2020年5月3日

古写真を旅する愉しみ

Ada (ukulele) Orpha (mandolin) Charles (guitar) Cowan Powers (fiddle) ca.1925

インターネットで偶然見つけた写真だが、単に "Fiddlin' Cowan Powers" と題されているだけで、詳細な説明はついていなかった。しかしアメリカの伝承音楽の画像蒐集を趣味にしている私は、これが1920年代に活躍したフィドリン・コーワン・パワーズ(1877-1953)一家のものだとすぐに分かった。コーワンは4人の子どもの父親で、商業レコードに初めて録音したファミリーバンドのリーダーだった。メンバーは6人だったが、妻のマチルダ・ランバートと娘のキャリーはこの写真に写っていない。末娘のアイダがウクレレを手にしているがいつ頃、どのような経緯でハワイからこの楽器がアパラチアの山奥に伝播したか、調べるのも一興だろう。20世紀初頭にオービル・ヘンリー・ギブソン(1856–1918)が、背面をヴァイオリンのように滑らかなカーブにしたフラットマンドリンを考案したが、オルファには届いていなかったようだ。

Front row (L-R) Cowan, Orpha, Carrie, Ada, Charlie Powers and Fiddlin' John Carson 1925

こちらは1925年5月、テネシー州マウンテンシティで開催されたフィドラーズ・コンベンションでの記念撮影で、前列にコーワン・パワーズと娘のオルファ、キャリー、アイダ、そして息子のチャーリーが写っている。右端がフィドリン・ジョン・カースン(1868–1949)であることは、私にとっては極めて興味深い一葉だ。上掲の写真と同じ時期に撮影された可能性があるが、服装が違うので日付は異なるようだ。コーワン・パワーズはヴァージニア州、一方ジョン・カースンはジョージア州出身、このようなフィドル弾きの大会が、広域交流の場だったようだ。このように古写真から古写真へと旅しながら、歴史の糸を一本一本紡ぐは愉しい。下記リンク先で、エジソン瘻管録音機によるコーワン・パワーズ・ファミリーの演奏を聴くことができる。

SoundCloud  Listen to "Old Joe Clark" by Fiddlin' Powers & his Family 1925 on SoundCloud

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