2020年8月24日

ヴッパータール空中鉄道の今昔


下掲の動画は米国のバイオグラフ社が1902年に撮影した、空中鉄道の映画である。バイオグラフ社は1895年に設立され、1916年まで活動したロサンジェルスの映画会社で、20年間で3,000本以上の短編映画と、12本の長編映画を制作した。フィルムを所蔵するニューヨーク近代美術館のキュレーターたちは、ミュートスコープの70mmフィルムを少し縮小したものだと思っていたが、実際にはバイオグラフ社独自の68mmストックで撮影されたものだったという。空中鉄道はドイツのデュッセルドルフの東に位置する都市、ヴッパータールに敷設されたランゲン式モノレールで、1898年に着工され、1901年3月1日に開通した。


The Flying Train (1902) MoMA Film Vault Summer Camp

1903年6月27日に東側終点となるオーバーバルメンまでが全通したが、使われた鉄材の総量は19,200トン、工事費は約1,600万金マルクだった。オーバーバルメン⇒ゾンボルン通りの間の約10キロメートルは、ライン川支流のヴッパー川の上約12メートルの高さに架けられている。ゾンボルン通り⇒フォーヴィンケルの間の約3.3キロメートルは道路上に架けられ、高さは約8メートルとなっている。全線の所要時間は約30分である。現在も都市交通機関として使われており、現役最古のモノレールとなっているが、新型コロナウィルス感染症パンデミックのため、土曜と日曜のみ運行している。この制限は2021年夏まで続くと予想されているそうだ。


ヴッパータール公益事業団と鎌倉の湘南モノレールは2018年9月13日に「姉妹懸垂式モノレール協定書」を締結した。ヴッパータ―ル空中鉄道ランゲン式モノレールのレールは、片持ちで支えられ、車輌はレールとは逆側に伸ばされたアームで台車にぶらさがっている。一方、湘南モノレール懸垂式は、レールを箱型の筒状にし、下面中央部を開け、車両を懸垂するタイプで、開口部両側を車両の屋根上の支柱に付けられたゴムタイヤで走行する。蛇足ながら学生時代を過ごした千葉市の懸垂式モノレールを思い出す。急激な人口増加現象により、交通渋滞とバス利用者の増大、排気ガスや騒音等自然環境の悪化を招き、その解決策として1988年に開業した。営業距離15.2キロメートルは懸垂型モノレールとしては世界最長で、人身事故は皆無。2012年7月には、新型車両アーバンフライフライヤーがグッドデザイン賞を受賞した。海外から「電車が逆さまに走っているように見える」と世界的にも珍しい乗り物として人気となっているそうだ。

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