2024年6月1日

タージ・マハル廟を最初に撮影したスコットランド人医師ジョン・マレー

Taj Mahal
Taj Mahal by Dr. John Murray, Agra, India, c. 1858. Courtesy of the Art Foundation of Victoria.
Dr. John Murray

1982年12月、オーストラリアのビクトリア芸術財団は、ジョン・マレー(1809-1898)撮影の、1850年代後半のインドの建築物を題材にした、大型のカロタイプを含む19世紀の写真群を購入した。写真が誕生して最初の10年間、1840年代、写真という媒体がまだ多かれ少なかれ頑固で予測不可能だった時代(そのため人里離れた風景を撮影するのはまだ現実的ではなかった)、紙のネガポジ方式、つまりカロタイプを使用する写真家は建築物の被写体に非常に惹かれたようで、銀メッキ銅板上のユニークな写真、つまりダゲレオタイプを好む写真家は肖像画に目を向けることが多かったようだ。写真はインド共和国アグラにあるタージ・マハル廟で、ジョン・マレーが1857年ごろ撮影したものである。現存するタージ・マハル廟の写真としては最初に撮影されたものだという。ジョン・マレーは、1832年に大学を卒業した後、東インド会社の軍の医療部門に入隊したスコットランド人医師である。彼はコレラの専門家となり、イギリス軍の健康状態を改善するために多くの作戦に従事した。彼が写真撮影を始めたのは、1849年にアグラの医学校の医療担当官に任命されてからしばらく経ってからと思われる。1800年代半ば、写真を引き延ばしする簡単な方法は存在しなかった時代、16×20インチという非常に大きなワックスペーパーのネガを使用した。このようなスケールで作業しようとした最初の人のひとりで、自分の写真を絵画として壁に掛けるつもりだったようだ。このスケールを好んだのには別の理由がある。

Taj Mahal from another angle
Taj Mahal from another angle along the Yamuna river, Agra, India.

ネガの領域が広いため、記録された情報の鮮明さが大幅に向上するからである。紙の表面の繊維質の質感によって生じるわずかなぼやけが相殺されるという点であった。ジョン・マレーはタージ・マハル廟があるアグラの医学専門学校のオフィサーに1849年に任命され、壁に掛けるために撮影したようだ。南側から撮った正面の写真だが、ヤムナー川を手前に浮かぶ、東側からの写真も残っている。タージ・マハル廟は、両側の赤いモスクのひとつを越えて、優美に聳え立っているが、モスクが前景の大部分を占めている。パノラマでは、いわば理想的な眺めが与えられ、3つの建造物が調和して配置されている。斜めから見ると、最初は平面だと思っていた風景の不規則性と輪郭がわかり、立体的な彫刻の複雑さが理解できる。なお下記リンク先のビクトリア芸術財団のウェブサイトに、ジョン・マレーが撮影したタージ・マハル廟の写真がアーカイブされている。

museum  John Murray(1809-1898)| Great panorama of Taj Mahal | National Gallery of Victoria

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