2012年8月21日

原発を動かさなくてもこの夏を乗り切れた


今夏の需給見通し関西電力HPより) 画像をクリックすると拡大表示されます

酷暑の峠が去ったようである。上図は関西電力が5月19日に公表した「今夏の需給見通しと節電」に添付されたものである。これによると節電を織り込んでも7月後半から8月末までは15%の電力が足りないと主張している。当時、大阪府市の特別顧問だった飯田哲也氏は「これだと停電じゃないですか、足りないじゃないですか。停電おこさないようにと言いながら結局停電じゃないですか。どうするんですか?」とエネルギー戦略会議の8回目の会合で発言したという。そして橋下徹大阪市長が5月31日に「この夏をどうしても乗り切る必要があるなら、再稼働を容認する」と述べ、福井県の大飯原発を再稼働しなくても電力は足りる、という趣旨の議論を覆してしまったことは記憶に新しい。さて今夏の電力需給だが、今朝の朝日新聞によると、関西電力管内では「融通で十分」だったという。つまり「家庭や企業の節電が成果をあげていると指摘している。いつもより暑い夏になったが、関西や九州などで準備した計画停電は一度もなく、全国の電力には余裕がある。このまま節電を続ければ、原発を動かさなくても夏を乗り切れた可能性がある」と指摘している。

関西電力管内では原発なしの最大電力は2542万KWで、大飯原発再稼働によって2988万KWになった。原発が再稼働しなかった場合の予想より需要が上回った日が12日間続き、関西電力の八木誠社長は「大飯の再稼働がなければ厳しい状況だった」と振り返ったという。これに対し大阪府市エネルギー戦略会議は、7月27日や、この夏最大の電力が使われた8月3日でも、西日本全体で900万KWの電力が余っていたと指摘しているという。要するに他電力会社から融通してもらえば、再稼働しなくとも電力は足りたということである。原発推進者から言わせれば、それは結果論であって、電力は逼迫していてこの夏を乗り切れるか分からなかった、ということかもしれない。しかし大事なことは、福島原発事故から1年半の時間が経過しているのにも関わらず、原発を動かせないことを想定して、他のエネルギーを新たに開発して利用するといった対策を打たなかったことである。ひたすら再稼働ありきで突っ走ってきた、電力会社および政府に強い不信感を持たざるを得ない。その不信感は、このような電力業界から出るデータにも向いてしまうというのが、偽りのない気持ちである。この気持ちは、電力会社にとって顧客という最大の財産を失わせるものだし、政権を執る民主党にとっては致命的な、党崩壊への引き金になりつつあることを肝に銘じて欲しい。

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