2024年8月3日

メイベル・カーターのギブソン L-5 アーチトップギター

Carter Family
The Carter Family (L-R) Maybelle, A.P. and Sara Carter. Undated.

カーターファミリーが1927年7月にテネシー州ブリストルで録音したとき、メイベルは下の写真のような安価なステラのフラットトップギターを弾いていた。初期のカントリーミュージシャンにとっては十分な楽器であったが、彼女にはもっと大きく、音がが大きく、権威のあるものが相応しかったようだ。翌2028年、ビクターのラルフ・ピアから「もっといい機材で新しいレコーディングをしよう」とニュージャージー州カムデンでの2回目のセッションに誘われた。レコードが売れ始めていたので、メイベルはギブソンの L-5 を手に入れた。L-5 はギブソンのロイド・ロアーが1923年に最高級ギターとして発表した、表面板が湾曲したアーチトップモデルだった。ロアーは製品ラインの多くを再設計した有名なエンジニアだった。中央の丸いサウンドホールの代わりに f 字ホールが開けられている。メイベルが購入したのは1928年製で、ミシガン州カラマズーにあった旧工場で作られたギターだった。価格は275ドルで、1928年の時点では、ものすごい大金だった。

Carter Family ca1927
Maybelle Carter was playing a cheap Stella flat-top guitar. ca. 1927

メイベルはギターをカントリーバンドのソロ楽器として、ヴォーカルのリフレインの間にメロディを奏でたのである。1929年に "Wildwood Flower" を録音したが、彼女の奏法で最も有名なのは、親指でリードするスタイルで「カータースクラッチ」と呼ばれている。右手にサムピックをつけ、それを使ってギターの低音弦でベース音や素晴らしいメロディーを奏で、一方で人差し指に金属製のフィンガーピックをつけ、高音弦でドライブ感のある素晴らしいコードをかき鳴らしたのである。バンジョーをクローハンマー・スタイルで弾いていたから、親指を使うというイメージを持っていたのかもしれない。彼女はフラットピックを使って、高音弦をより多く鳴らすことができた。彼女は "Coal Miner's Blues"のようなブルースの曲を好んで弾いていたが、"You Are My Flower" のような曲でもこのアプローチを使っていた。ただフィンガーピッキングと呼ばれるものはあまりやらなかったようだ。スライドギターを弾いてたことも特筆すべきだろう。なお彼女の L-5 はテネシー州ナッシュビルのカントリーミュージック殿堂博物館に展示されている。稀代の天才であった。

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