2012年9月8日

尖閣諸島は絶滅危惧種アホウドリの貴重な繁殖地

Short-tailed Albatross  Midway Atoll on February 17, 2012 by Chashin

アホウドリの和名は阿呆鳥、ノロマで捕まり易く、この不名誉な名が冠せられたらしい。中国では信天翁と呼ぶ。国立富山商船高専の金川欣二教授の「信天翁の言語学的考察」によると、中国で信天翁としたのは「この鳥が魚を餌とするにもかかわらず、魚を取る能力がなく、魚鷹(ミサゴ)がたまたま捕えた魚を落とすのを待ち構えていて、これを拾って食べるとされたからである」という。写真のアホウドリは今年の2月にミッドウェー環礁で撮されたもので、伊豆諸島鳥島から飛来したものだという。その鳥島にはかつてアホウドリが繁殖していたが、明治半ば以降大量捕獲され絶滅の危機に陥ってしまった。アルゼンチン生まれで英国の鳥類保護協会(RSPB)の会員だった作家W・H・ハドスンは「鳥たちをめぐる冒険」の中で、美しい野鳥の殺戮に力を貸しているのは「殺された鳥の飾り羽や残骸で自分の頭を飾りたがる、おそろしき女性の一連隊だ」と嘆いている。鳥島のノロマなアホウドリも羽毛や帽子の羽飾り用に捕獲されたのである。

今月初めに投稿したばかりの「尖閣諸島は無人島のままがよい」の中で「亜熱帯の自然、特に野鳥を保護して欲しい」と書いた。実は尖閣諸島もアホウドリの繁殖地なのである。明治28(1895)年、日本政府は尖閣諸島を領土とし、アホウドリの羽毛採取や漁業を軸とする無人島開拓に着手したのである。そして毎年15-16万羽も捕獲したため、激減してしまったのである。現在の状況だが、沖縄県のレッドデータによると「南小島では50~55つがいが繁殖し、個体数は250羽程度と推定されている」という。絶滅危惧種であることには変わりはない。繰り返しになるが、この鳥の繁殖地は伊豆諸島鳥島と尖閣諸島の南小島、北小島だけである。主要繁殖地の鳥島は火山島であり、南小島が非火山島であることは重要である。この世界的希少種を失ったら、それこそ世界中の笑い物になるだろう。翼を持った鳥には国境がない。この地球に無理やり国境を引き、争っている人間こそ愚かな阿呆鳥ではないだろうか。この聖地を軍靴で踏みつぶしてはいけない。

0 件のコメント: