2022年10月14日

続)ロシアによるクリミア併合を象徴するケルチ海峡大橋爆破の謎

Crimean Bridge
延焼した鉄道橋の燃料タンク列車と崩落した道路橋(タス通信)

当ブログ前エントリ―でケルチ海峡大橋(クリミア大橋)爆破は、元英陸軍の爆発物専門家は「橋の下で大爆発があったとみるほうが、より妥当だ。何らかの海上用ドローンがひそかに使われたのだろう」という BBC ニュースの記事を紹介した。とはいえ爆薬を積んだトラックが爆発したという説が消えたわけではないとも。10月10日付け時事通信電子版は「ケルチ海峡大橋(クリミア橋)で爆発したトラック貨物はロシア運転手がネットで受注」という独立系メディアなどの記事を紹介している。

貨物が爆発の原因の場合、運転手は被害者で、荷主が計画に関わったことになる。ロシアは9日、自作自演説を退け、ウクライナの情報機関保安局(SBU)の仕業と主張した。

ということは、トラックが鉄道橋を走る貨物列車を炎上させるには併行走行が必要だし、どのようにシンクロさせたのか、そして起爆は遠隔操作だったのかも不明である。別の推測がある。マドリッドに本拠を置くスペイン語圏の大手通信社 EFE: は「爆発に使われたとされるトラックは肥料を積んでいた」という記事を掲載している。ケルチ海峡大橋を横断中に爆発し、ロシアと占領下の半島を結ぶ唯一の道路と鉄道の直通路に深刻な被害を与えたとされるトラックの運転手は、オンラインで肥料輸送の注文を受けていたという。しかし実際には弾薬で、ロシアの調査委員会と反テロ委員会は共にトラック爆弾の結果であると主張しているという。ロシアの「マッシュ」誌は、爆発に使われたとされるトラックは、橋を渡る前に警備員によってチェックされていたと述べている。また、トラックの所有者であるサミール・ユスボフの父親のいとこであるマジール・ユスボフという52歳の男が運転していたと主張している。

ケルチ海峡 ©Google  loupe 拡大

しかし真相は依然明らかになっていないが、ロシアは海上からのドローン攻撃説を否定している。ロシア当局は以前から、同橋への軍事攻撃は見逃せないと警告していた。橋の損傷により、ロシア本土とクリミアの間の道路や鉄道の直接的な供給網は一時的に遮断された。クリミアはウクライナのケルソン地方とつながっており、その大部分はロシアの占領下にある。ウクライナ南部と東部のロシア支配地域は、クリミアまで伸びる陸橋をモスクワに提供していることになる。ケルチ海峡大橋の建設が始まったのは、ロシアがウクライナのクリミア半島を併合してから2年後の2016年のこと。2018年の完成時にはロシアのウラジーミル・プーチン大統領が橋の落成式を行い、当時は「奇跡」と謳われた。ロシア本土とクリミアを結ぶケルチ海峡を渡るフェリー航路に代わる航路を提供すると同時に、国際的に認められていないロシアの半島に対する主張の強さを示す象徴となった。この橋への爆撃に対する報復を開始、ロシアは首都キーウをはじめ、ウクライナ各地にミサイルを撃ちこみはじめた。ウクライナ国防省はインフラ設備や市民への攻撃が続いており、ミサイルなどの他にイラン製の無人航空機が使われているとしている。停戦の兆しは見えない。

PDF_BK  川崎恭治「国際法から見たロシアによるクリミア併合」の表示とダウンロード(PDF File 150KB)

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