2022年3月24日

公民権運動の影響を記録したキュメンタリー写真家ブルース・デヴッドソンの慧眼

East 100th Street
East 100th Street, New York, 1966
Bruce Davidson (b 1933)

ブルース・デヴッドソンは、1933年9月5日、イリノイ州シカゴ郊外のオークパークで、ポーランド系のユダヤ人の家庭に生まれた。10歳のとき、母親が自宅の地下室に暗室を作ってくれ、写真を撮ることに興味を持ち始めた。地元の写真家と連絡を取り合い、プリントや照明など写真の技術的なことを教わる。10代のころには、コダック・ナショナル・ハイスクールの写真コンテストで賞をもらったこともある。高校卒業後、ロチェスター工科大学を経て、エール大学へ進学。大学の卒業論文として、フットボール選手が試合をしていないときの心情を記録した写真エッセイを制作。この作品は1955年に『ライフ』誌に掲載された。アリゾナ州のフォート・フアチュカにあるアメリカ陸軍の信号部隊に勤務。そこで彼は写真撮影の仕事をすることになった。その優れた研究成果により、編集者からポスト新聞に常駐するよう要請される。

Selma March
Marcher with the word VOTE on his forehead, Selma, Alabama, 1965

そこで彼は、自分の技術と才能を磨く機会を与えられた。デヴッドソンはフランスでアンリ・カルティエ=ブレッソン(1908–2004)に出会い、自分の作品集を見せてアドバイスを受ける。フランス滞在中に、パリの老女を題材にした写真作品 "Widow of Montmartre"(モンマルトルの未亡人)を制作した。彼の芸術的能力は、ブレッソンのほか、ユージン・スミス(1918–1978)ロバート・フランク(1924–2019)から大きな影響を受けている。1957年、兵役の後、フリーランスの写真家として活動し、マグナム・フォトに入会。その後『ドワーフ』『ブルックリン・ギャング』などの代表作を発表し、幅広く撮影を行うようになる。

The Dwarf with Cigarettes and Flowers
Dwarf with Cigarettes and Flowers, New Jersey, 1958

1961年から4年間、公民権運動の影響と出来事を記録した最も有名な作品を制作した。1962年、デヴッドソンはグッゲンハイム・フェローシップを授与され、プロジェクトが支援される。このプロジェクトは、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で展示された。さらに "National Endowment for the Arts"(全米芸術基金)から写真に関する助成金を授与された。"East 100th"(東100番街)は悪名高い地区、東ハーレム(スパニッシュハーレム)のを題材にした、デヴッドソンのもう一つの人気プロジェクトだ。この作品もニューヨーク近代美術館で展示された。続いて "Subway"(地下鉄)と題した作品も制作される。

Martin Luther King, Jr.
Martin Luther King, Jr. at press conference, Birmingham, Alabama, 1962

これは1970年代に、ニューヨークの地下鉄のシステムを古典的に描いたものである。そして1990年代には、4年間にわたるセントラルパークの探検を終えた。1998年には、前回記録した時からの変化を記録するために東100番街の作業に戻った。この作品により、オープン・ソサエティ・インスティテュートの個人フェローシップ賞を受賞した。そして2008年には、マリリン・モンロー(1926–1962)キキ・スミス(1954-)アンディ・ウォーホル(1928–1987)ジョン・ケージ(1912–1992)ジャック・ケルアック(1922–1969)レナード・バーンスタイン(1918–1990)ファニー・ルー・ハマー(1917-1977)といった人々を撮影したポートレート写真集が出版された。

Wales
A Little Girl in Cemetery, Coal Mine, Wales, 1965

ブルース・デヴィッドソンは、2つの短編映画 "Living off the land"(大地に根ざした暮らし)"Isaac Singer's Nightmare and Mrs Pupko's Beard"(アイザック・シンガーの悪夢とププコ夫人の髭)の監督を務め受賞している。「ブルックリン・ギャング」シリーズの写真は、ボブ・ディランのアルバム『トゥゲザー・スルー・ライフ』(2009年)のジャケットに使用された。2011年にソニー・ワールド・フォトグラフィー・アワードで優秀写真貢献賞を受賞。その職業人生の中で、ドキュメンタリー写真家として尊敬される地位を獲得してきた。現在も出版物などで世界的に有名である。

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