2021年1月21日

ソーシャルメディアに躓いたドナルド・トランプ

Donald Trump

ドナルド・トランプ前大統領が東部時間1月20日、ホワイトハウスを去った。退任前日の19日、お別れのビデオメッセージを公開し「我々は想像されていた以上のことを成し遂げた」と述べた。かねてからトランプは不法移民の入国を防ぐため、米南部のメキシコ国境に巨大な壁を築き、その費用をメキシコ政府に負担させるとまで主張していた。全米からこの発言が強い非難を浴びたにも関わらず、共和党支持者の間での支持率は上昇し、大統領選の共和党候補になれたのである。

Qアノン陰謀論信奉者

そしてさらに2016年の大統領選で泡沫候補と囁かれながら、予想外の勝利をもぎ取ることができたのは、民主党の地盤だったラストベルト(錆びた地帯)に注目したからだった。グローバル化により工場が海外移転して苦境が続く中、製造業復活や雇用回復を訴え、白人労働者層などの票を集めることができた。つまり「米国第一」というスローガンと、潜在する白人至上主義が融合して、支持が拡大したと言える。その後さらに支援者を増やすことができたのは、自らの主張をばら撒くためにソーシャルメディアの Twitter や Facebook などを「拡声器」として使い始めたからだった。ニューヨークタイムズ紙や CNN テレビが自分に不利な報道をすると。複数のソーシャルメディアで「フェイク」だと切り捨てた。これが拡散して信奉者を獲得していったようだ。そして2018年になると、トランプ再選キャンペーンの集会にQアノン信奉者が現れ始めた。Qアノンとは米国の極右が提唱している陰謀論で(仮定の)秘密結社とトランプは戦っているとしている。2020年の大統領選でジョー・バイデンに敗れると、トランプは「不正選挙」「盗まれた選挙」と根拠のない陰謀論をソーシャルメディアで展開拡散、選挙結果を覆そうとする試みを始めた。これはQアノン陰謀論信奉者とシンクロしたものだったのだが Twitter はアカウントを剥奪、Facebook も凍結した。この措置にトランプは激怒、彼に煽られた信奉者たちが連邦議会議事堂乱入したのである。ソーシャルメディアに躓いたため「拡声器」を失い、求心力が急速に衰えてしまった今、4年後に再び大統領の座を狙うかは不透明である。

PDF  QAnon: From Fringe Conspiracy to Mainstream Politics | Simon Wiesenthal Center (4.27MB)

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