気分が悪くなるので菅義偉のことを書くのは控えようと思っていたが、やはり書かざるを得ない状況だ。安倍晋三が病気を理由に逃げ出したお陰で、菅義偉が首相の座を得たのは9月16日だった。当初「安倍政治の継承」が謳い文句だったが、その後の人事などを見ると「脱安倍」に舵を切ったようである。就任の一か月後、所信表明前にベトナムとインドネシアを訪問、国会軽視と野党から指摘される。やっと26日に召集された臨時国会で所信表明演説を行ったが、新型コロナウイルス対策を巡り、医療資源を「重症者に重点化します」と言うべきところを「重症者にゲンテン化します」などと読み間違いをした。麻生太郎、安倍晋三に続き、漢字が読めなくとも首相になれることを証明したのである。28日に国会論戦が幕を開けた。衆院代表質問で、野党側は日本学術会議問題を取り上げ、過去の政府答弁との整合性や任命拒否の理由について追及した。
就任後の朝日新聞などのインタビューで、学術会議が推薦した会員候補の除外前の名簿を「見ていない」と説明してきた。しかし「過去の答弁は承知しているが、公務員の選定は国民固有の権利だ」「必ず推薦通りに任命しなければならないわけではないという点は、政府の一貫した考えだ」などと説明。会員候補6人の任命を拒否した理由について、枝野幸男が「明確にお答えください」と迫ったが「任命の理由は人事に関することであり、お答えを差し控えます」と突き放す始末。この報道に接し、安倍政権の官房長官時代に「そのような指摘は当たらない」「全く問題ない」と木で鼻をくくったような定型句を、記者会見で乱発したことを思い浮かべた人が多いだろうと思われる。相撲に喩えると「土俵に上がらないから負けない」論法だ。主権者を顧みない態度は、ボディーブローを受け、じわじわ政権基盤が弱体するだろう。終わりの始まりである。
第203回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説(2020年10月26日)|首相官邸