2021年1月13日

連邦議会議事堂乱入とビッグテック

Big Tech

Angela Merkel

フランス通信社(AFP)電子版によると、ドイツのシュテフェン・ザイベルト報道官は「言論の自由は、根本的に重要な基本的人権だ。そしてこの基本的人権が制限され得るのは、法律を通じて、また立法者が定めた枠組みの中でであり、ソーシャルメディア各社の経営陣の決定によってではない」と言明。この観点からソーシャルメディア Twitter がドナルド・トランプ大統領のアカウントを永久停止したことについて、アンゲラ・メルケル首相は「問題だ」と苦言を呈したという。しかし言論の自由の自由は不自由でもある。もし政治家がソーシャルメディアで例えば「ホロコーストはなかった」「ヒットラーは素晴らしい」などと発言、同調者が激増すれば、轟々たる非難を浴びるだろう。そしてそれを放置しなんらの処置をしなければ、そのソーシャルメディアは壊滅的な打撃を受けることになるだろう。メルケル首相の主張は確かに正論かもしれないが、現実と乖離していないだろうか。トランプ大統領は Twitter を根拠なき陰謀論の拡声装置として利用してきた。不適切なツイートを繰り返せばアカウントを停止すると Twitter は警告したが、高を括ったのだろう、それを無視した。東部時間1月8日午前10時44分、以下のように次期大統領の就任式を欠席するとツイートした。このツイートは後述のように、米国の選挙の合法性を否定し、暴力行為を後押しすると解釈され、そしてこの直後、トランプ大統領の姿が消えた。

Screen Shot
大統領就任式は欠席とツイート

東部時間1月6日に起きたトランプ支持者集団による連邦議会議事堂乱入事件を受け、発言を容認してきた Twitter に対する批判が高まっていた。そして「アカウント @realDonaldTrump による最近のツイートおよびそれらの文脈や背景を精査した結果、さらなる暴力を煽ることになるおそれが高いと判断されたため、同アカウントを永久停止した」と判断したのである。事態は緊急を要していたし、批判が起こり得ることを覚悟の、苦渋の選択だったと思われる。朝日新聞電子版によると、トランプ大統領は12日午前、私の予想に反し記者会見に応じ「歴史上最も大がかりな魔女狩りの続きだ」と強く反発した。「この弾劾はすさまじい怒りを引き起こし我が国にとってすさまじい危険をもたらすだろう」と語ったという。強気の発言だが、選挙結果を覆す手段は絶たれている。またロイター通信は、テクノロジー企業大手が「大変な過ち」を犯し、米国を二極化させているとトランプ大統領が非難したという。Twitter から永久追放され、さらに支持者が集まった新興保守系ソーシャルメディア Parler を Amazon、Google、Apple が潰しにかかったからだろう。

Cartoon
Trump banned from Twitter ©2021 Vasco Gargalo

トランプ政権は Amazon や Google、Apple などのビッグテックに対して、独占禁止法調査と訴訟を開始していた。ソーシャルメディアに対する執行命令に署名したが、連邦通信委員会、連邦取引委員会、行政府によってことごとく無視されてしまった。この点に関しての恨みつらみがあるようだ。トランプ大統領は彼を非難したプラットフォームに対抗するために、独自のソーシャルメディアネットワークを立ち上げることに興味を持っていることを示唆しているようだ。ネットワークがオフラインにならないようにするためには、インターネットスタックのすべての部分を所有しなければならない。それには膨大な額の資金、時間、リソースが必要になるだろう。ケーブル会社、独自のウェブサーバー、独自の DNS プロバイダーを所有しなければならないからだ。ところで Twitter は公的機関ではなく、一民間企業に過ぎない。そのサービス利用規約には「当社は Twitter ユーザー契約に違反しているコンテンツ(著作権もしくは商標の侵害その他の知的財産の不正利用、なりすまし、不法行為または嫌がらせ等)を削除する権利を留保します」とあり、さらに「選挙やその他の市民活動の操作や妨害を目的として Twitter のサービスを利用することを禁じます」という付帯事項がある。

Twitter  ソーシャルメディア Twitter サービス利用規約の表示とダウンロード(PDFファイル 450KB)

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