2021年1月28日

バイデンは政治風刺漫画の主役になれるだろうか

Worst Cooks

日本では政治風刺漫画はやや廃れ気味だが、諸外国、特に欧米では盛んである。新聞や雑誌など個々のサイトで見ることができるが、チェックし切れない。そこで次の政治風刺漫画サイトを覗くことにしている。

ドナルド・トランプ前大統領の4年間を私は政治風刺漫画を通じて眺めてきた。バラク・オバマ元大統領も政治風刺漫画のターゲットになっていたが、トランプはその上を走ってきたと言えるだろう。先の大統領戦は、ジョー・バイデンへの交代というより、トランプの敗退という印象が強い。従って政治風刺漫画家にとっては、トランプという恰好のターゲットを失ってしまったと言えそうだ。トランプ政権は大統領自ら民族・人種・性別による偏見を表明してマイノリティー迫害を助長し、批判を受けるとフェイクニュースだと強弁した。利益相反の疑いを押しのけて家族の運営するホテルやゴルフ場を率先して使い「米国第一」ならぬ「自分第一」へと利益誘導を続けた。そして国際関係も破壊した。地球温暖化に関するパリ協定の離脱、NAFTA(北米自由貿易協定)の一方的破棄と改定強要、WHO(世界保健機関)離脱などはそのわずかな例に過ぎない。大統領選では「選挙を盗まれた」と根拠なき陰謀論を展開し、煽られた支持者たちが連邦議会議事堂に乱入した。米国は様々な価値観が混在しする多民族国家である。それをひとつの方向に束ねてきたのが「民主主義」の理念である。この理念を踏みにじり、分断化を招いたドナルド・トランプ前大統領の所業は看過できない。

Trump's coup against democracy ©2021 Naoufal Lahlali

折に触れて政治風刺画家たちはトランプの動向を題材にしてきた。中には行き過ぎとも思われる表現もあったが、トランプが不快感を表したかは不明である。為政者にとっては自分の印象ををいかに拡散するかが重要なので「悪評もまた評なり」と考えたのかもしれない。不思議なことに「悪評」は存在感を強調することもある。そしてその「悪評」が風刺画に反映する。例えば日本の政治家で、政治風刺漫画の対象になったダントツは安倍晋三元首相である。菅義偉首相は国内では評判が悪いが、政治風刺漫画の世界の舞台では未だに無名だ。それでは就任したばかりだが、ジョー・バイデン新大統領はどうだろうか。どちらかと言えば、穏健な調整型の地味な政治家なので、政治風刺漫画家は困惑しているかもしれない。やはり存在感はトランプより落ちるが、今後の成り行きを見守りたい。むしろカマラ・ハリス副大統領のほうが「絵」になりそうな気がする。いずれにせよ主権者の心を捉える、新しい行動を起せるかが政治風刺漫画の主役になれるかの鍵ではある。

The Library of Congress  Classroom Materials at the Library of Congress Political Cartoons and Public Debates

0 件のコメント: