2013年1月25日

教祖スティーブ・ジョブスなきアップルに翳り

Steve Jobs by Giuseppe Veneziano

今月18日付のロイター通信日本語版が「第4世代iPad販売伸び悩み、シャープがパネル生産ほぼ停止=関係筋」というリポートを掲げた。小型のiPadミニに需要が移り、9.7型画面の第4世代モデルは販売が伸び悩んでいるという。シャープが三重県の亀山第2工場で第4世代iPad用に、酸化物半導体IGZO(イグゾー)の技術を採用した液晶パネルの製造を始めた。しかし昨年末からiPad向けのラインの稼働を徐々に落としており、今年に入ってほとんど生産していないという。アップルは手元の在庫パネルでiPadを生産しており、パネル発注を抑えているというのだ。同日、ニューズウィーク誌日本語版も「ついにサムスンを切ったアップルの勝算は?」という記事を載せている。ご存知の通りアップルとサムスンは世界各国の裁判所でお互いを相手取った特許権侵害訴訟合戦をしている。ところがアップルの携帯端末向けOSであるiOSを搭載したiPhoneやiPadはサムスンの半導体で動いている。そのアップルはサムスンからの半導体調達を打ち切るようだ。これは一見サムスンにとって痛手に見えるが、実は逆だと記事は解説している。

サムスンはアップル向けに多くのプロセッサを生産しているため、自社の製品が必要とする半導体の30%程度しか社内で賄えていないという。だからアップルと手を切れば自社製品向けの半導体生産余力が大幅に高まるという利点があるというのだ。一方アップルは半導体の新たな調達先を見つける必要があるが、現在のサムスンほど大量の半導体を供給できるメーカーはほとんどないという。複数のメーカーから半導体を買うことになれば、半導体の設計、品質、価格が一様でなくなることになり、新たなコストが発生する。それによってiPhoneやiPadの均質性が損なわれる可能性がある。故スティーブ・ジョブスはアップルを閉鎖型企業に仕立て上げた。互換機を許さない強力なリーダーシップによって、優れたデザインの、そして素晴らしいヒット商品を生み出してきた。サムスンに背を向けるという厳しい選択をした背景にジョブズの影がはっきり見て取れると記事は結んでいる。日本国内に限れば昨年12月、グーグルのタブレットNexus7のシェアがiPadを上回ったという報道がある。教祖ジョブスなきアップルに翳りが見えてきたようだ。

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