2012年11月21日

壮絶な高桐院の紅葉に細川忠興を想う

松向軒  大徳寺高桐院(京都市北区紫野大徳寺町)Fujifilm Finepix X100

鍵状の細い敷石道。唐門を鍵の手に曲がって玄関へ。書院の奥に茶室松向軒があった。慶長六(1601)年、細川幽斎の長子忠興が建立した大徳寺塔頭高桐院だ。忠興は江戸時代初期の武人として有名だが、三斎と号したように、利休七哲に数えられる茶人でもあった。茶室の天井から小さな裸電球がぶら下がっている。その明かりを頼りに天井に目を注ぐ。実に質素なたたずまいだ。こういうのを利休風建築というのだろう。利休好みという言葉がある。ワビとかサビというのは、唐変木の私にとって理解できない気風だ。どうしても理解できない。古寺にしても、風雪が変貌させた土や草の色はあまり好きではない。むしろ、金ピカだったり派手な朱色だったりしていたほうが嬉しい。伽藍が暗示する浄土はそんな世界ではないだろうか。備前焼きより清水焼きのほうが好きな私だ。
高桐院庭園の楓樹
壮絶な秋
壮絶な紅葉
三斎好みの茶室を早々と退散した私は、庭園に面した縁側に出た。はっと息を飲む。広い庭は一面の苔。計算され尽くした楓樹の配置。夢の中で飴玉に増幅した雨が、樹木と苔をモノトーンの世界に変質させている。ここには色彩の変化はなく、階調のみが残っている。色彩を退けた単色の階調の世界は、もしかしたら三斎好みなのかもしれない。色彩を楽しむ私がどうして息を飲んだのだろうか。目をあけると、ひらひらと赤い楓、黄色い楓が空を舞っている。やがてそれらは苔の上に舞い降り、絨毯を敷き始める。天空からの光束はあくまで細い。緑の領域は次第に衰微し、赤や黄色が拡散してゆく。この仕掛は誰が考えたものだろうか。時の流れが饒舌と静寂を綾織る世界。武人にして茶人。饒舌と静寂が混在しているのは、かれの霊がここにまつられているからかもしれない。

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