2024年6月15日

片腕のフィドル奏者マーシャル・クレイボーン

One-armed fiddler Marshall Claiborne of Hartsville, Tennessee, ca. 1926

マーシャル・クレイボーンは、1926年にテネシー州ナッシュヴィルとケンタッキー州ルイヴィルで開催されたオールドタイム・フィドラーズ・コンテストで、弓を膝の間に挟み、左腕でそれに逆らってフィドルを動かすという珍しい奏法を用い優勝、評判になった。この片腕のフィドル奏者マーシャル・クレイボーンの肖像写真は、ノースカロライナ大学チャペルヒル校が所蔵する「ガスリー・T・ミード・コレクション」(1817-1991)からの転載である。彼の生年月日などは不明だが、写真は1926年ごろテネシー州ハーツヴィルで撮影とある。悪魔の箱と呼ばれたおーりどタイム音楽が好きで、自らもフィドルを演奏した自動車王ヘンリー・フォードが、デトロイトでフィドル弾きの大会を開催したという説があるが、これはいささか怪しい。

Henry Ford Playing Fiddle
Henry Ford Playing Fiddle with His Old-time Dance Orchestra, 1933

デトロイトは確かにフォード・オーターの本拠地だが、コンテストはあくまでナッシュヴィルとルイヴィルであり、フォード・モーターがスポンサーの「フォードコンテスト」と呼ばれたからではないだろうか。ナッシュヴィルとルイヴィルの後、クレイボーンはデトロイトに向かったようだが、フィドル好きのヘンリー・フォードのために演奏したものの、かの地でコンテストが開催された形跡はないようだ。フォードはクレボーンにあらゆる礼儀を尽くしただけでなく、彼の不在中に必要なあらゆる援助を彼の家族に提供するよう、フォード・モーター代理店のヒーローになるように取り計らった。ハンディを持ちながら健常者に負けない演奏をした、いわばその離れ技は障碍者に大いなる勇気を与えたと想像する。下記リンク先の画像はナッシュヴィルの日刊紙「テネシアン」1926年2月26日付紙面の切り抜きクリップである。

news  Article clipped from the Tennessean, Nashville, Tennessee, Friday, February 26, 1926

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