2021年12月4日

ボブ・ディランはなぜ絵を描き始めたのか

Wigwam Motel
Wigwam Motel, Holbrook, Arizona, 2016
Bob Dylan by Joan Baez

シンガーソングライターであるボブ・ディランは、その音楽ほどには知られていないが、実はドローイング、ペインティング、シルクスクリーン・オン・キャンバスなどの作品は、世界的に知られている。どうやら気まぐれな天が二物を与えたようである。ディランは、1960年代初頭にニューヨーク のにグリニッジ・ヴィレッジで若いフォークシンガーとして登場して以来、ずっと優れた音楽作品を作り続けてきた。「風に吹かれて」や「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」などの曲を世界中の聴衆に届けながら、旅先で出会った人々や場所から受けた印象を作品に反映させている。1989年から1992年にかけて、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなどをツアーしながら制作された、絵画シリーズの "Drawn Blank" は、ディランの芸術作品の重要な部分を占めている。これらの表現主義的なドローイングと、そこから生まれたペインティングは、街角や室内の風景、路傍の建物、ランドスケープ、ポートレート、ヌード、静物など、彼の音楽と同様に詩的でパーソナルなイメージを表現している。ディランは2016年11月2日付け『ヴァニティフェア』誌デジタル版で、なぜ、そしていつ絵を描き始めたのかを語っている。

Bob Dylan's Endless Highway
Bob Dylan's Endless Highway 61 Revisited, 2015–2016

すなわち「私にも誰にも誤解されない絵を描くことを考えていた。ロンドンのハルシオン・ギャラリーがアメリカの風景画を展覧会に出すというアイデアを持ってきたとき、彼らは一度だけ言えばよかった。私はそれを心に刻み、実行したからだ」「これらの作品に共通するテーマは、アメリカの風景と関係している。土地を縦横に移動しながら、どのようにそれを見ているのか。メインストリームから離れ、自由なスタイルでバックロードを旅することだ」「私のアイデアは、物事をシンプルにして、外見的に見えるものだけを扱うことだった。これらの絵画は、最新のリアリズムであり、古めかしく、最も静的でありながら、見た目には震えている。

>Man on a Bridge
Man on a Bridge, 2010-2012

現代の世界とは相反するものです。しかし、それは私がやっていることです。サンフランシスコのチャイナタウンの通りは、窓のない企業のビルからわずか2ブロック離れたところに立っている。しかしこれらの冷たい巨大な構造物は、私が見たり、選んだり、一部になったり、入り口を得たりする世界において、私にとって何の意味も持たない」「マスメディア、コマーシャルアート、有名人、消費者や製品のパッケージ、看板、コミックストリップ、雑誌広告など、消費者文化や大衆文化を否定しようとする意識があった」「Beaten Path の作品は消費者文化の日常的なイメージとは異なる主題を表現している。

Manhattan Bridge
Manhattan Bridge, Downtown New York, 2015–2016

どの絵も、見る人はそれが実際の物体なのか、それとも妄想なのかを考える必要はない。その絵が実際に存在する場所を訪れれば、同じものを見ることができる。それが私たちを結びつけるものなのだ」云々。ディランの歌に感服することはしばしばだが、その思想が絵の中に潜んでいる。蛇足ながらシンガーソングライターのジョーン・バエズも絵が上手で、ソーシャルメディアで公開しているが、ボブ・ディランの肖像画も描いている。なお下記リンク先で『ヴァニティフェア』誌の原文を読むことができる。

painting In His Own Words: Bob Dylan told why and when he started painting | Vanity Fair

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