2012年9月15日

絶滅鳥ドードーの絵に関する覚え書き

絶滅鳥ドードー(ルーラント・サーフェリー画 c.1626 ロンドン自然史博物館蔵

ジョン・ジェラード・キューレマンスが模写した絵
尖閣諸島に棲息する絶滅危惧種のアホウドリの保護に関して書いてるうちに、ドードーDodo)のことを思い出した。ドードーというのはポルトガル語でノロマを意味するが、それゆえ乱獲されて絶滅してしまった。この鳥に関しては蜂須賀正氏(まさうじ)博士(1903-1953)の研究が世界的に有名だが、博士に関しては旧ブログで触れたことがある。左の絵はドイツの画家、ジョン・ジェラード・キューレマンス(1842-1912)が描いたものであるが、荒俣宏『絶滅・希少鳥類』(平凡社1993年)によると、蜂須賀正氏博士の研究書『ドードーについて』に掲載されているという。これはおそらく英文の「The Dodo And Kindred Birds」のことだと思われる。英国の鳥類学者ヘンリー・ウィザベリー(1873-1943)が創業した出版社から1953年に刊行されたが、その初版本が船便で日本に届く直前、狭心症のため急逝した。この本は現在米国アマゾンのマーケットプレイスで入手可能だが、1500ドルもするのでちょっと手が出せない。ドードーについて詳しいウェブサイト《ドードーの絶滅・インド洋モーリシャス島の悲劇》に「この絵について、イギリスの自然史博物館では別の作者名をあげている。かの有名なルーラント・サーフェリーの油絵で、G.Edwardsにより1759年に自然史博物館に寄贈されたと記載している」とある。
蜂須賀正氏著「南の探検」

ルーラント・サーフェリー(1576-1639)は鳥獣画を得意とし、風景画にも優れていたオランダ生まれの画家である。同サイトは「公平に見て、絵を所有している博物館の記載が正しいと思います」と記述している。これはもしかしたら、キューレマンスの絵が、サーフェリーの模写であることに気づいていない混乱ではないだろうか。サーフェリーの没年が1639年にも関わらず、絵の上部に1759年とあり、一見矛盾していると勘違いしそうだが、これは博物学者で、英国の鳥類学の草分けだったジョージ・エドワーズ(1694–1773)が、自然史博物館に寄贈した際に描き加えられたのであろう。英国の動物学者、カール・シューカー博士ブログで指摘しているように、キューレマンスのドードーは茶色っぽく、サーフェリーのは灰色がかっていて、両者は明らかに違う。私は絵画史の研究家でもなんでもないが、サーフェリーの原画のほうがむしろ有名で、キューレマンスの絵のほうが知られていないのではと感じている。繰り返しになるが蜂須賀博士が研究書に使用したのは、サーフェリーの絵をキューレマンスが模写したものに違いないだろう。荒俣宏氏は「どんな経過をへて画が描かれたのか詳しいことはわからない」としている。キューレマンスは鳥類の画家として英国で知られていたし、おそらく博物館で模写したと単純に考えてもいいのではないだろうか。しかし蜂須賀博士がどのようにしてこの絵を入手したかは不明である。おそらく財力にものをいわせて買い取ったのではないかと私は想像している。蛇足ながら蜂須賀博士は戦国時代の武将、蜂須賀小六の末裔。旧徳島藩主蜂須賀家の第16代当主で、破天荒な人生を歩んだ豪傑であった。

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