2017年1月10日

韓国政府は少女像撤去を約束したわけではない

Georges Bigot "China and Japan trampling Korea as Russia watches" (1904-05)
ジョルジュ・ビゴー「韓国を踏みにじる日本と清国」(1904-05年)ボストン美術館蔵

安倍首相は1月8日に放送されたNHK「日曜討論」で、在韓日本大使館と日本総領事館の前に設置された少女像の撤去を要求したそうだ。私は視聴してなかったが「日本は10億円の拠出を既に行った。次は韓国がしっかり誠意を示していただかなければならない」と話したという。安倍政権は国内に目を向けず、3年間で総額30兆円もの援助金を海外にばら撒いたといわれている。10億円は庶民にとっては確かに大金だが、30兆円と比べれば、この金額での居丈高な抗議に違和感を感ずる。これに対し朝鮮日報1月9日付け日本語版は、韓国政府は10億円という「金額」よりも、この10億円の「性格」により大きな意味があるとの立場だと解説している。韓国政府は「日本政府の首相が責任を認めたことは事実上『法的責任』を認めたものであり、これに基づいて日本政府の予算で補償される10億円も『法的賠償金』と呼ぶことができる」と解釈したというのである。国家レベルでは10億円は少額であり、最大野党の共に民主党の禹相虎院内代表は「10億円を返すよう尹炳世外相に要求する」と強調したそうだ。2015年末の日韓外相会談で結ばれた「慰安婦問題日韓合意」だが、両国間で公式な文書を交わすことは行われず、共同記者会見を開いて発表するという形式で行った。少女像について韓国の尹炳世外相は、会見で「韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する」と発表したのみで、撤去を約束したわけではない。極めて曖昧で、真の意味での「合意」と言えるだろうか。問題の火種を残したわけだが、この点を振り返ると、10億円出したから少女像を撤去せよという主張は、むしろ滑稽ですらある。旧大日本帝国は1910年(明治43)に大韓帝国を併合したが、1945年(昭和20)に朝鮮総督府が米国に降伏するまで、35年間も統治が続いた。戦後70年の時を経たが、未だに韓国の人々が慰安婦問題に拘る背景に、私たちは穏やかな理解を示すべきだろう。

0 件のコメント: