2019年4月21日

タンポポの綿毛の建築学

大津港(大津市浜大津)

母親が死の床に臥す前の、まだ元気だったころ、帰郷した帰り道で娘が道端のタンポポの綿毛を撮った。その写真が気に入ったので、月刊誌『アサヒカメラ]の子ども向けコンテストに応募を奨めたところ、私の思惑通り入賞した。タンポポの綿毛はとても魅力的だ。種子が集まったもので、構造はドームと同じだという。息を吹きかけるとたちまち形が崩れ、種子がバラバラになって、空の彼方に飛んで行く。その姿もまた可愛らしく、そして愛おしい。子どものころ、好奇心で目覚まし時計を分解し、元に戻せなくなって泣いたことがある。しかしタンポポのドームはそれどころではなく、種子を集めて修復というのは絶対に無理だと思う。イスタンブルで拝観したモスクのドームは、建築学的に優れていてひどく感心した。しかし風を受けると分解して拡散す技術を、人間は模倣できないだろう。初夏を感じさせる陽を浴びながら、自然の神秘に触れた思いがする。

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