイデンは史上2番目の不支持率であることは注目に値する。ホワイトハウスからトランプが去りホッとした一面があるが、バイデンの評判も決して良いとは言えないようだ。その辺りの戸惑いが政治風刺漫画に投影されている。
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