いささか遅きに失した感があるが「アメリカ大統領選の"陰謀論"にハマってしまった私~やらかした当事者が振り返る~」と題したネット記事に興味をそそられた。陰謀論とはQアノンのそれで、筆者は画家、作家、芸術家、反戦反原発の市民活動家、映画監督の増山麗奈(44)である。冒頭部分を引用してみよう。
アメリカに新しくバイデン大統領が就任した。 深夜にテレビで中継されるその映像を、私は複雑な思いで眺めていた。「トランプがディープステート(世界を牛耳る闇の組織)をやっつけてくれる」「今回の大統領選ではトランプが勝っていたのに、選挙に不正があった」「バイデンの就任式に、選挙不正に関わった者たちの大量逮捕がある」。そういった「陰謀論」を信じて期待をしていたからだ。実際には「大量逮捕」は起こらなかったし、「トランプが大統領専用機から全世界の電波をジャックして行われる」といわれていた緊急放送もなかった。睡眠時間を削りながら、深夜まで起きて情報を集めていた自分がむなしく、詐欺にあったような気持ちになった。
増山は文字通りマルチタレントだが、2016年、第24回参議院議員通常選挙に東京都選挙区から社会民主党公認で立候補したが落選している。社会民主党は社会民主主義政党で、国際組織の社会主義インターナショナルに加盟している。曲がりなりにも「左翼」あるいは「リベラル」にも関わらず陰謀論、すなわちQアノンの主張を真に受けたとは信じがたい。Qアノンはネット百科事典ウィキペディアによると「世界規模の児童売春組織を運営している悪魔崇拝者・小児性愛者・人肉嗜食者の秘密結社が存在し、ドナルド・トランプはその秘密結社と戦っている英雄であるとされている。この陰謀論で仮定されている秘密結社は、一般的にディープ・ステート(影の政府)やカバール(陰謀団)と呼ばれている」からだ。
ビキニ姿で「桃色ゲリラ」を率いる |
増山は「Qアノンが提示したストーリーというのは、トランプを選挙で勝たせたかった陣営によって巧妙に作られた物語だったのではないか」とようやく疑い始めているそうだ。先の大統領選の投開票後、ドナルド・トランプ前大統領は様々な陰謀論を吹聴、選挙は不正だったとツイートした。しかしその主張はファクトチェックによって否定されたし、訴訟もことごとく却下された。しかしネットで拡散され、多くのそれを信じた人々が再拡散した。驚いたことに日本にも伝播し「保守の論客」や「ネトウヨ」たちがそれを引用してトランプを礼賛したのである。増山もそのひとりだったわけだが、少なくとも「左翼」ないし「リベラル」の筈である。ピンクのビキニを着用し、女性である事を武器に Love & Peace とに叫びながら各地でパフォーマンスを続けた。ドキュメンタリー映画「桃色のジャンヌ・ダルク」といて結実したが、どうやら裏には映画のためのみのパフォーマンスであったとも推測できる。従ってQアノンの陰謀論に騙されるのは「日本人の政治風土の浅さ」とうっかり単純化したら笑いものになってしまう可能性も否定できない。
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