2012年9月5日

メトロポリタン美術館で「デジタル時代前の合成写真の歴史」展


Fading Away (1858) by Henry Peach Robinson (English, 1830 - 1901)
Albumen silver print from glass negatives
The Royal Photographic Society Collection at the National Media Museum, Bradford, United Kingdom

Hearst Over the People by Barbara Morgan (1939)
先日Facebookのニュースフィードにジョン・レノンとチェ・ゲバラがギターセッションをしている写真が流れたので、思わず「いいね!」ボタンを押してしまった。無論フェイク、合成写真である。このような写真の合成はデジタル技術によって容易になった。今年の10月11日から来年1月27にかけて、ニューヨークのメトロポリタン美術館で、デジタル時代前の合成写真の大がかりな歴史展が開催される。合成写真は歴史的には写真術の黎明期から制作されてきた。そのひとつの流れは、写真の写実性を利用しながら、あたかも実際の出来事のようにフェイクすることである。

その典型は今回展示される、ヘンリー・ピーチ・ロビンソンの有名な「消えゆく」(1858年)という作品である。写真作品なら撮影されたと表記したいところだが、これはやはり制作されたというべきであろう。命が消えゆく少女を無表情で見守る人、そして背後に後ろ向きになった男が立っている。男の横にある花瓶の中の花が萎えているが、これは死を暗示したものだろう。実にドラマチックだが、合成写真ゆえにできたのだろう。このようなタイプの他に、写真を切り貼りするコラージュ作品がある。そのひとつがバーバラ・モーガンの「人々の上のハースト」(1939年)だろう。これは明らかに合成と分かる。今回の作品展の別称は「フォトショップ以前の合成写真」だが、ご存知、今日ではデジタル画像処理によって精巧かつ簡単に合成写真が作れるようになった。写真が持つ写実性から派生する「真実の記録」か、あるいは表現の「組み立て部品」に過ぎいないのか、合成を取り巻く議論は昔からあるが、その問題点がより膨張しているのが現代ではないだろうか。ぜひ日本にも巡回して欲しい写真展ではある。

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