2024年7月15日

ゴッホはアトリエで左耳を切り落としトランプは選挙集会で耳を撃たれた

cartoon

このイラストはオランダのアムステルダムを本拠地にした、風刺漫画とコミック・ジャーナリズムのグローバル・プラットフォーム Cartoon Movement にマールテン・ヴォルテリンク氏が投稿した作品である。フィンセント・ファン・ゴッホが自分の耳を切断した1889年に描いた自画像を元に、ペンシルベニア州での選挙集会の演説中に銃撃されたロナルド・トランプ前大統領の肖像画を捻り出している。この事件に関する作品は多数寄せられているが、この風刺画が印象に残った。銃弾が耳に当たったが、数センチずれていれば前大統領は命を落としていたかもしれない。アメリカの NBC ニュースによると衝撃的な事件から翌日、国中を覆っている政治的二極化が深刻化しすぎたのではないかと国民は疑問を抱いているという。40年以上前、ワシントンのホテルを出る際にロナルド・レーガン元大統領が危うく殺されそうになって以来、初めてアメリカの大統領が銃撃された事件に、あらゆる政治的立場の指導者たちが衝撃と恐怖を表明する中、国中や世界中から哀悼の意や激しい非難の声を静めるよう求める声が殺到した。ジョー・バイデン大統領は日曜夜、大統領執務室でゴールデンタイムの演説を行い、アメリカ国民に「政治の温度を下げる」よう求めた。「意見は異なるかもしれないが、我々は敵ではない」と前任者暗殺未遂事件を非難する約6分間の演説で述べた。曰く「我々は隣人であり、友人であり、同僚であり、国民であり、そして何よりも我々は同じアメリカ国民だ。我々は団結しなければならない」云々。暴力はさらなる暴力を生む傾向があり、専門家らは今回の銃撃事件が、双方にとって存亡の危機とみなされる大統領選に向けた緊張を和らげるどころか、激化させるのではないかと懸念しているという。

Donald Trumpat a campaign rally
Donald Trump at a campaign rally, July 13, 2024, Butler, Pennsylvania (AP)

国内および国際テロを研究する外交問題評議会の研究員ジェイコブ・ウェアは「これは歴史上非常に暗い瞬間であり、残念ながら、今回の選挙シーズンで政治的暴力が終わる可能性は非常に低い」と、述べた。「低レベルの自警団による暴力から、より注目を集める暗殺未遂まで、さまざまなシナリオが今後数ヶ月の特徴となるだろう」と。暴力が政治的な対立を解決する正当な手段とみなされてしまうと「その展開をどう逆転させるかを知るのは難しい」とウェアは付け加えた。近年、暴力的なレトリックは政治キャンペーンでより一般的になっており、抗議者、反対派、警察の間で暴力的な衝突が起こることも時々ある。しかし、暗殺はここ数十年、アメリカの政治では見られていない。土曜夜に退院したが、重傷を負った観客ふたりは入院したままとなっている。観客ひとりは死亡した。ペンシルベニア州警察によると、負傷した集会参加者ふたりの容態は安定している。「この瞬間、私たちが団結し、アメリカ人としての真の性格を示し、強く、断固たる姿勢を保ち、悪に勝たせないことがこれまで以上に重要だ」とトランプ前統領は日曜朝、自らのプラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」にポストした。日本の一部メディアは「これでトランプが大統領選で有利になった」と報じているが、いささか甘い分析と言えそうだ。同情票が集まるのは確かだが、長期にわたる選挙戦、遊説に支障をきたす可能性が出てきたからだ。アメリカの巨大資本のなかで最大の影響力を有するのが軍事資本であるが、トランプは大統領時代に軍事緊張を低下させることに尽力した。このことが依然としてトランプの命の危険を生み出している。

Associated Press  ドナルド・トランプを暗殺しようとした男の動機がつかめないまま当局が手がかりを追う(英文)

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