2017年8月27日

一枚の写真に潜むホームレス一家の物語

The Damm Family in Their Car, Los Angeles, California. ©1987 Mary Ellen Mark

クリッシ―の通学を手伝うメアリー
左からクリッシ―、ジェシー、リンダ、ディーンのダム一家で、1987年にメアリー・エレン・マーク(1940–2015)が撮影、米国のグラフ誌 LIFE に掲載された。元トラック運転手だった父親のディーン・ダムは失職中で、ホームレスとなり、車が一家の住み家だった。同年12月、編集者のアン・ファディマンが書いた覚え書きを読んだ。彼らは1週間にわたって一家と共にしたのだが、その様子が克明に綴られている。ディーンはトラック運送会社と仕事の約束をするが、連絡する電話番号を持っていなかったので、結局断られてしまう。「携帯電話を持っていない限り仕事を得られない。アパートに住んでない限り携帯電話を持つことができない」と突き放されてしまったのである。仕方なく売血によって生活の糧を得るという悲惨であった。唯一の救いは、学齢期に達したクリッシ―の通学をメアリー・エレン・マークが助ける写真だ。8年後の1994年秋、タイム誌のバーバラ・マダックスらが一家を追跡、リポートしている。初めてカリフォルニア州ノース・ハリウッドのホームレスのためにバレー・シェルターで会ったとき、ディーンは「地獄に戻ることはないだろう」と誓った。読者から9,000ドルの寄付、アパートに引っ越し、中古車2台を手に入れた。悲惨な時代は終わったかのように見えたが、4ヵ月後、ダム一家はは路上に戻ってしまった。金が尽き、ドラッグを買うために車と家具は消えてしまったのである。愛は逆境や時間を超えた愛情であり、子どもたちはそれを知って育たない限り、成長することはできないとリポートは結んでいる。

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