2021年7月14日

オハイオ州南西部工業地帯の音楽遺産

Smithsonian Folkways Recordings - SFW 40238
Smithsonian Folkways Recordings - SFW 40238

これは今年の1月25日にリリースされたアルバムで、久しぶりに購入したブルーグラス音楽である。ブルーグラス音楽はアパラチアに入植した移民たちが培った伝承音楽に黒人音楽が融合してできた、いわば土と草の香りがする音楽である。従って「オハイオ州南西部の音楽遺産」というタイトルを不思議に思う人がいるかもしれない。20世紀に入り、経済的な機会を求めてアパラチア地方から何十万人もの人々がオハイオ州南西部に移住してきた。その中には数え切れないほどのミュージシャンがいた。そして彼らの音楽をも抱えてやってきたのである。1947年から1989年にかけて、彼らはシンシナティ、デイトン、ハミルトン、ミドルタウン、スプリングフィールドなどの工業地帯を中心に、ブルーグラスという音楽ジャンルを繁栄させ、国際的に有名な「ブルーグラス音楽の都を」作り上げたのだった。ブルーグラスとカントリーミュージックの歴史の中で重要な瞬間を探ったのがこのアルバムで、愛すべきパフォーマーでありラジオパーソナリティであるジョー・マリンズのプロデュースのもと、ダン・ティミンスキー、ロンダ・ヴィンセント、ボビー・オズボーン、そしてマリンズ自身を含むブルーグラスの名手たちが、何十年にもわたってオハイオ州に響き渡ってきた曲に挑戦している。

University of Illinois Press (January 25, 2021)

ブルーグラス音楽界の大御所たちが、工場や倉庫での陽気あるいは孤独な生活に敬意を表し、この地域の豊かな文化とたくましい人々を映し出している。曲目の構成と編集が渋く、超おススメのアルバムである。特筆すべきは同名の書籍がイリノイ大学出版局から同時発売されたことである。フレッド・バーテンシュタインとカーティス・W・エリソンは、オハイオ州南西部のブルーグラス・ミュージシャン、ラジオ放送局、レコーディングスタジオ、レコードレーベル、演奏会場、さらには宗教活動、地域開発、公教育への音楽の貢献について、目撃者の証言と詳細な分析をまとめている。ブルーグラスシーンの発展に伴い、オハイオ南西部の特徴的なサウンドは新たなファンを獲得し、ルーツミュージックを演奏し、制作し、愛し続ける世界中の人々に影響を与えた。この本は、ブルーグラス音楽の温床とそれを作った人々の刺激的なストーリーを共有している。なおアルバムの曲目とパーソネルについては、下記リンク先の拙ブログをご覧ください。

Folkways  Industrial Strength Bluegrass: Southwestern Ohio's Musical Legacy | American Roots Music

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