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Walden Pond (Wikipedia) |
前エントリーでH・D・ソロー『森の生活:ウォールデン』に登場するボストンの「氷王」フレデリック・テューダーが採氷した場所を「コンコードのウォールデン池の他に、ケンブリッジのフレッシュ池、アーリントンのスパイ池、エアのサンディ池、ウーバンのホーン池、ウェークフィールドのクアンナポウィット湖、アンドーバーのハゲッツ池、リンフィールドのサンタアグ湖、ストーンハムのドレフル池、ウェナムのウェナム湖」と列挙した。これは原資料に従ってLakeを湖、Pondを池と直訳したに過ぎない。LakeとPondの違いは科学的には説明されていない。湖が大きく、池が小さいというのが一般的な解釈だが、大きさの標準化はない。モンタナ州では、湖の最小面積は20エーカー(約81,000m²)で東京ドーム2個分としているが、これは明確な指標ではないという。さて肝心のウォールデンだが、61エーカー (約247,000m²)で、東京ドーム5個分の広さだが、Pondと呼ばれている。この大きさゆえか不明だが、飯田実訳『森の生活:ウォールデン』(岩波文庫)ではウォールデン湖となっていて、池とは訳されていない。それでは日本では湖と池、さらに沼はどのように区分けしているのだろうか。これまた厳格な定義はないようだが、湖沼学上では次のように分類されるという。
- 湖…天然の広くて深いもの。夏に水温成層がある。
- 沼…水深が浅く水底中央部にも沈水植物(水草)の生育する水域。
- 池…人工的に造られたもの。
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琵琶湖(滋賀県大津市浜大津) |
池が人工的なものであることは、京都の勧修寺の氷室の池や天龍寺の曹源池、平安神宮の栖鳳池など、社寺の庭園で納得できる。さらに例えば大覚寺の大沢池や遍照寺の広沢池なども築造されたものである。ただ上高地の大正池は噴火した火山の泥流によって川が堰き止められて形成されたもので、人工の池と言い難い。また鳥取の湖山池は日本最大の池として知られるが、これまた自然が造成した、浜名湖と同じ汽水湖である。このような例外が散見されるが、池は人工的に作られたものとおおむね定義していいかもしれない。ただ湖は琵琶湖や十和田湖のように大きく、小さいのが池という一般通念があることは否めないだろう。それではマサチューセッツ州の湖沼に戻り、ウォールデン池がどのように生まれたか調べてみることにしよう。
ウィキペディアによると、今から1万~1万2千年まえに氷河が後退して創られとのことである。私の想像では、アメリカでは曖昧な基準ながら大きさから池と命名、その成り立ちとスケールから邦訳に際し、湖としたのではないだろうか。いずれにしても定義の曖昧が生んだ用語の混乱と言えそうだ。
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