2020年5月17日

マスクの着用を呼びかけた100年前のポスター


100年前のスペイン風邪(1918~20年)は20世紀最悪のパンデミック(感染症の世界的大流行)とされている。死者は世界全体で2千万~4千万人、国内でも40万人前後が亡くなった。当時の内務省衛生局は感染防止を呼びかけるポスターを作成、終息後の1922年3月に出版した『流行性感冒』に収録した。これは外出時のマスク着用を促したもので、右のポスターに書かれた「汽車電車人の中ではマスクせよ」は、現在の新型コロナウィルス感染症 COVID-19 に対する呼びかけとまったく同じである。左のポスターは「マスクかけぬ命知らず」と警告、さらに「恐るべし "ハヤリカゼ" の "バイキン"!」とある。

内務省衛生局 (編集)『流行性感冒』より
ウイルスを観測できる電子顕微鏡を開発されたのは1930年代。実際にこのスペイン風邪のウイルスを分離することに成功したのは、パンデミックが終わって15年が過ぎた1935年だった。だから当時の光学顕微鏡で見ることができなかったので、病原体を当時は「ばい菌」と表現したのである。ところで日本でのマスクの歴史は、明治初期に始まったが、炭鉱などで働く人たちの粉塵除けが、おもな用途だった。ところが、1スペイン風邪のの大流行により、予防品として注目を集めるようになった。以後、インフルエンザが流行るたびにマスクの需要が高まり、現在に至っている。欧米諸国を中心にマスク不要論が大勢を占めていたが、新型コロナウィルス感染症 COVID-19 パンデミックによって見直され、世界に普及し始めたのはご存知の通りだ。

amazon  復刻版:内務省衛生局 (編集)『流行性感冒』平凡社東洋文庫778(2008年11月)

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