リニア新幹線はJR東海が2014年に着工した東京と大阪を結ぶ新路線。超電導磁石を使って浮上して走行し、最高時速は約500km従来の東海道新幹線の2倍近い。東京の品川から名古屋までの所要時間は現在の約1時間30分から40分に短縮されるという。静岡県の知事が着工を認めていないことからJR東海は、目標とする2027年開業は困難としている。主な反対理由は以下のとおりである。
- 水資源の枯渇:リニア新幹線のトンネル工事により大井川の水量が減少する恐れがある。
- 自然環境への影響:トンネル工事により南アルプスの自然環境に悪影響を与える恐れがある。
- 財政負担:静岡県はリニア新幹線の建設費を負担する義務はない。
川勝知事は、これらの問題が解決されない限り、リニア新幹線の着工を認めないとしている。静岡工区は、JR東海と静岡県をはじめ周辺自治体との間で工事の同意に至っていない。トンネル工事によって、これまで大井川に流入していた大量の地下水が他の流域へと流出し、大井川の流量が大幅に減少することで大井川流域の生活・産業面への影響が懸念されているが、JR東海は周辺自治体に対して懸念を払拭する説明ができていない。しかし知事は特定のメディア、出版社、ライターから猛烈なバッシングを受けている。例えばNHK。2021年12月8日付けの政治マガジンは「静岡“コメ騒動”」と題した記事を掲げ、リニア中央新幹線の工事に待ったをかけ、政権与党から警戒されてきたが、何に失敗したのか、静岡放送局の記者二人が懸命に解説している。その他、川勝知事を批判した記事は、検索すれば山ほど出てくる。
確かに知事の過去の発言に問題点がないわけではないが、この機会にリニア新幹線の是非を再検討すべきだろう。品川と名古屋が40分で移動できるようになるとされるが、どれだけの意味があるのだろうか。現状で品川-名古屋は87分で移動できる。リニア新幹線は行程の大半がトンネルの中。短時間、大都心の道路下を地下鉄が通行するのは合理的だが、長距離路線には重大な難点がある。最大の問題は二つ、安全性と費用だ。以下「リニア中央新幹線の問題点(武蔵野大学工学部阿部修治教授)」(環境と文明2019年7月号)より抜粋。
日本列島を分断する巨大な活断層が存在する。断層にずれが生じれば想像を絶する重大事故が発生する可能性が高い。さらに加えれば、電力の問題がある。時速500kmという高速で走行するリニア新幹線は、通常の4倍くらいの電力が必要だと推定されている。リニア新幹線は高速走行により速度の時速の2乗に比例する大きな空気抵抗を受けるため、時速500kmを維持するだけでも大きなエネルギーが必要である。リニアモーターを動かす電力は地上コイルに供給され、そこに流れる電流の負荷として電力が消費されることになる。東京から名古屋まで敷き詰められる地上コイルに供給される多くの電力必要となる。走行する列車本数が少なければ、必要な電力は現在の電力供給量の範囲内だろうが、リニアを大阪まで延長し、東海道新幹線並みの列車本数になると、極めて多量の電力あが必要となり、それを賄うためには原発の新設が必要になる。
新設が間に合わないなら、老朽原発の再稼働を促すだろう。つまり単に高速移動手段の建設以上の、深刻な問題を包含している。電力供給に関しては下記リンク先のJR東海のサイトには記述がない。なお日本のリニア技術を売り込むイベントが2月、ニューヨークで初めて行われた。リニア新幹線の建設はいわば国策であり、ゆえに川勝知事の言動は邪魔なのである。次善の策として迂回ルートを探ることも考えられるが、更なる工事費の上昇が懸念され現実的ではない。この機会に計画中止を含め、リニア新幹線の是非を再検討すべきである。
JR東海リニア新幹線は年600億円の赤字!?「葛西案件」の泥沼収支を独自試算 | ダイヤモンド編集部
0 件のコメント:
コメントを投稿