2025年5月19日

トランプ大統領の関税は既にその主な目的を達成できていない

China-US
アメリカの対中国貿易赤字は改善されるだろうか

アメリカと中国が貿易戦争で一種の一時休戦に達して「90日間の一時停止」で関税を大幅に削減したことに市場は歓喜した。トランプ大統領にとって、これは譲歩だった。彼は「解放記念日」を皮切りに、報復合戦を繰り返しながら関税を145%まで引き上げ、中国との貿易戦争を著しくエスカレートさせていた。今回、休会期間中にトランプ大統領は関税率を30%に引き下げ、中国は報復措置を撤回し、10%の関税率を維持する。実質的には、両国とも関税を解放記念日以前の水準に戻し、新たに10%の関税を課すことになる。これが米中貿易戦争の恒久的な終結につながるのか、それともトランプ大統領が最終的に飽きて再び関税引き上げに踏み切るのかは、まだ分からない。協議は継続されるだろうが、トランプ大統領は中国がアメリカ企業に対して「開放」することに同意したと主張したが、その詳細は月曜日の合意にはどこにも記載されていなかった。明らかなのは、この撤回によって、トランプ大統領がここで一体何をしようとしているのかという矛盾と不整合がさらに強まるだけだということだ。問題は基本的にこれだ。トランプ関税が大きすぎると、経済にダメージを与え、市場の混乱を引き起こす。しかし、小さすぎると、トランプ陣営が望むような、世界貿易秩序の大幅な均衡回復(アメリカにおける製造業の大幅な増加、中国への依存度の軽減)を実現するには不十分だ。トランプ陣営はいわゆる「ゴルディロックス」的な関税水準、つまり熱すぎず冷たすぎず、ちょうど良い水準を模索しているようだ。しかし、それは実現不可能だろう。既存の世界貿易秩序は極めて強固に構築されており、深刻な経済的痛みを伴わずにこれを覆す方法はない。控えめな関税では、関税推進派が期待するような劇的な秩序転換は実現しないだろう。関税は物価を上昇させるだけだ。関税はひどい。アメリカの同盟国やカナダのような友好国に対する関税引き上げに執着するトランプ大統領の姿勢は、超党派から多くの批判を浴びている。しかし政策立案当局は、米中貿易関係の見直しが必要だという考えにずっと同情的だ。多くの民主党員と共和党員は、両国が深刻な紛争に陥った場合、アメリカが重要な商品、材料、サプライチェーンを中国に依存していることが壊滅的な結果をもたらすと考えている。

Your New Car Is Way More Expensive
関税で新しい自動車の価格は上昇する

また、中国が経済的にアメリカを凌駕しているという見方も広まっている。より安価な中国製造業の台頭がアメリカ国内の製造業を破壊し、雇用を圧迫し、アメリカ人がアメリカで製造業を営む能力を著しく低下させているというのである。一部の安全保障・貿易タカ派は、アメリカと中国の「デカップリング」、つまり両国の経済の分離を主張するまでに至っている。抽象的に言うのは簡単だが、実際に実行するとなるとはるかに困難で苦痛である。中国はアメリカにとって第3位の貿易相手国である。多くのアメリカ企業が中国で製造を行っており、さらに多くの企業が中国製の部品に深く依存している。非常に深刻な混乱を招かずに、複雑なグローバルサプライチェーンを再編することは不可能である。巨額の関税は、輸入品だけでなく、輸入部品を使用しているアメリカ製品でさえも価格が上昇することを意味するのである。しばらくの間、トランプ大統領とその顧問たちは、リスクは理解しているものの、短期的な痛みは長期的な利益につながるため、とにかくやる価値はあると主張していた。こうした長期的な利益が実際に実現するかどうかを疑う理由は数多くある。しかし今、トランプは方針を転換し、短期的な痛みはあまりにも大きいと考えているようだ。世界貿易秩序の再編という壮大な野望は、今のところ縮小されたようだ。そしてトランプ大統領は今、勝利と呼べる何らかの合意を模索しているだけだ。総じて言えばこの変化はおそらく良いことであり、少なくとも他の選択肢よりはましだろう。関税のみで世界貿易秩序を再構築するという考えは、常に非常識であり、恐ろしい結果をもたらす可能性が高い。しかしこの関税水準の引き下げでは、アメリカの製造業の復興や中国への依存度の削減はもはや不可能だ。言い換えれば、これらの関税は映画「アニー・ホール」のレストランの料理に関するジョーク「食べ物はひどいし、量も少ない!」のようなものである。下記リンク先は英国放送協会のジェニファー・クラーク記者によるわかりやすい解説「トランプ大統領が発表した関税とその理由 」である。

BBC News  What tariffs has Pres. Donald Trump announced and why? by Jennifer Clarke | BBC News

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