2020年8月25日

縫い針製造の技術が生んだレコード針

JICO 192-44G/DJ IMP

数種類のフォノグラフカートリッジを持っている。そのひとつが SHURE M44G だが、2018年夏に同社がフォノ製品の生産を終了したので、カートリッジと交換針が高騰している。レコード針は消耗品で、耐用期間が過ぎたら交換しなければならない。通販サイト Amazon での価格はなんと ¥12,000 もする。かつては数千円で入手できた記憶があるのでまさに驚天動地である。代替品のナガオカ GD 63-44G も ¥9,989 で、純正とあまり変わらない。さらに調べてみたところ JICO 192-44G/DJ IMP が¥4,950 と約半値で購入できることが分かった。楕円針より寿命が長い丸針である。製造会社の日本精機宝石工業のウェブサイトを訪問してみた。ナガオカは山形県東根市大字蟹沢、日本精機宝石工業は兵庫県美方郡新温泉町、いずれも都会から離れた小さな町にある。創業は1873(明治6)年で、縫い針のメーカーだった。1949(昭和24)年に蓄音機の針の製造販売を開始、ビニール盤用ターンテーブルのレコード針生産を始めたのは1966(昭和41)年だったという。レコード針は、現在でもおよそ2,000種類(約30メーカーに対応)のモデルがあり、その全てを1本単位で一貫生産しているそうだ。インフラ整備が進みつつある現在でもなお、神戸などの主要都市への移動には3~4時間を要するという。それ故に先人達は、この不便さをバネに製造工程に必要な工具や治具、検査機器は全て自社で設計、製造するという、独立独歩の精神へと昇華させたそうである。

PDF  日本精機宝石工業 JICO レコード針総合カタログの表示とダウンロード(PDF 9.92MB)

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