Legendary American Blues singer songwriter Robert Johnson (1911-1938), left, with fellow musician Johnny Shines (1915-1992), ca 1935. This image is one of only three known photographs of Johnson, has been extensively retouched. (Courtesy of the Robert Johnson Estate/Hulton Archive)
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伝説のミシシッピ・デルタ・ブルーズの王者、ロバート・ジョンソン(1911-1938)は、現在でもエリック・クラプトンやボブ・ディランなど、世界中で多くのミュージッシャンに多大な影響を与え続けている。そのジョンソンの写真は長い間、2枚しかないと信じられていた。ところが2005年、新たに「3番目の写真」が発見されたのである。写真右側に一緒に写っているのは、音楽仲間のジョニー・シャインズ(1915-1992)で、おそらく1935年ごろ撮影と想像される。フランク・ディギアコモ氏のレポート
「ロバート・ジョンソン検索する」に詳しいいきさつが書かれている。ギタリストのジーク・シャインはオークションサイトeBayで「古いスナップショット・ブルーズ・ギター・BBキング?」と説明がついた写真を見つけて落札したという。写真はBBキングに見えなくもなかったが、シャインはギターの形、異常に長い指に注目、ロバート・ジョンソンだった。
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2005年に発見された修復前の写真 |
3x4インチの大きさの写真は左のように、経年変化による汚れと破損が激しい。ネット上に散在する写真だが、いずれも複写によるせいか、若干のボケが見られる。ゲッティ・イメージ社の画像を見るとかなりシャープだが、さらにレタッチしたのが上掲の写真である。ここでちょっと考えさせられるのが、このような古写真のオリジナルとは何だろうということである。例えばFSA(米国農業安定局)プロジェクトが撮影、アメリカ議会図書館が所蔵している大恐慌時代の写真の多くはネガからプリントしたものだ。つまり撮影当時のプリントではない。だからオリジナルではないとは言えないだろう。それではこのロバート・ジョンソンの修復写真はオリジナルであろうか? 写真は時間が経過するうちに汚れたり、酷い場合は破れたりする。そしてそのような写真、つまり複写ではないものを一般にオリジナルと呼んでいる。とすれば修復したそれはオリジナルではないということになる。しかしその修復写真のほうが撮影当時のものに近いと言えなくもない。これは古い仏像の修復に譬えると分かりやすいかもしれない。金箔が剥げ落ちた仏像の修復の際、すべて金箔を貼りかえないのが普通のようだが、タイの仏教寺院などでは違うようだ。人々は金箔を寄進するのが慣わしで、仏像は全身金ピカである。つまり建立時の姿を維持しようとしているのであって、中途半端な修復は完全な復元とは言えないのではないだろうか。現在、ロバート・ジョンソンの3番目の写真は、両方が混在したままネットに流れている。しかしレタッチした写真が生き残り、破損したそれはやがて淘汰される可能性が大きい。デジタル時代になり画像処理技術が発達、古写真の修復が容易になったが、新たな問題提起を包含しいるようだ。
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