Carl Mydans |
カール・マイダンスは、言葉であろうと写真であろうと、ジャーナリズムに生涯関わるつもりで幼い頃から準備をしていたという。1907年5月20日、マサチューセッツ州ボストン近郊のメドフォードのミスティック・リバーで生まれた。父親はオーボエ奏者だった。1930年にマイダンスはにボストン大学ジャーナリズムスクールで学士号を取得した。在学中に写真にのめり込み、大学ニュースの編集に携わるうちに、外科医やボートビルダーになるという子供のころからの夢を捨て、ジャーナリズムの道を選んだ。マイダンスのジャーナリストとしてのキャリアは、ボストングローブ紙とボストンポスト紙でのフリーランスの仕事から始まった。次にニューヨーク・ウォール街の日刊紙アメリカン・バンカーのスタッフ・ライターを務めた。1931年にマイダンスは 35mm カメラを手に入れ、フォトジャーナリズムの世界に参入し、タイプライターとカメラの扱い方を同じように知っている新しい種類のジャーナリストの一人になった。本質的に観察力の高いマイダンスは、言葉だけで説明するのが難しいことを視覚的に表現できるようになった。農業保安局 (FSA) のプロジェクトに参加し、1935年に最初の重要な写真撮影の任務を獲得した。ロイ・ストライカーの指導の下で仕事を始め、南部の綿産業に従事した農民たちを記録した。大恐慌の事実を記録することに加えて、苦しんでいる人々、財産を剥奪された人々、搾取されている人々の生活を思いやりを持って撮影し、FSA で働いていた他の多くの写真家が追随するパターンを確立した。
1936年、彼はライフ誌の創刊に参画する4人の写真家のうちの1人として雇われた。彼は1972年に雑誌が廃刊になるまで、スタッフカメラマンとして活動し続けた。アメリカ、ヨーロッパ、アジアの主要なニュースイベントを取材したこの36年間は、彼のキャリアの中で最も重要な年であった。第二次世界大戦中、マイダンスは攻撃の準備をしているイギリス、ムッソリーニ指揮下のイタリア、フィンランドのロシア遠征、フランスに流れ込むベルギー難民、そして1940年と1944年のアメリカ第5軍進軍中の戦争中のフランスを撮影した。1940年から1944年にかけて、マイダンスと元ライフ研究員の妻シェリーはアジアに滞在し、まず日本の爆撃に反対する重慶を取材し、次にビルマ、マラヤ、フィリピンを取材した。
フィリピンでは二人とも日本軍に捕らえられ、21か月間投獄された。彼らは日本人捕虜と引き換えに米国当局に釈放された。再び戦場に派遣され、マッカーサー元帥が1944年にフィリピンに意図的に大股で上陸する様の瞬間をスナップ写真に収めた。伝説的将校であるマッカーサーは、嘗て日本軍が侵攻してきた際に "I shall return)"(必ずや私は戻って来るだろう)と言い残したが、マイダンスの写真により、この不死身で手強い将軍を後世に強く印象付けることとなった。フィリピン再上陸の瞬間は演出された物だという指摘がいくつかあったが、マッカーサー自身が宣伝効果について十分に理解していたことを認めつつも、その写真自体は将軍の日常行動を記録したのだと断固として反論した。
マイダンスの他の著名な写真には、マッカーサーが、1945年9月初旬に戦艦ミズーリ艦上で日本の代表団の降伏文書への署名を軍楽隊と共に見守る様子が記録されている。「自分以前には、公的な言行の記録が写真による表現の力で、より正しい理解を得られるものであることは知られてなかっただろう」とマイダンスは、マッカーサーの言葉として引用している。ミズーリ艦上での日本の降伏文書調印式典も写真記録として残している。戦争の終わりに、マイダンスは東京のタイムライフ報道局長を4年間務めた。契約カメラマンのデビッド・ダグラス・ダンカンと三木淳がいたが、この二人が優秀なレンズとして見出した日本光学製用レンズを使用するようになった。
マイダンスは当時のコンタックスに頻発したシャッタートラブルから、カメラボディも日本光学のニコンSを使うようになったのである。これがきっかけとなり、朝鮮戦争の取材をするライフ・タイムのカメラマンが、続々と日本光学のカメラとレンズを使用するようになった結果、日本光学に留まらず、日本のカメラを世界に知らしめるきっかけとなったのである。彼は朝鮮戦争の取材を続け、その後イギリスに数年間、そしてモスクワに1年半駐留した。ライフ誌が消滅した後も、マイダンスはフォトジャーナリストとして仕事を続け、タイム誌、その他多くの出版物からの依頼を担当した。彼は妻との共著を含む数冊の本を出版し、1951年に米国ゴールデンカメラ賞を受賞した。2004年8月16日に心不全で、ニューヨーク州ラークモントの自宅にて死去した。97歳だった。
Carl Mydans (1907–2004) | Biography | Photography | More Like This | LIFE mgazine
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