2022年3月18日

米国議会遠隔演説で真珠湾攻撃を例にして訴えたゼレンスキー大統領

Volodymyr Zelensky
Zelensky invokes Pearl Harbor as he pleads for more from Washington © 2022 J. Scott Applewhite

ウォール・ストリート・ジャーナル紙 3月16日付けデジタル版によると、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が、キエフから米国議会へのオンライン演説で、9.11 と真珠湾攻撃を引き合いに出し米国議会にさらなる軍事支援と新たな制裁を迫った。議員やバイデン大統領に対して、武器の輸送を拡大・加速するよう個人的に訴えたのである。日本軍の真珠湾攻撃や、アメリカ人が空から狙われた2001年9月11日の同時多発テロを思い出すよう議会に求め、ロシアが侵攻して3週間、彼の国は毎日その恐怖を味わっていると述べた。彼はウクライナ上空の飛行禁止区域を要求したが、ウクライナ人が自衛できるように、予備としてジェット戦闘機や対空兵器を受け入れると述べた。この発言に対し日本の一部から反発の声が噴出したそうである。橋下徹は「ゼレンスキー大統領やアメリカ議会は、9.11 テロや今回のロシアの暴挙と同列に日本の真珠湾攻撃を並べている。日本の完全自衛戦争を主張している人たちはここで声を上げないと国内だけで勇ましいことを言っていることになる。今回のロシアを叩くことはかつての日本を叩くことと同視。黙っとくの?」とツイートしている。かつての日本も、今のロシアも当然ながら叩くべきである。高須克也は「ゼレンスキー大統領が嫌いになった。アメリカ人のウケ狙いで真珠湾攻撃を引き合いに出して日本国民に恥をかかせてる」とツイートしたそうだ。「いえいえセンセイはそのまま嫌いで結構、そのほうが大統領に迷惑をかけません」とリツイートしようかな。ゼレンスキー大統領は日本政府に対しても議会での演説の機会を求めているが、日本人からは「真珠湾攻撃と同時多発テロを並べた人物に国会で演説させるのか」と懐疑的な声も出始めているというから驚く。

Isoroku Yamamoto
Admiral Isoroku Yamamoto © 1941 Arthur Szyk

フランクリン・D・ルーズベルト大統領が後に「屈辱の日」と呼んだ1941年12月7日、連合艦隊司令長官の山本五十六が作戦を発案した真珠湾に対する航空攻撃による奇襲を行った。いわれのない攻撃を受けた米国は即座に日本に対し宣戦布告し、第二次世界大戦へと突入した。ヨーロッパ大陸で戦争が勃発したのを機に、日本はアジアの領土占領に乗り出したのだが、1941年の夏から秋にかけて、米国は日本の資産を凍結するとともに、日本への石油輸出を禁止した。米国の政策と経済制裁が挑戦的になるにつれ、日本の司令部は太平洋の米国拠点を攻撃する決定を下す。その対象はフィリピン諸島、グアム島、ウェーク島、そして真珠湾の太平洋艦隊だったのである。米国が攻撃の影響から立ち直り、再軍備する頃には日本が広大な防衛線を築き、米軍にも打破できない、あるいは打破するのを躊躇するだろうと目論んだのである。窮鼠猫を噛むとはこのことである。ナチスドイツのアドルフ・ヒトラーは攻撃を賞賛し、米国が宣戦布告したのは日本のみであるにもかかわらず、米国に対して宣戦布告をする。ヒトラーの宣戦布告は彼の最大の過ちであったと歴史家の多くが見ている。真珠湾攻撃までは、多くの米国人が孤立主義的な考え方をもち、ヨーロッパの戦争に関わることには消極的だったが、これによって戦線が全世界に拡大することになったのである。狂気のプーチン大統領から侵略を受けているウクライナの大統領が、真珠湾攻撃を引き合いにだしたことに違和感はない。下記リンク先の「日本はなぜ真珠湾を攻撃したのか?」の著者はサラ・プルイットで、アメリカ人の眼から見た真珠湾攻撃の論考である。

war Why Did Japan attack Pearl Harbor? by Sarah Pruitt | © 2020 Imperial War Museums

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