2020年2月18日

ロレッタ・リン:カントリー音楽は死んだ

Loretta Lynn performs onstage at Stubbs on March 17, 2016 in Austin, Texas ©Scott Dudelson

カントリー歌手マルティナ・マクブライドのポッドキャストで、ロレッタ・リンが「カントリー音楽は死んだ」と語ったことが話題になっている。ロレッタは1932年4月生まれの87歳。父親はケンタッキー州の炭鉱夫だったが、1970年にリリースされた "Coal Miner's Daughter"(炭鉱夫の娘)が彼女のシグネチャーソングになった。カントリー音楽とポップスとの境界線が曖昧であることに不満を持っているようだ。現在、多くの歌手がポップスやラップを歌に取り入れているが、それはカントリー音楽ではないというのである。実はカントリー音楽の定義はなかなか厄介である。インターネット百科事典ウィキペディア英語版は「アメリカのフォークミュージック(特にアパラチア音楽と西欧音楽)やブルースなどに根ざしたポピュラー音楽のジャンル。その大衆化されたルーツは、1920年代初頭の米国南部に由来する」と説明している。確かにルーツはその通りで、レコードとラジオというメディアによって、1920年代に東南部の伝承音楽が、商業化された新しい音楽だったと思う。その典型が1927年の「ブリストル・セッション」で、OKeh Records の辣腕ディレクター、ラルフ・ピアによって「発見」された、カーター・ファミリーとジミー・ロジャースだった。テネシー州ブリストルがカントリー音楽発祥の地と認証された所以である。しかしこの伝統を受け継いでいるのは狭義のそれであって、現在ではヒップホップ調、ファンク調やドゥーワップ調などのスタイルの曲も跋扈している。時代と言えば時代なのだが、カントリー音楽の神髄が失われ、自らその魅力を喪失させているような気がする。ドキュメンタリー映画のケン・バーンズが編纂したアンソロジー "COUNTRY MUSIC" を聴くと、やはり古い曲に魅力を感じてしまう。カントリー音楽は文字通リ田舎の音楽であり、土の、そして草の香りに私は惹かれる。ロックを聴きたければロックミュージシャンのそれに耳を傾けるのがベストだ。ロレッタ・リンの詠嘆が理解できる。

television  ケン・バーンズ監督ドキュメンタリー作品「カントリー音楽」PBS(米国公共放送)

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