江戸時代に流行った覗き眼鏡 |
ロウセルのグラフォスコープ |
江戸時代に流行った覗き眼鏡は、浮世絵師が極端な遠近法で描いた絵を、レンズを通して覗く装置で、立体的に像が見えるというものだ。いわばカラクリの一種だが、実際にはそれほどの立体感はなく、いわば覗くという行為がその感覚を助長したのだろう。この装置が発展したのがグラフォスコープである。上掲の写真はラブ・オーシュリ氏の膨大なコレクションの1枚で、芸妓がグラフォスコープを使って写真を拡大、覗いているいるシーンである。写真共有サイト Flickr にアップロードされているが、非営利のブログなどへの転載可という但し書きがついてるので、ここに掲載することにした。オーシュリ氏は1970年代初頭、ベトナム戦争で来日、沖縄に滞在してそのまま住みついた人である。明治時代、貴重なステレオ写真を残した写真師、江南信國(1859–1929)の作品コレクターとして名高い。グラフォスコープは英国のチャールズ・ジョン・ロウセル(1802-1882)が1864年に特許をとった、折りたたみ式の拡大鏡である。特許取得後も改良が加えられ、これは長さ約58センチ。クルミ材を使い、透かし彫りの装飾があるのが特長である。レンズは直径15センチで、絵葉書などを拡大して覗く。その下にステレオ写真用の眼鏡がついている。約10センチ四方2枚一対の写真をついたてに置き、立体写真を楽しんだ。
江南信國「松の下の芸妓」(京都・嵐山で撮影したステレオ写真) |
グラフォスコープは幕末から日本に輸入され、明治に入ってステレオ写真が一世風靡した。写真そのものが小型で比較的安価だったこと、そして何より国内および異国の風景を鑑賞出来たことが爆発的ブームになった理由であったと想像される。この型番はベストセラーになったようで、海外のオークションサイトに出品されているのをよく見かける。私は京都市中京区河原町通の三条を上がった古書店「キクオ書店」の店頭ショーウィンドウに飾られているのを拝見したことがある。アンティークカメラの図鑑などにも掲載されているが、このグラフォスコープを実際に使っている上掲、芸妓の写真は、歴史的にも貴重な資料といえるだろう。
Stereo-graphoscope | Graphic Arts Collections, Firestone Libraly, Princeton University
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