インフルエンザの爆発的流行でマスクをした女性たち(1918年)
写真は第一次世界大戦中の1918年に始まったインフルエンザ・パンデミック下、マスクをつけた女性たちである。世界的な患者数、死亡者数についての推定は難しいが、患者数は世界人口の25-30%、あるいは、世界人口の3分の1の約5億人で、致死率は2.5%以上、死亡者数は全世界で4,000万人、一説には1億人ともいわれている。日本の内務省統計では日本で約2,300万人の患者と約38万人の死亡者が出たと報告されているが、歴史人口学的手法を用いた死亡数は45万人という推計もある。当時は抗生物質は発見されていなかったし、有効なワクチンなどは論外で、インフルエンザのウイルスが初めて分離されるのは、1933年まで待たねばならなかった。多くの人は人が集まる場所では、自発的にあるいは法律によりマスクを着用し、一部の国では、公共の場所で咳やくしゃみをした人は罰金刑になったり、投獄されたりしたという。
新型コロナウイルス SARS-CoV-2 を対象にしたワクチンの開発については、前エントリーに書いたように、米国マサチューセッツ州のモデルナ社が mRNA-1273 治験薬の最初のロットを出荷した。世界初の臨床治験が近く始まる見通しだ。ところでニューズウィーク誌によると、イスラエル科学技術省の資金提供を受けているミガル研究所(MIGAL Research Institute)が、鶏伝染性気管支炎ウイルスワクチンを新型コロナウイルス感染症 COVID-19 ワクチンに適合させるために必要な遺伝子調整を行っていることを発表した。ミガルの研究チームは、4年間、鶏伝染性気管支炎ウイルスワクチンを研究しており、鶏伝染性気管支炎ウイルスと新型コロナウイルスが高い遺伝的類似性を持ち、同じ感染メカニズムを使用していることが判明したとし、非常に短期間で効果的なヒトワクチンが得られる可能性が高くなっているとう。同研究所ウェブサイトによると、最高経営責任者のデヴィッド・ジグドンは「私たちの目標は、次の8〜10週間でワクチンを生産し、90日で安全性の承認を得ることです。これは経口ワクチンとなり、一般の人々が特に利用しやすくなります。私たちは現在、潜在的なパートナーとの集中的な議論を行っており、これにより人体試験段階を加速し、最終製品開発と規制活動の完了を促進することができます」と語っている。日本企業では、臨床治験支援大手のアイロムグループが、新型コロナウイルスの新規ワクチンについて、中国の復旦大学付属上海公衆衛生臨床センターと共同開発することで合意した。両者はセンダイウイルスベクターを使った結核ワクチンを共同開発しており、その経験を生かして新型コロナウイルスに対するワクチンの開発を目指すという。
ミガル研究所の科学者 |
MIGAL Research Institute in Development of Corona virus (COVID-19) Vaccine