2012年8月9日

願わくば阿弥陀如来がいる十界の最上位に昇りたい


熊野観心十界曼荼羅図絵(部分・西福寺蔵)
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幽霊子育飴(松原通)
雲ひとつない炎天下、六道詣りに出かけた。すでに三日目なので、目には見えないが、この世は冥府から迎えられた精霊たちであふれてるはずである。東大路から松原通を西に歩いて六道珍皇寺に寄り、迎え鐘を撞く。酷暑ゆえか思ったほど参詣客は多くない。再び松原通りに戻り、怖いもの見たさで「檀林皇后九相図絵」を拝観するため西福寺に向かう。山門をくぐり、手前の座敷に上がる。公開されているのは同図の他「熊野那智曼荼羅図絵」など五幅である。上図はそのうちのひとつ「熊野観心十界曼荼羅図絵」である。この絵は熊野比丘尼たちが戦国時代から江戸時代にかけて、熊野三山の修営費用を勧進するため、全国に持ち歩いて絵解きするため使った地獄極楽図である。30余点が現存しているそうで、六道珍皇寺にもあったが、撮影禁止なのでここで撮らせていただいた。

左上にいるのは閻魔大王で、あの世の裁判官だ。傍らに罪の重さを量る業秤と罪を映し出す浄玻璃鏡がある。真ん中は賽の河原で、幼くして亡くなった子どもが苦しみを受ける地獄。ここで救ってくれるのがお地蔵さんだ。ひとつひとつ解説するとキリがないが、要するに六道絵の系譜を踏む絵で、熊野参詣曼荼羅と双璧をなす代表的な絵画だ。30余点が現存しているという。地獄極楽図ともいわれるように、平安時代・鎌倉時代に盛んに描かれた地獄図や極楽図、あるいは六道絵の系譜を踏む絵であり、天上・人間・修羅・餓鬼・畜生・地獄の六道に、仏・菩薩・声聞・縁覚の四聖界を併せて十界が描かれている。観心とは文字通り心を観ること。心の持ち方次第で何処に堕ちるか分かりませんよ、という怖い絵である。願わくば、最高の悟りを得た世界、阿弥陀如来がいる十界の最上位に昇りたいものだ。西福寺を出た向かい側に、幽霊が子育てに使ったという飴を売ってる店があった。この辺りはあの世とこの世の境、六道の辻なのである。蛇足ながら昔はこの通りが五条通で、牛若丸と弁慶が出会ったという五条大橋は今の松原橋のことである。

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