私はマイナンバーカードを持っている。浪人の身になってから、運転免許証もパスポートもなく、写真付き身分証明書がないと困ることもあるので作ったという経緯がある。要するに「任意」であったが、政府は唐突に「義務化」に舵を切った。2021年3月の衆院内閣委員会で、当時首相だった菅義偉は、マイナンバー制度に関して国が支出した費用は過去9年間で8,800億円に上ると明らかにした。野党から「コストパフォーマンスが悪過ぎるのではないか」と指摘されると菅は「確かに悪すぎる」と語った。それから1年、総務省のPDF「マイナンバーカード交付状況について」によると2022年9月末現在、全国の人口に対する交付枚数率は49.0%で、半数に満たないのである。カード普及のため、さらに1兆8,000億円を投じようとしている。カードのメリットを盛んに強調するが、その費用対効果にまで言及することはほとんどない。しかも政府は健康保険証を2年後に廃止し、マイナンバーカードと一体化するという方針を打ち出している。これには大半の国民だけではなく、医療関係者や専門家団体からも反対意見が多く見られ、2年以内に普及する可能性は不透明である。
岸田文雄は記者会見で「紛失などの何らかの事情により手元にカードがない人が保険診療を受けられる制度を用意する必要がある」と述べている。また加藤勝信厚生労働大臣は、保険料を支払っていれば、カードを持っていない人も保険診療を受けられるよう、関係省庁と連携して制度の検討を進める考えを示した。「保険料を納めていれば、保険診療を受けられる制度を用意する」のは当然だが、被保険者であることを示す証明書の発行などを検討しているようだ。紙の保険証でもなく、マイナンバー保険証でもなく、さらに保険証が手元になくても保険診療を受けられる「資格証明書」でもない「第4の方法」を作ると答弁、まさに支離滅裂、一体何を考えているのだろうか。安倍晋三の「国葬」を強行し支持率を落としたが、息子の岸田翔太郎を首相秘書官に起用するというはなはだしい公私混同。最近では統一教会との濃厚接触で経済再生相の椅子から転がり落ちた山際大志郎を、わずか4日後に新型コロナウイルス対策本部長に任命するという悲喜劇を演じた岸田文雄は「聞く力」を備えた「検討使」ではなく、ただの風見鶏、人の意見に耳を貸さない独裁者もどきのようだ。支持率低下により失脚しても、次に誰が首相になるかと思えば、暗澹たる気持ちに陥ってしまうのは私だけだろうか。
総務省「マイナンバーカードの市区町村別交付枚数等について」(PDFファイル 811KB)
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