2020年12月4日

トランプ大統領の陰謀論に騙される日本人の不可解

Cartoon by Bill Bramhall
Pardons ©2020 Bill Bramhall / Tribune Content Agency

米大統領選はトランプ大統領(74)の信任投票、すなわち「トランプvs反トランプ」だったと思う。そのトランプ大統領が敗北を認めないまま、投票日から12月3日で1カ月を迎えた。ホワイトハウスの情報筋は CNN テレビに対しトランプ大統領が退任前に立て続けに恩赦を与える可能性があると明らかにした。その前日の12月2日には「これは今までで最も重要なスピーチになるかもしれない」という説明とともに、不平不満を46分間にわたりまくし立てた。記者の質問を避けるためか、ホワイトハウスで非公開収録したらしく、ビデオを Facebook に投稿した。狙いは選挙結果の無効化で「不正選挙」と闘い続ける意思表明である。以下をその「証拠」として挙げているが、この多くは裁判で認められず、すでに棄却されたものばかりである。

  • ミシガン州ではドミニオン・システムの欠陥のため6万の票がトランプからバイデンい変更された。
  • ミシガン州では大幅にリードしていたのに、午前6時31分、149,772票が突然バイデンに入った。
  • ジョージア州ではなぜか有権者の署名が本人の署名であるか確認されることなく、たくさんの票がバイデンに流れた。署名が本人の署名とマッチするか確認する必要がある。
  • 本人かどうかIDを確認されず、米国市民か確認されず投票した人々がいる。死者も投票した。
  • 民主党が強い都市では、選挙立会人が集計室から追い出された。不法な活動を行なっていたからだ。
  • ペンシルベニア州では、多くの有権者が郵便投票用紙を2通も受け取ったが、民主党支持者だった。
  • 有権者登録していない人々の中には、偽名で投票するようにと言われた人々がいる。
  • 締め切りを過ぎて到着した票が何千票も集計されたという証言がある。
  • デトロイトでは、選挙管理人が同じ票を何度もカウント。複製された票もあり、同じ署名だった。
  • ネバダ州では署名を確認するマシンが低標準で設定されていたため、多くの票が集計に入れられた。実験的に9人の人々に意図的に正しくない署名をしてもらったところ、うち8人の署名が正しい署名であるとそのマシンにより判断された。
  • 激戦州では、郵便投票の拒否率が非常に低かった。ジョージア州では拒否率が0.2%とほとんど拒否されなかったに等しい。一方、2016年の大統領選時の拒否率は6.4%だった。

この4年間、世界中の報道機関やインターネット企業が「陰謀論」と戦ってきた。トランプ大統領の特質は政権に批判的な CNN テレビやニューヨーク・タイムズなどの報道を「フェイク」だと切り捨てたことである。どこの国の為政者も自分を批判するメディアを嫌い、忖度するメディアを尊重する傾向がある。前首相の安倍晋三は、朝日、毎日、東京新聞を嫌ったが、産経、読売といった「御用新聞」を好んだ。心地良いからである。それがこの国の方向をオカシクしてしまったのである。トランプ大統領は自分を味方してくれる FOX ニュースを尊重していたが、その FOX ニュースは論調を反転、批判側に回った。11月9日の記者会見で、ホワイトハウス報道官のケイリー・マケナニーは、ジョー・バイデンの支持者らが投票での不正行為に関与したと主張した。しかし FOX ニュースのアナウンサー、ニール・カヴートは「この発言には根拠がない。これを見せ続けることはできない」と、オンエアを中断したのである。この辺りに米国の民主主義の底力を窺うことができる。

covid-19

不可解なのはトランプ大統領の陰謀論を信じている日本人が少なからずいることだ。トランプ陣営が起こした訴訟の大半が、証拠がないとして各州の裁判所で却下されてるにも関わらず「不正の票がたくさんあるから、トランプは裁判で勝ちますよ。公正な司法判断がくだり、2期目の大統領になります」という妄言が右派のネット界隈に散見する。こうしたトランプ支持者や陰謀論者は、醜悪極まりないネトウヨと重なっている可能性が高いと断言できる。しかし現実に対する焦りから「中国に対抗できるのはバイデンでなく、トランプだけだ」という悲鳴に近い妄言が聞こえてくる。トランプ大統領の陰謀論を批判する Twitter や Facebook から、新しいソーシャルメディア Parler に移行するトランプ支持者が増えているようだ。なお下記リンク先は CNN テレビのクリス・シリザ編集主幹による記事「ドナルド・トランプがいかに民主主義にとって危険かを証明する46分」である。過去4年の間、民主主義が厳しい局面を迎える場面は幾度もあったが、ここまでその価値がおとしめられたことはなかった、と鋭く批判している。トランプ大統領がやっていることは、笑えるとか、恥ずかしいといったレベルを超えている。今まさに危険な段階に入っているというのである。

CNN  46 minutes that prove how dangerous Donald Trump is to democracy | Christopher Cillizza

0 件のコメント: