サウスダコダ州ブラックヒルズの岩山、ラシュモア山に巨大な4人の大統領の顔が刻まれている。左からジョージ・ワシントン、トーマス・ジェファーソン、セオドア・ルーズベルト、エイブラハム・リンカーンである。ジョージ・ワシントンの顔、顎から頭までの高さは18メートル30センチ、ジェファーソンの鼻の長さは6メートル、ルーズベルトの口髭の幅は6メートルもあり、おどろくほど大きなものだ。この巨大な彫刻は、アメリカ人彫刻家ガットスン・ボーグラム(1867–1941)が400人の作業員とともに彫ったものである。ラシュモア山の岩盤は非常に硬質なので、ダイナマイトで砕きながら作業を進め、1927年から1941年にかけて、14年間の歳月をかけて彫られた。広く知られるようになったラシュモア山は、年間約300万人以上の観光客が訪れるようになったが、深い歴史と、どんなに読書家の歴史ファンでも驚くような、あまり知られていない七不思議がある。
- 当初の計画では別の人物像が描かれていた
- カルヴィン・クーリッジ大統領が政府から資金を要求される
- セオドア・ルーズベルトは眼鏡をかけていない
- リンカーンの頭の後ろに秘密の部屋がある
- 第5の顔を追加する試みもなされてきた
- プレジデント・トレイルからが最高の眺望
- 抗議デモの会場となったこともある
注目すべきは4番目の隠された部屋である。あまり知られていないが、重要な要素のひとつが未完成のまま残され、リンカーンの力強い眉の後ろに隠されたままになっているのである。大統領の真後ろを流れる小さな渓谷の花崗岩の壁には、エジプトのファラオの墓の入り口のような高さ18フィートの扉口が刻まれている。敷居をまたぐと、長さ約75フィート、高さ35フィートの天井の空っぽの部屋が広がっている。壁には発破用のダイナマイトを入れるためにジャッキで打たれた穴があり、蜂の巣のような効果をもたらしている。おそらくボーグラム自身が描いたと思われる赤い数字が、岩の撤去の指示を示しているようだ。
Gutzon Borglum (1867–1941) |
ボーグラムは、この未完成の部屋を、要するに、現在の世代に向けてではなく、未来の文明、さらには何千年も先の惑星間訪問者に向けて、自分の彫刻の意味を説明する芸術家のステートメントにするつもりだった。彫刻家は「住所も署名もない手紙を世界中の郵便局に投函するのと同じように、彫られた山を身分証明書なしで歴史に送り出すのと同じことだ」と書いている。ラシュモア山に彫られた4つの顔は、今日では小学生でも誰であるかすぐにわかるが、いつかストーンヘンジ(環状列石)のように神秘的な存在になるかもしれないとボーグラムは考えていた。彼は「後を継ぐ文明は、その前身を忘れてしまう」と嘆いた。「文明とはグール(屍食鬼)である」と。吹き抜けの天井には北極星を指し示す十字架が取り付けられ、壁には "西の世界を発見し占領した人類の冒険" を描いたフリーズ(帯状の装飾)が飾られる予定だった。1938年7月、作業員たちは大統領の顔に隠された小さな峡谷の北壁の岩を切り開き「記録の殿堂」の建設し始めた。しかし建設が始まって1年が経った頃、記念碑の建設費をほぼ全額負担していた連邦政府が締め付けを強め、ボーグラムに「記録の殿堂」の工事を中止し、大統領の横顔の完成に全力を注ぐよう命じたのである。1941年3月に73歳の彫刻家が亡くなってから7ヵ月後、ボーグラムの息子リンカーンが中心となって、4人の大統領の彫刻を完成させた。ラシュモア山国立記念碑は完成したとみなされたが、ボーグラムの最終的な計画と「記録の殿堂」は未完成のままだった。1998年8月9日、16枚の磁器エナメルパネルが追加されたとき、彼の家族4世代が未完成の部屋に集まった。パネルには独立宣言などの文書の言葉、彫刻家と彼の大統領候補の経歴、記念館建設とアメリカの歴史が刻まれていた。それらはチーク材の箱とチタン製の保管庫に入れられ、地中に下ろされた。そして1930年にワシントンの彫刻を奉納した際にボーグラムが述べた言葉が刻まれた1,200ポンドの黒御影石のキャップストーンで覆われた。ボーグラムの娘メアリー・エリスは「父が見たラシュモア山の創造はこれで終わりです」と語った。安全および防犯上の懸念から、観光客が山に登って「記録の殿堂」を見ることは禁止されている。アメリカ先住民の神聖な土地に、白人至上主義の秘密結社 KKK(クー・クラックス・クラン)とつながりがあったボーグラムによって彫刻されたラシュモア山国立記念碑は、完成する前から論争を巻き起こしていた。先住民による闘争の歴史を下記リンク先のナショナルジオグラフィック誌が深堀りしている。
The heartbreaking, controversial history of Mount Rushmore National Monument, 2020
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