下掲のジャケット写真はアールズ・オブ・レスター(The Earls of Leiceste)のファーストアルバムだ。フラット&スクラッグス、そして彼らのバンドだったフォギー・マウンテン・ボーイズの音楽を現代の聴衆に伝えるために、2013年にジェリー・ダグラスが結成したアメリカのトリビュートグループだ。ビル・モンローがドブロを嫌っていたのは有名な話だが、フォギーマウンテン・ボーイズがジョッシュ・グレイヴスをフィーチャーしていたことにダグラスは事のほか惹かれているようだ。従って彼らはカウボーイハットに紐ネクタイという衣裳にしたようだ。普段は無帽のティム・オブライエンがカウボーイハット姿に照れているようにも見える。カウボーイハットを愛用していたのは、ビル・モンロー、フラット&スクラッグス、リリー・ブラザース、ジミー・マーチンなど、いわばブルーグラス音楽の第一世代だった。1950年代末に台頭したグリーンブライヤー・ボーイズやカントリー・ジェントルメンはヒルビリーではなく都会出身で、初めから無帽であった。
60年代初頭のケンタッキー・コロネルズは西海岸出身だったし、70年代初頭に登場したニュー・グラス・リヴァイバルも無帽であった。ではどうして彼らは第一世代の衣裳を継承しなったのだろうか。それはブルーグラス音楽の新しいホープたちが、ラングラーのカウボー・カット・ジーンズを着て牛に投げ縄をかけたり、バック・ブロンコに乗ったりするような、農場に住む人々の姿を描くことに、それほど興味がなかったからかもしれない。確かに今でも古い歌が繰り返し歌われているが、それはカウボーイハットが普及したアメリカの西部開拓時代を反映したものでないからである。余談ながらアメリカの政治家の多くが、カウボーイハットを使って、ある種のファンタジーなアメリカへの嗜好を表明してきた。第26代大統領のテディ・ルーズベルトがカウボーイハットを被っていない姿を想像するのは難しい。彼は「19世紀の民主主義は、新世界の表面の最良の部分を白人のために維持してきたという事実以上に、その存在を完全に証明する必要はない」と1894年に書いている。ドナルド・トランプ前大統領など、歴代の大統領がカウボーイハット姿の写真を残している点は特筆しておくべきだろう。なお私が住む京都でもステットソンのカウボーイハットを扱っている帽子店がある。欲しいと思ったこともあるが、購入には躊躇いがある。つばが広い帽子は、背が低い日本人には似合う筈がないと思うからだ。
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