2020年12月21日

ソーシャルメディア Parler の前途多難

Parler
Illustration ©2020 Elizabeth Brockway/The Daily Beast
Rebekah Mercer

ちょうど一カ月前にソーシャルメディア Parler のアカウント登録をした。Parler はレベッカ・マーサーとジョン・メッツによって2018年8月に創設された。レベッカ・マーサーは億万長者のヘッジファンドマネージャーで計算機科学者のロバート・マーサーの娘で、2010年にドナルド・トランプが所有していたアパートを購入したことから付き合いが始まった。父親とともに2016年の大統領選挙に2,500万ドルを寄付している。マーサーはスティーブン・バノンをドナルド・トランプに最初に紹介した人物だった。そしてバノンと共に映画『クリントン・キャッシュ』の制作に協力している。彼女は最近 Parler で次のような発言をしている。

ジョン(Parler の CEO)と私は言論の自由のための中立的なプラットフォームを提供し、データのプライバシーを保護するソーシャルメディア環境を作るために Parler を立ち上げました。ベンジャミン・フランクリンは私たちに「国家の自由を覆そうとする者は、言論の自由を抑えることから始めなければならない」と警告しています。テクノロジーの支配者たちの暴虐性と傲慢さがますます増しているので、データマイニングとオンラインでの言論の自由を守るために、誰かが先頭に立って戦うことが求められています。それが Parler であり、自由、言論の自由、個人のプライバシーを大切にするすべての人への道しるべです。

民主主義に即した至極真っ当な言葉である。スタンフォード大学で生物学と数学を学び、1999年に経営科学と工学の修士号を取得した才媛で、単なる富豪の娘とは違う。ただ Parler 創設時にこの考えを持っていたのなら、2020年の大統領選におけるソーシャルメディアの対応を予言したことになる。Twitter 社がトランプ大統領の投稿に誤解を招く表現が含まれているとして、利用者に注意を喚起する警告を発し、投稿の下に「選挙不正についてのこの主張は疑われている」と注意書きしたリンクを添付したのである。

Trump'sTweet
赤字の注意書きが付いたツイート

この措置に反発したのだろうか、ツイートに注意書きを付けられた人、ファクトチェックを嫌う人、そしてトランプ大統領や共和党の支持者たちが堰を切ったように Parler に参加し始めた。今年11月の統計では1,000万人を超えたようだ。タイムラインを拾い読みすると、トランプ大統領の陰謀論をそのまま復唱、礼賛するなど、まさに「言論の自由」を謳歌した感の投稿に溢れている。ただしあくまでも大統領寄りであって、もし批判をすればそれこそ袋叩きにあいそうな雰囲気である。それはそうとして、来年1月、バイデン政権が始動すれば、トランプはどうなるだろうか。大統領という強力な権力の座を降りれば、単なる一経営者に戻ることになる。しかもこれまでのように大統領特権で Twitter による発信もできなくなる。雲泥の差とはこのことである。次第に影響力を失ってゆくと私は想像している。しかも2024年の大統領選で共和党の候補となるとは限らないのである。トランプが凋落した場合、Parler はどのように変質してゆくのだろうか。共和党支援者がオーナーという政治色を持った Parler が、いかに「言論の自由」を標榜しても Twitter のようなグローバルな存在になるとは考え難い。米国ローカルのソーシャルメディアとして勢いを失ってゆくのではないだろうか。下記リンク先のサイトに Parler のアカウント取得方法が解説されている。本人認証は携帯電話で行う。パスワードは8文字以上で、大文字小文字のアルファベット、数字、記号の4種類を混ぜる必要がある。

parler  How to Create Parler Account | Android・Windows・iOS

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