Le Petit Prince ©2020 Kianoush Ramezani
新型コロナウィルスの顕微鏡写真をを眺めていたら、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの小説『星の王子さま』(原題 Le Petit Prince 小さな王子)に登場する小惑星が思い浮かんだ。ソーシャルメディア Twitter で検索したところ、イラン人の風刺漫画家で、フランスに亡命中のキアヌーシュ・ラメザニの作品を見つけた。フランスのカトリック系新聞「ラ・クロワ(十字架)」に掲載した作品だそうで「新型コロナウイルスの発生によって人類は新たな課題に直面してい」という説明がついている。これを機会に河野万里子訳『星の王子さま』(新潮文庫2006年)を再読してみた。この本は子どもではなく大人に捧げられている。いや子どもだった大人に捧げられた、全人類への啓蒙書である。小惑星 B612 を出るとき、王子は薔薇の花に最後の水をやり、ガラスの覆いをかけてやろうとした。咳をしていたので心配したのである。「風邪は大したことはないわ…ひんやりした夜風はからだにいいし。わたし、花だもの」と薔薇は断る。「でも獣が…」と食い下がると「蝶々とお友だちになりたかったら、毛虫の二匹や三匹がまんしなくちゃね。とってもきれいなんでしょう。だってほかに誰か訪ねてきてくれるかしら? あなたは遠くに行っちゃうし。大きな獣も、ぜんぜんこわくない。わたしだって、爪があるわ」と薔薇がトゲを見せた。今や人間は咳が心配の的である。ウィルスを撃退するトゲも身に着けていない。体をすっぽり覆って、N95 マスクも突き抜けるウィルスを遮断してくれるガラスが欲しい。
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