奸計を弄するイーロン・マスクとドナルド・トランプ
読売新聞3月25日付けオンライン版の「マスク氏買収のX『アルゴリズム変更』で世論誘導か…『親トランプ』投稿を優先拡散」と題した記事が目に止まった。
世界各国・地域の選挙で SNS は有権者に訴えかける手段として主流になりつつある。偽情報や中傷の拡散、世論の分断といった負の側面も無視できなくなってきた。SNS への向き合い方を模索する海外事情を報告する。「激戦州を民主党の地盤に変えるため、大量の不法移民を流入させている」。昨年11月の米大統領選の投開票日が近づくにつれ、共和党支持者が X(旧ツイッター)で民主党の移民政策を非難する投稿が相次ぐようになった。X を所有する実業家イーロン・マスク氏も同様の主張を繰り返し「根拠のない陰謀論だ」(米CNN)と問題視された。マスク氏に限らず、大統領選ではトランプ大統領陣営の X への発信が圧倒的に目立った。虚実ない交ぜの内容も含まれる。2023年7月~24年10月下旬、大統領選で共和党支持者が X に発信した投稿の閲覧数は75億回に上り、33億回だった民主党支持者の倍以上となった。米紙ワシントン・ポストが昨年10月末に公表した調査結果だ。同紙はマスクが選挙期間中、「アルゴリズムの変更」によってトランプ氏のメッセージが拡散しやすいようにしたと指摘した。若年票が流れるなど世論誘導につながった可能性がある。大統領選で X の投稿の傾向を調査したオーストラリア・モナッシュ大のマーク・アンドレイエビッチ教授は、アルゴリズムの変更について「必要な情報が開示されず不透明だ」とした上で「右派の投稿が優遇される傾向が明確に見られた」と指摘した。バイデン前政権時代に SNS 規制を巡る議論が活発化したが、包括的な法整備には至らなかった。米ブルッキングス研究所のシニアフェロー、ダレル・ウェストは「米国内の SNS は連邦政府の規制がない状況だ」と説明する。
TRUMP WAS RIGHT ABOUT EVERYTHING!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) January 3, 2025
自ら「トランプはあらゆる面で正しかった」とツイート
SNS に無防備な中で行われた大統領選では、米国と敵対する外国勢力の関与が疑われるケースも見られた。昨年11月4日の投票前日、米 CBS のニュース番組を装い、「FBI(連邦捜査局)がテロ攻撃の可能性を発表した。投票所に行かないように」と警告する偽映像が SNS で拡散し、混乱を招いた。映像はロシア関連グループの作成とみられ、即日削除された。トランプ氏は1月の就任演説で「政府による全ての検閲を即時に停止する大統領令に署名し、自由な表現を米国に取り戻す」と宣言した。後に署名された大統領令は「SNS 上の言論への政府介入を禁止する」と明記した。SNS 規制の流れは途絶える形となり、SNS やフェイクニュースに関する民間の自主規制も大幅に緩和される恐れが出てきた。フェイスブックを運営する米メタは1月、虚偽の内容を含む投稿の削除を目的とした「ファクトチェック」機能を米国で廃止すると発表した。メタは16年の大統領選で偽情報が横行したことを受け、第三者機関に真偽判定を委託していたが、トランプ氏が「検閲だ」と批判的だったことが廃止決定の要因とみられている。米ジョージ・ワシントン大学のスティーブン・リビングストン教授は「規制の見通しが立たない中 X とトランプ氏自身が運営する SNS『トゥルース・ソーシャル』は事実上プロパガンダ機関と化している。民主主義の規範を破壊する危険性がある」と警告した。トランプ氏が1月3日、 X に「トランプはあらゆる面で正しかった」と投稿すると、マスク氏は「100点」と返信した。3月11日にはトランプ氏がトゥルース・ソーシャルで「我が国を助けるために全力で素晴らしい仕事をしている」とマスク氏をたたえた。やり取りには蜜月ぶりだけでなく、異論や検証を排除する危うさも帯びていた。
文中にあるようにトランプ自身が運営する SNS『トゥルース・ソーシャル』は親トランプの書き込みで溢れていることは当然だろう。ところが X(旧ツイッター)やフェイスブックは政治的に公正であるべきという意見を散見するが、マーク・ザッカ―バークはファクトチェックを放棄したし、イーロン・マスクはツイッターを乗っ取った瞬間に凍結されていたドナルド・トランプのアカウントを復活させたという過去がある。昨今のソーシャルメディアはナチスのプロパガンダを彷彿とさせる極めて危険な言論プラットフォームになりつつある。下記リンク先はイギリスのオンライン新聞インデペンデントの記事「イーロン・マスクがXのアルゴリズムに手を加えてトランプをプロモートしているとの調査結果が発表された」である。

0 件のコメント:
コメントを投稿