2019年4月7日

踊りを鼓舞する悪魔のバグパイプ


バグパイプはヨーロッパに広く分布する楽器で、ニューヨークのメトロ・パイプ・バンドの Facebook ページに掲載されたイラスト(画像クリックで拡大)を見ると、その多様さに驚く。日本ではスコットランドのグレート・ハイランド・バグパイプ、アイルランドのイリアン・パイプがよく知られている。昨年秋に投稿した「ブリューゲル『婚宴の踊り』に込められた意味」で、禁断の踊りにバグパイプが使われたことに触れた。スコットランドのそれは戦意高揚と祭礼のために演奏されたが、無論、踊りの伴奏にも使われた。上掲のイラストは、スコットランドの国民的詩人であるロバート・バーンズ(1759-1796)の詩『シャンタのタム』のために、サムエル・S・スミス(1810-1879)が制作した銅版画である。とんがり帽子を頭にした女性を中心に、棒きれを手にした人たちが踊り狂っているが、右奥で悪魔がバグパイプを吹いている。そして左後方のアーチ型の窓から、大黒頭巾帽を被った男が馬上から覗いている。森鴎外の『ヰタ・セクスアリス』にも描かれているように、日本の盆踊りは性的交遊空間でもあった。スコットランドの農民にとって、最大の愉しみであった納屋の踊りの背後に、性愛への欲望が渦巻いていたと言えるだろう。

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