2025年1月25日

マッキンリー山の名称復活には暗殺事件がトランプの脳裡を横切ったのだろうか

ハンカチに包んだ銃で狙撃されるウィリアム・マッキンリー大統領(米国議会図書館蔵
マッキンリー大統領

複数のマスメディアによると米内務省は24日、米南部に面するメキシコ湾を「アメリカ湾」に正式に改称したと発表した。大統領令はアメリカ国内の話なので、公文書や政府機関発行の地図上で「アメリカ湾」に変更するのは可能だという。メキシコ湾を共有しているメキシコを含む国々の了承も必要ないん。実際に、同じ場所や海域を違う名前で呼んでいる例があるという。西部アラスカ州にある北米大陸最高峰のデナリ山もドナルド・トランプ大統領の主張通りマッキンリー山に変更した。この山には大統領ウィリアム・マッキンリーにちなんだ名が与えられたが、2015年にバラク・オバマ大統領は山の名称を正式にデナリへ変更することを発表した。この変更は、オハイオ州出身議員に不満をもたらした。2025年1月20日にドナルド・トランプが大統領に再び就任すると、その日のうちに名称をマッキンリー山に戻す大統領令に署名したのである。トランプ米大統領は2024年7月13日、東部ペンシルヴェニア州バトラーで開いた支援者集会で暗殺の標的となった。2カ月で2度目となる暗殺未遂事件は米国社会の病の重さを浮き彫りにした。米国では銃規制強化を求める動きは鈍いままだ。ジョー・バイデン前大統領は事件で使われた半自動小銃 禁止を訴えたが、米屈指の影響力を持つロビー団体「全米ライフル協会」の支援を受けているトランプ陣営は銃所持を擁護する姿勢を崩していない。暗殺された米国の大統領は誰れか?と質問されたら、おそらくエイブラハム・リンカーン(1809-1865)とジョン・F・ケネディ(1917-1963)のふたりを誰もがあげるに違いないだろう。しかしジェームズ・ガーフィールド(1831-1881)とウィリアム・マッキンリー(1843-1901)の名を頭に浮かべる人は少ないと思われる。正直言うと私はガーフィールドについては勉強不足で知らなかったが、マッキンリーの名は前から知っていた。ガーフィールドは1881年7月2日午前9時30分、首都ワシントンのボルティモア・アンド・ポトマック駅で、チャールズ・ギトーに狙撃された。今日の医療技術であれば命を落とすことはなかっただろうという、興味深い医療史上の研究があるようだ。マッキンリーはニューヨーク州バッファローで開かれていた、パン・アメリカン博覧会を訪問中の1901年9月6日午後4時7分、無政府主義者レオン・チョルゴシュに暗殺された。名称マッキンリー山の復活にはこの暗殺事件がトランプの脳裡を横切ったのだろうか。蛇足ながら共和党の全国的指導者であったマッキンリーの選挙戦のテーマは、1890年のマッキンリー関税に代表されるような、繁栄のための公式として高率輸入関税を導入することであった。

Charlie Poole & the North Carolina Ramblers
White House Blues

McKinley hollered, McKinley squalled
Doc said to McKinley, "I can't find that ball"
From Buffalo to Washington

Roosevelt in the White House, he's doing his best
McKinley in the graveyard, he's taking his rest
He is gone, long old time

Hush up, little children, now don't you fret
You'll draw a pension at your papa's death
From Buffalo to Washington

Roosevelt in the White House drinking out of a silver cup
McKinley in the graveyard, he'll never wakes up
He is gone, long old time

Ain't but one thing that grieves my mind
That is to die and leave my poor wife behind
I'm gone, long old time

Lookit here, little children, don't waste your breath
You'll draw a pension at your papa's death
From Buffalo to Washington

Standing at the station just looking at the time
See if I could run it by half past nine
From Buffalo to Washington

Came the train, she's just on time
She run a thousand miles from eight o'clock till nine
From Buffalo to Washington

Yonder come the train, she's coming down the line
Throwin' every station, Mr. McKinley's a-dying
It's hard times, it's hard times

Lookit here, you rascal, you see what you've done
You've shot my husband with that Iver Johnston gun
Carry me back to Washington

Doc's on the horse, he th'ow down his rein
Said to that horse, "You've got to outrun this train"
From Buffalo to Washington

Doc came a-running, takes off his specs
Said, "Mr McKinley, it's, better pass in your checks
You bound to die, bound to die"

この歌はチャーリー・プール(1892–1931)とノースカロライナ・ランブラーズが1926年に録音した『ホワイトハウス・ブルース』である。おそらく事件から余り日が経ってうちに作曲したにも関わらず、政治的配慮からすぐに発表できなかったのではなかろうか。ニュー・ロスト・シティ・ランブラーズ、ビル・モンロー、アール・テーラー、サム・ブッシュなど、主としてブルーグラス音楽系のミュージシャンに歌い継がれ、現在でも頻繁に演奏されている。米国のカントリーソングには『オールド 97 の大破』『タイタニック』など、事件事故をテーマにしたトピカルソングが少なからずある。人々は歌によって歴史の記憶が蘇るのである。私がマッキンリー暗殺事件を知ったのはこの『ホワイトハウス・ブルース』を聴いたからだった。下記リンク先の音楽共有サイト SounndCloud でオリジナルレコーディングを聴くことができる。

SoundCloud White House Blues: Charlie Poole & North Carolina Ramblers 1926 (Columbia 15099-D)

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