2020年5月28日

閲覧者が 3,500 人を超えた Facebook ページ

Stonehill Band (MSA) Salem, Dent, Missouri, November 1907

ソーシャルメディア Facebook で私が管理しているページ「アメリカンルーツ音楽」の閲覧者が今日3,500人を超えた。なぜ日本人がアメリカ音楽のページを、と不思議に思う人が多いかもしれない。同サイトには外国人が作っている日本の浮世絵やヲタク文化のページもあるし、そういう意味では別に不思議ではないと思っている。ページを「いいね!」した人の性別と年齢の集計データを見てみよう。ユーザーのプロフィールに記載されている情報に基づいて集計された推定値でである。男女とも65歳以上の高齢者が一番多い。ソーシャルメディアは若者というイメージなので意外だ。利用者が Facebook プロフィールに入力した年齢や性別などのさまざまな要素に基づいて集計されたものだそうである。


管理人が日本人と知った人から「日本語で」というメッセージが届いたが、外国人のほうが多いので、と返信したこともある。国別アクセスのベストテンは次の通りである。( ) 内は人数。
  1. アメリカ合衆国(2,337)
  2. イギリス(162)
  3. 日本(150)
  4. カナダ(95)
  5. オーストラリア(70)
  6. フランス(56)
  7. イタリア(56)
  8. ドイツ(35)
  9. スウェーデン(32)
  10. スペイン(28)
アメリカからのアクセスが圧倒的に多いが、イギリス、カナダ、オーストラリアの英語圏、そして英語を解する人が多いヨーロッパからと続くのがお分かりいただけると思う。日本が3番目だが、これは私の Facebook フレンドが含まれているからだと思う。閲覧者が1万を超えるページがざらにあるので、3,500人はひよっこページと言えそうだ。しかし現在の Facebook フレンドは1,275だし、それなりのファンを得たと言えるかもれない。これまで1,000人単位でマイルストーンと表現してきたが、半マイルストーンは存在しない。一カ月以内に500人増えたわけだが、分母が大きくなると拡散速度が速まるようだ。次のマイルストーンは4,000人、日本流にいえば四里塚だが、意外と早く到達するかもしれない。

2020年5月24日

安倍内閣支持率急降下 終わりの始まり


毎日新聞5月23日付け電子版によると、会調査研究センターと全国世論調査を実施したところ、安倍内閣の支持率は27%で、今月6日に行った前回調査の40%から急落した。不支持率は64%(前回45%)に跳ね上がったという。東京高検の黒川弘務検事長が賭けマージャンをしていた問題で辞職したことについては「懲戒免職」にすべきだが52%と半数を超えた。安倍内閣は新型コロナウィルス感染症 COVID-19 パンデミックに対し、ことごとく対応が遅れ、国民の反感を買ってきた。なんの科学的根拠もなく小中学校の閉校要請したり、休業補償金なしに飲食店や遊戯施設などの営業自粛や、コンサートホールやライブハウス、美術館などの芸術活動の停止、通勤混雑緩和のため、時差出勤や在宅テレワークを求めたりしたのである。

©毎日新聞
PCR 検査が十分にできないとか、医療体制の気弱体質が露呈した。にも関わらず、支持率40%を維持してきたのが不思議で仕方なかった。賭けマージャンをして辞表を提出した黒川弘務検事長に対し、首相の操り人形、森まさこ法相が「訓告」の処分とし、多額の退職金が支給されることになった。ウィルスの感染拡大を防ぐために営業自粛をしてきた人たち、多くの不便を強いられてきた国民の怒りを買ったのは言うまでもない。調査結果に安倍内閣は戦々恐々としているに違いない。首相周辺は「レームダックになる」と焦りはじめているようだ。総理大臣の最大の武器は解散権だが、さすがに新型コロナウィルス感染症 COVID-19 パンデミックが終息するまでは行使できない。求心力を取り戻す方法は、内閣改造しか残されていないのが実情だが、内閣は「解散すれば強化され、改造すれば弱体化する」のが定説である。安倍独裁政治の終わりの始まりだ。

news  内閣支持率29% 発足以来最低に 不支持率は52%(朝日新聞世論調査 5月23~24日実施)

マイクロソフト Edge に移行すべき理由

Chrome vs Edge

Liat Ben-Zur on Twitter
米マイクロソフトが5月21日、Windows および Mac に対応したウェブブラウザ "Edge 83" を正式リリースしたので、公式サイトから無償ダウンロードした。新型コロナウィルス感染症 COVID-19 パンデミック禍の今日この頃、外出を控えているのでパソコンに向かう時間が長くなっている。従って戸外の写真撮影もままならぬ状態なので、画像処理ソフト Photoshop の出番も少なくなっている。もっぱらブラウジングで時間をやり過ごしている。ブラウザはそれこそ COVID-19 関係のニュースを読むための必須ツールだ。これまでの常用ブラウザはグーグルの Chrome だったが、最近はマイクロソフト Edge にシフトしている。マイクロソフトのリアット・ベン=ツァは「新しいマイクロソフト Edge に移行すべき10の理由」を、次のように挙げている。
  1. コレクションを利用してリサーチ結果を整理する
  2. 垂直タブを使って効率よく作業を進める
  3. スマートコピーで時間を節約する
  4. 追跡防止機能でユーザーによるセキュリティ管理を可能にする
  5. パスワードが漏えいしダークウェブで取引されている場合はパスワードモニターで検出できる
  6. InPrivate モードの強化により真のプライベートブラウジングと検索を実現する
  7. イマーシブ リーダーですべてのユーザーの効果的な学習が可能に
  8. Edge で 4K やドルビーオーディオによる最適なイマーシブエクスペリエンスを実現する
  9. 明るい未来のために Bing で寄付をする
  10. 新しいマイクロソフト Edge へスムーズに移行できる
4. の追跡防止機能だが Edge は既知のトラッカーを検出してブロックするように設計されていて、ブロックするトラッカーはユーザーが決定できる。追跡防止では[基本][バランス][高レベル]の3つのレベルから選択できるが、デフォルトでは[バランス]がオンになっている。この設定により、コンテンツと広告のカスタマイズは減少する。この一点だけでも Edge に移行するメリットがありそうだ。

Microsoft  新しいマイクロソフト Edge (Windows/Mac)の概要とアプリケーションのダウンロード

2020年5月21日

五輪エンブレム風刺デザイン狂騒曲

削除された外国特派員協会月刊誌の表紙

朝日新聞5月21日付け電子版によると、日本外国特派員協会の会員向けの月刊誌 "NUMBER1 SHIMBUN" の4月号の表紙に掲載されたデザインを取り下げ、ホームページから当該の表紙を削除することにしたという。大会組織委員会が「著作権法上の著作権の侵害にあたる」と抗議したことを受けたもので、カルドン・アズハリ会長は「今回の問題で不快な思いをされた各方面の方々に心よりおわび申し上げる」と謝罪したという。著作権の侵害云々は建前論だが、これは一種の「風刺画」であり、抗議は極めて狭量と言わざるを得ない。朝日新聞は16日、電子版に「五輪エンブレム、コロナで風刺 デザイナーが語った意図」という記事を掲載した。表紙をデザインした東京在住の英国人デザイナー、ポセケリ・アンドリュー氏は「このデザインは新型コロナウイルスが日本に与えた影響について表したものであり、そこには当然、東京五輪も含まれる。人々が抱く疑問を投影したもので、日本政府や開催都市を批判する意図はない」と語っている。奇しくも今日、共同通信が、東京五輪、21年無理なら中止とIOCのバッハ会長が認める、と伝えている。新型コロナウィルス感染症 COVID-19 によって、東京五輪の開催の方向が彷徨い始めたという現実が表現されている。その現実を直視したデザインで、極めて真っ当な報道姿勢と言える。大会組織委員会の狭量に唖然とする。

PDF  日本外国特派員協会 "NUMBER1 SHIMBUN" 4月号の表示とダウンロード(PDFファイル 1.25MB)

2020年5月18日

翻訳アプリ DeepL を組み込む


ロゴマーク
英語などの外国語のサイトに踏み込んだ場合、概要をすばやく理解するには、やはり機械翻訳が役に立つ。ブラウザ Chrome の場合は拡張機能の「Google翻訳」を利用している。ただ拡張機能ではなく、単にページにアクセス、文章をドラッグ&ドロップすれば翻訳してくれる。この方法で Google、DeepL、Weblio、Excite による翻訳サービスの比較テストを先月下旬に試み、その結果を「オンライン翻訳ツールの実力」と題して当ブログにポストした。私見では「DeepL翻訳」が高品質で自然な翻訳で、優れていると感じた。以来このページを訪れるようになった。このシステムを提供している "DeepL" は、ドイツのスタートアップ企業で、ディープラーニング(深層学習)を軸に、言語向けの人工知能システムを開発している。2020年3月19日に日本語と中国語の翻訳機能が加わり、正式に日本向けにもオンライン翻訳サービスが提供開始になったばかりだ。ソーシャルメディア上では極めて評判が高く「神翻訳ツール登場」といった絶賛評価もあるようだ。Windows と Mac 向けのアプリがあるので、ダウンロードして組み込んでみた。翻訳するにはテキストを強調表示、Windows ではショートカットキー「Ctrl+C」Mac では「⌘+C」を2回押す。すると DeepL の訳文入りのウィンドウが表示されるので、それをコピーまたは原文の該当箇所に直接挿入するなどして作業を進めるようになった。このような優れた翻訳ツールが無料であることに驚きを禁じ得ない

technology 無料 DeepL アプリをダウンロードしてパソコンにインストールする(Windows / Mac)

2020年5月17日

マスクの着用を呼びかけた100年前のポスター


100年前のスペイン風邪(1918~20年)は20世紀最悪のパンデミック(感染症の世界的大流行)とされている。死者は世界全体で2千万~4千万人、国内でも40万人前後が亡くなった。当時の内務省衛生局は感染防止を呼びかけるポスターを作成、終息後の1922年3月に出版した『流行性感冒』に収録した。これは外出時のマスク着用を促したもので、右のポスターに書かれた「汽車電車人の中ではマスクせよ」は、現在の新型コロナウィルス感染症 COVID-19 に対する呼びかけとまったく同じである。左のポスターは「マスクかけぬ命知らず」と警告、さらに「恐るべし "ハヤリカゼ" の "バイキン"!」とある。

内務省衛生局 (編集)『流行性感冒』より
ウイルスを観測できる電子顕微鏡を開発されたのは1930年代。実際にこのスペイン風邪のウイルスを分離することに成功したのは、パンデミックが終わって15年が過ぎた1935年だった。だから当時の光学顕微鏡で見ることができなかったので、病原体を当時は「ばい菌」と表現したのである。ところで日本でのマスクの歴史は、明治初期に始まったが、炭鉱などで働く人たちの粉塵除けが、おもな用途だった。ところが、1スペイン風邪のの大流行により、予防品として注目を集めるようになった。以後、インフルエンザが流行るたびにマスクの需要が高まり、現在に至っている。欧米諸国を中心にマスク不要論が大勢を占めていたが、新型コロナウィルス感染症 COVID-19 パンデミックによって見直され、世界に普及し始めたのはご存知の通りだ。

amazon  復刻版:内務省衛生局 (編集)『流行性感冒』平凡社東洋文庫778(2008年11月)

2020年5月15日

このマシンはファシストを殺す

The fiddle owned by Woody Guthrie who wood burned all of the writing into it

Woody Guthrie 1941
これはウディ・ガスリー(1912–1967)が持ち歩いていたフィドルで、オクラホマ州タルサにある公立博物館「ウディ・ガスリー・センター」に展示されている。自身の名前と日付けを中心に、ウッドバーニングがびっしりと施されている。画像をクリックすると拡大表示されるので、細部を見て欲しい。左上に This Machine Killed 10 Fascists(このマシンは10人のファシストを殺した)と焼かれていることが分かると思う。1939年の第二次大戦勃発時、ニューヨークのフォークシンガーたちは反戦の立場をとっていた。1941年にピート・シーガー(1919–2014)らとオルマナック・シンガーズを結成、プロテストソングという社会変革の音楽を世に送り出した。ウディは反ファシスト運動に参加、ギターに This Machine Kills Facists(このマシンはファシストを殺す)と書きなぐった。特筆すべきは、彼が軍隊に入隊したことである。つまり「参戦反対」から「参戦支持」への転向したわけで、ファシストとはアドルフ・ヒットラー(1889–1945)であったことは言うまでもない。ギターに書かれた「ファシストを殺す」は、ヒットラーを倒すためには銃をも取ろうというメッセージであった。のちにステッカーに切り替えたが、多くのミュージシャンに影響を与えた。振り出しに戻ろう。フィドルには「ファシストを殺した」と過去形で焼き刻まれている。盟友ピート・シーガーへの手紙の中で「ファシズムと自由の闘いの決着がつくまで、世界は2,500万年間待っていた」と書いているという。下記リンク先の音楽共有サイト SoundCloud でウディのフィドルを聴くことができる。

SoundCloud  Listen to "Nine Hundred Miles" by Woody Guthrie (fiddle) and Cisco Houston (guitar)

2020年5月10日

カラー化で歴史が蘇るモノクロ写真


左の写真を当ブログにポストしたが、同時に Facebook の American Roots Music で紹介したところ、パトリック・ラドゥーがカラー化してくれた。日本では幕末から明治にかけて「彩色写真」が流行った。モノクロ写真に一枚一枚手作業で色を塗ったのである。現代ではAI(人工知能)によるモノクロ写真の自動色付け技術が開発され、数々のウェブサービスも登場してる。ラドゥーがこのサービスを利用したのか、それとも画像処理ソフトを使ったのか不明である。古写真のカラー化では、ロマノフ家最後の舞踏会の一連の写真を処理した、モスクワ教育学外国語研究所の元教授で、ドイツ語翻訳者のオリガ・シルニナが有名である。彼女はアドビ社の画像処理ソフト Photoshop で作業、写真を彩色するのに丸一日かかったそうである。写真術がカラーから始まったならどうなっただろうか、ふとそんなことを考えることがある。先駆者たちはモノクロ写真が現実と違うので、その彩色に力を注いできた。彩色写真を見ると、時計の針が早回りしているような錯覚を覚える。

Before and After
シンガポール政府関係のテクノロジーを活用して開発されたオンラインサービス「ColouriseSG」を利用してモノクロ古写真のカラー化を試みた。上掲の写真がその結果だが、完璧とは言えないものの、ワンクリック、あっという間に処理できたことにいささか驚きを禁じ得ない。下記リンク先で試用できる。

AI ColouriseSG (Singapore) Colourise your black and white photos using AI technology

2020年5月8日

音楽テレビ番組 WoodSongs に痺れる

WoodSongs 1,000th Broadcast, November 19, 2019

オーディオに凝っていた1960年代、高音質の FMラジオをよく聴いていた。たしか NHK と FM東海の2局しかなく、100局以上あったアメリカの放送事情を羨望したものである。ジャズやカントリーなどの専門局があると知って驚いた。ところが今ではインターネットにアクセスすれば、世界中のFM放送を楽しむことができる。ラジオを持っているが、受信できる放送局は近隣エリアの限られている。海外放送局の電波が届かないのは自明の理である。高校生時代、私は在日米軍の FEN(極東放送網)のカントリー音楽番組をよく聴いていた。特に WSM局の公開ライブ放送 Grand Ole Opry(グランド・オール・オプリ)を聴くのが楽しみだった。現在、AFN(米軍放送網)の衛星放送は、米軍人や軍属向けに販売されている専用のデコーダを購入する必要がある。ただ AFN Pacific(日本・韓国駐留軍向け放送)は、これまた公式ウェブサイトにアクセスすれば視聴可能だ。

前置きが長すぎてしまった。このチャンネルで音楽番組 "WoodSongs Old-Time Radio Hour"を聴取できることを知ったからだ。しかし音声のみで元の木阿弥、同番組のサイトにアクセスしてアーカイブを覗いている。テレビ番組 WoodSongs は、わずか20人の小さなスタジオで始まったアメリカンルーツ音楽のプロジェクト。これは上記 AFN でテレビおよびラジオ173局で放送されていて、世界中、100万人以上のリスナーを誇っている。週末に2回放映されるが、昨年12月の時点で、なんと1,000回に達している。主訳は司会のフォークシンガーのマイケル・ジョナサンで、ボランティア活動である。ジョナサンはニューヨーク州のハドソンバレー出身だが、ピート・シーガーの勧めで、アパラチア山系のケンタッキー州ムージーに移住している。番組にはアメリカンルーツ音楽の錚々たるミュージシャンが参加してきたが、その音声あるいは動画ファイルをダウンロードできる。時折そのファイルを Facebook ページ「アメリカンルーツ音楽」に転載している。蛇足ながら動画共有サービス YouTube では、下手すると収益の種になる可能性があるので、ダウンロードはできない。

television  The Official Website Of Folksinger Michael Johnathon's WoodSongs Old-Time Radio Hour

2020年5月5日

電子書籍 Kindle を見直す


Kindle Paperwhite
クリエーターの作品配信サイト note で「まさかのキンドル禁止令?」という記事が目に止まった。筆者の神谷玲衣さんは海外で仕事をしたり子育てをした経験を元に、海外と日本の、生活全般、教育、文化などについての発信をしているそうだ。娘さんの私立中学校の入学式の日、担任の教師に「1月の入学説明会の時に、キンドル持参希望なら、許可申請書を出すように言われたんですが、用紙をいただけますか?」と訊くと「は? キ…ンドルですか? ちょっと確認してお伝えします」と言われたという。どうやら教師はアマゾンの電子書籍リーダー Kindle を知らないらしいのである。通学に往復3時間かかるが、その間混んだ車内で大きな通学カバンを持って分厚い本は読めず、せっかくの読書時間を無駄にすることになる。Kindle なら掌にのるサイズなので、立っていても読める。海外生活で養った語学力を維持したい。学校では先生に預けて、使用は通学時のみと約束すると説明したが、キッズ携帯意外の電子機器は、全て禁止という答えが返ってきたという。休校期間の延長により、一部の小中学校でパソコンを使った遠隔授業がスタートしているが、この教師はどのように対応しようとしているのだろうか。他人事ながら心配になる。

私が所持しているのは新書版とほぼ同じサイズの7インチ Abdroid タブレットで Kindle のアプリを導入している。しかし読書専用の Kindle 電子書籍リーダーは、実際のインクを使用しているため目に優しい。しかも通信機能、ゲーム機能はなく、写真も撮れないし、音楽を聴くこともできない。ほぼ紙の書籍と考えてよく、この点をどうやら理解できないようだ。2016年の夏に「紙の感触が読書の愉しみを増幅する」という一文をポスト、Kindle 導入を見送ったと書いた。その後、タブレットに Kindle アプリをインストール、電子書籍を読むようになった。メリットはいろいろあるが、痛切に感じたのは文字を大きくすることができることだった。さらに紙の本よりも安価であることは見逃せない。著作権が消滅した作品や著者が許諾した作品のテキストを無料公開している「青空文庫」の存在も大きい。夏目漱石や森鴎外など、明治の文豪の作品、あるいは『源氏物語』などの古典文学をタダで楽しんでいる。最近はさらに「自宅で本が購入可能」という点に注目している。新型コロナウィルス感染症 COVID-19 パンデミックで外出がままならぬ昨今、これはひじょうに有難い。紙の書籍と違って、オンラインで書籍を入手できるので、宅配という負荷がないからだ。

2020年5月3日

古写真を旅する愉しみ

Ada (ukulele) Orpha (mandolin) Charles (guitar) Cowan Powers (fiddle) ca.1925

インターネットで偶然見つけた写真だが、単に "Fiddlin' Cowan Powers" と題されているだけで、詳細な説明はついていなかった。しかしアメリカの伝承音楽の画像蒐集を趣味にしている私は、これが1920年代に活躍したフィドリン・コーワン・パワーズ(1877-1953)一家のものだとすぐに分かった。コーワンは4人の子どもの父親で、商業レコードに初めて録音したファミリーバンドのリーダーだった。メンバーは6人だったが、妻のマチルダ・ランバートと娘のキャリーはこの写真に写っていない。末娘のアイダがウクレレを手にしているがいつ頃、どのような経緯でハワイからこの楽器がアパラチアの山奥に伝播したか、調べるのも一興だろう。20世紀初頭にオービル・ヘンリー・ギブソン(1856–1918)が、背面をヴァイオリンのように滑らかなカーブにしたフラットマンドリンを考案したが、オルファには届いていなかったようだ。

Front row (L-R) Cowan, Orpha, Carrie, Ada, Charlie Powers and Fiddlin' John Carson 1925

こちらは1925年5月、テネシー州マウンテンシティで開催されたフィドラーズ・コンベンションでの記念撮影で、前列にコーワン・パワーズと娘のオルファ、キャリー、アイダ、そして息子のチャーリーが写っている。右端がフィドリン・ジョン・カースン(1868–1949)であることは、私にとっては極めて興味深い一葉だ。上掲の写真と同じ時期に撮影された可能性があるが、服装が違うので日付は異なるようだ。コーワン・パワーズはヴァージニア州、一方ジョン・カースンはジョージア州出身、このようなフィドル弾きの大会が、広域交流の場だったようだ。このように古写真から古写真へと旅しながら、歴史の糸を一本一本紡ぐは愉しい。下記リンク先で、エジソン瘻管録音機によるコーワン・パワーズ・ファミリーの演奏を聴くことができる。

SoundCloud  Listen to "Old Joe Clark" by Fiddlin' Powers & his Family 1925 on SoundCloud

2020年5月1日

広沢池十一面千手観音菩薩像奇譚

石造十一面千手観音像(京都市右京区嵯峨広沢町)

広沢池の西側を北へ少し歩くと、京都市の案内板が立っている。それによるとこの辺りは旧遍照寺の境内であったとある。史書によると遍照寺は平安時代中期、989(永延三)年に宇多天皇の孫、寛朝僧正が広沢池畔の山荘を改めて寺院にしたものだという。

蓮華寺の五如来石仏(右京区御室大内)
池中の観音島へは橋が架けられ、金色の観世音菩薩を祀る池の寺として繁栄したという。応仁の乱で廃墟と化したが、奇跡的に難を逃れた赤不動明王と十一面観音像は草堂に移され、1830(文政十三)年に舜乗律師により復興された。現在の伽藍は広沢池のおよそ200メートル南、右京区嵯峨広沢西裏町にある。ところで観音島だが、十一面千手観音像が静かに立っている。金色のそれではなく無彩色の石造で、高さはおよそ160センチ、安山岩製である。頭上には十一面の化仏を表し、千手脇手を持った丸彫りの石仏である。宇都宮市の大谷寺にある千手観音のように、岩山に仏像を刻む磨崖仏ならともかく、丸彫りの石造ゆえに脇手を伸ばすことが不可能のようだ。遠目には何やら荷を背負っていると錯覚しそうな姿であるが、空中の千手を想像するのも一興であろう。背面には「願主本国伊勢生武州江戸住家家次〔花押〕寛永十八年月日造立之・作但称〔花押〕」とある。願主、樋口平太夫は、五智山蓮華寺の寺伝によると「豊臣家の家臣で、大阪落城後は同士とともに海外に雄飛したが、罪科に問われ同士は悉く斬られて、彼だけは死を免れた。その後江戸の材木商として財を為したが、日夜安堵に得ず、亡き同士一族の冥福を祈るため諸国遍路の旅に出る。1635(寛永十二)年入洛し、鳴滝音羽山にあった蓮華寺の荒廃を知るや再興を発願、六年の歳月をかけて寺院、石仏群を完成した」という。

金剛夜叉明王像(因幡薬師平等寺)
その五智山蓮華寺の境内には薬師・宝生・大日・阿弥陀・釈迦の五如来石仏がある。これは樋口平太夫が木喰僧坦称上人に彫刻を依頼したものである。音戸山山頂に安置されていたが、戦後、現在の場所に移動したという。ところで広沢池の十一面千手観音像はその銘から推測できるように、蓮華寺の音羽山から流失した五体の石仏のひとつで、明治以降に借り出されという。寺には借用状が保存されているという。要するに観音島に観音像が欲しい、ということだったのだろう。それでは他の四体はどうしたのだろうか。佐野精一著『京の石仏』(サンブライト出版1978年)を読んで、二仏は下京区不明門通松原上る、通称因幡薬師の平等寺本堂の西に安置されてることを知った。毘沙門天と金剛夜叉明王で、以上の三仏は早くから分かっていたという。そして残る二仏を発見したのは、1975(昭和五十)年秋のことで、山科区御陵大岩の本圀寺にあったという。山積みの石材の中に、十一面観音と勢至菩薩像があることに気づき、背面には例の銘があったという。ぜひ一度訪問してお目にかかりたいが、何しろ1970年代に出版された古書なので、現在どうなっているかは不明である。