2023年6月20日

劇的な国際的シンボルとなった「プラハの春」を撮影したヨゼフ・コウデルカ

Warsaw Pact troops
Invasion by Warsaw Pact troops in front of the radio headquarters, Prague, Czechoslovakia, 1968
Josef Koudelka

ヨゼフ・コウデルカは、1938年1月10日、チェコスロバキアのモラヴィア州のボスコヴィツェという小さな町で生まれた。当初はベークライトカメラを使い、練習や実験のために身の回りのものや家族を撮影していた。1956年から1961年まで、プラハのチェコ工科大学に通い工学の学位を取得する。同年初の写真展が開催された。その後ブラチスラヴァとプラハで航空工学を学んだ。劇場の出版物の依頼を受けてプラハの "Theatre Behind the Gate"(門の向こうの劇場)の舞台をローライフレックスで撮影することになった。1967年、エンジニアとしての仕事をやめ写真に専念するようになる。1968年、ソ連軍の侵攻のわずか2日前にルーマニアのロマニ―を撮影して帰国した。ワルシャワ条約機構の過激派がプラハを占領し、チェコの開発を破壊していく様子を目撃しただけでなく、いわゆる「プラハの春」の写真を撮影した。彼の写真のネガは、プラハからマグナム・フォトのエージェンシーに密かにに運ばれた。そして写真は匿名でサンデー・タイムズ紙に掲載されたのである。コウデルカが撮ったこの出来事の写真は劇的な国際的なシンボルとなり「20世紀で最も強力なフォトジャーナリズムエッセイの一つとして認識される」ようになった。

>Citizen throwing a brick
Citizen throwing a brick at a Soviet T-55, Prague, Czechoslovakia, 1968

1969年、この「匿名のチェコ人写真家」は、並外れた勇気を必要とした写真に対して、ニューヨークの外国人特派員で構成された海外記者クラブの、ロバート・キャパ金メダルを受賞した。これらの出来事を撮影した彼の写真の多くは、数十年後まで公開されなかったのである。マグナム・フォトはヨゼフ・コウデルカを英国当局に推薦し、就労ビザを申請した。1970年、イングランドに渡り、政治亡命を申請、10年間滞在することができた。そしコウデルカはカメラを片手に1チェコスロバキア、ルーマニアの田舎、ハンガリー、フランス、スペインを旅し、ロマニーの人々を撮影した。 彼らは遊牧生活を送っており、毎年夏になるとクーデルカはプロジェクトのために旅行し「リュックサックと寝袋を背負って、野外で寝て、質素に暮らした」のである。

Gypsy with Horse
Gypsy with Horse, Romania, 1968
Gypsies at a funeral
Gypsies at a funeral, Jarabina, Czechoslovakia, 1963

70年代から80年代にかけては、いくつかの賞や助成金を得て、作品の流れを維持した。1975年の "Gypsies"(ジプシー)、1988年の"Exiles"(国外放浪)など、主なプロジェクトを発表し、作品を展示し続けている。1986年からはパノラマカメラで撮影し、1999年に "Chaos"(混沌)という写真集にまとめている。この写真集以外にも、コウデルカは12冊以上の写真集を出版している。1992年にハッセルブラッド財団国際写真賞、1991年にアンリ・カルティエ=ブレッソン大賞、1989年にフランス国立写真センター大賞、1978年にナダール大賞など、数々の賞を受賞している。

Exiles
Parc de Sceaux, Hauts-de-Seine, France, 1987

そしてニューヨークの国際写真センター、ニューヨーク近代美術館、ロンドンのヘイワード・ギャラリー、アムステルダムのステデライク近代美術館、パリのパレ・ド・トーキョーなどで、重要な展覧会が開催されている。このほかにも、世界各地で多くの展覧会が開催されている。彼の支援者であり友人であったアンリ・カルティエ=ブレッソンは、コウデルカの作品を高く評価、美術史家のアンナ・ファロヴァもコウデルカを支持している。1987年にはフランス国籍を取得し、1990年にはついに祖国チェコに帰ることができた。その後、この国の使い古された風景を記録し、プロジェクト名を「ブラック・トライアングル」と名付けた。

 Kharkiv, Ukraine
Two girls girls with dog balloons, Kharkiv, Ukraine, 1993

ヨゼフ・コウデルカの晩年の写真は、初期の作品の基礎の上に成り立っている。 彼の作品は、文化的、社会的な儀式、そして死に重点を置いている。またルーマニアやスロバキアのロマニーを精力的かつ詳細に研究するようになった。この作品は、1967年にプラハで展示された。ヨゼフ・コウデルカは、その生涯において、濁った風景の中で人間の勇気をとらえることで賞賛と評価を得てきた。彼の作品に反映される通常のテーマは、廃棄物、絶望、出発、疎外、荒廃である。しかし、彼の作品に希望を見出す人もいる。晩年の彼の作品は、人間のいない風景を中心に描かれている。

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